令和で加速、最新事業承継トレンドとは?
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2022年の帝国データバンク「特別企画:全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」では、2011年の調査以降、後継者候補が「非同族(36.1%)」であるとの回答が「子供(35.6%」を抜いて初めてトップとなりました。時代の潮流は従来の「父親からご子息・ご息女へ会社を継ぐ親族内の承継」から、「血のつながりのない社内人材等の親族外人材が経営を引き継ぐ事業承継」へトレンドが変化しています。
また、2021年1月~12月までのM&A件数は4,280件であり、2019年の4,088件を超え、2年ぶりの最多更新となっています。M&Aによって高額になりがちな非上場株式を後継者が負担することがなくなり、ご子息・ご息女といった親族が経営を引き継ぐのではなく、社内人材等が経営を引き継ぐケースも増えております。
当コラムでは、令和で加速している最新事業承継トレンドを成功させるポイントについてご紹介いたします。
令和時代の事業承継(M&A)トレンド
令和時代の事業承継トレンドを語るうえで、M&Aは重要なポイントです。
日本における主なM&Aトレンドを以下に整理します。2020年以降のトレンドとして、中堅・中小企業の取引が増え、地域における中堅・中小企業のグループ化が増加しています。後継者不在企業における事業承継は、M&Aで外部資本によって資本の承継を済ませ、グループイン後の企業とともに経営の承継を進めるケースが増えています。
1.1980年代~1990年(バブル期)
プラザ合意後の円高の影響もあり、日本企業が海外企業を買収する(IN-OUT型)形式が増加した。特に、買収額が実態よりもはるかに高額な大型案件が相次いだ。
2.1990年代(バブル崩壊)
日本国内ではバブルが崩壊し、業績悪化の懸念から海外で活発だったM&Aが終息する。もともと国内ではM&Aはまだ活発になっておらず、逆に、バブル期の買収の成果が出ていないことから不採算部門を手放す結果となった。
3.2000年~2007年(不良債権処理)
1990年代後半からM&Aの件数は増加し始める。銀行の不良債権処理の増加にともない再生案件が増加し、ファンドが積極的に不良債権に投資するようになった。持株会社の解禁や株式交換・会社分割制度の創設、組織再編税制の整備等が進んだこともM&A増加の要因である。
4.2008年~2019年(リーマン・ショック後)
成長戦略としてのM&Aと事業承継に関わる案件が増加した。成長戦略として、M&Aにより必要な経営資源を手に入れる一方、「選択と集中」により不採算事業からの撤退が行われた。業界再編も活発化した。この頃から中堅・中小企業にもM&Aが定着する。
5.2020年~(ウィズコロナ時代)
2019年の過去最高の件数から、2020年に入るとM&Aの環境は一変する。生き残る企業と再建を余儀なくされる企業とに明暗が分かれている。2020年は大手企業がM&Aに慎重になっていたが、中堅・中小企業は取引が回復した。2021年に入るとコロナ前と変わらない水準までM&A件数は回復しており、コロナ環境を織り込んだ事業ポートフォリオの構築が進んでいる。
創業者の思いを繋ぐ事業承継のポイント
経営の承継におけるポイントは、創業者の思いを将来につなぐことです。創業者の思いは、経営理念に込められていることが多く、企業経営にとって不易に当たります。経営理念・使命感といった不易の部分を守りつつ、次世代が中長期のビジネスの方向性を定めていきます。
特に、親族内承継を前提とした従来型事業承継の場合は、父親とご子息・ご息女の血縁関係から成せる感覚で創業者の思いを受け継いでおりましたが、令和時代の親族外の承継を含む事業承継では、創業者の思いを明文化し、後継者が企業をより発展させていくための仕組みづくりが必要です。
1.創業者が残すべきもの
(1)価値判断基準:経営理念(創業者の精神)、ファミリー憲章
(2)ビジョン:(例)地域ナンバーワンシェアへ(グループ年商〇〇億円)※後継者も共通
(3)後継体制づくり:後継者の選定、後継体制づくり、事業承継カレンダー
2.後継者がつくるべきもの
(1)グループ戦略および組織戦略:グループ戦略および事業ごとのビジョン・戦略策定、戦略実行を前提とした組織戦略の策定
(2)中期経営計画およびアクションプラン:5カ年の中期事業・投資・人員計画の策定、実行テーマの単年度アクションプランへの展開
また、会社の所有は引き続き創業家が持ち続け、経営は社内人材に任せていくといったホールディングス化を行う中堅企業が増えています。所有と経営が分離しているケースでは、創業家の思いを経営陣にいかに持続的に伝承させていくかがポイントになってきます。
経営理念といった不易の部分を伝承させていく仕組みとして、ファミリー協議会の立ち上げおよびファミリー憲章の作成があります。ファミリー憲章の記載内容として、株の所有と承継、ホールディングカンパニーにおける取締役・監査役の指名、ファミリー協議会の運営体制、ファミリー協議会の協議事項等があり、所有と経営を持続的に発展させる仕組みとなっています。
事業承継カレンダーを活用した計画的事業承継
持続的な企業継続は、高収益だけが求められる条件ではなく、後継者へ繋いでいく事業承継の成功が必須条件です。企業が持続的に成長していくには、事業戦略とともに事業を支える組織戦略が重要です。
仮に現経営者の年齢を55歳、代表権を65歳で後継者に承継するとした場合、事業承継までの期間は10年です。この10年間で、後継者の経営者としての経営人材育成、後継者を支える次世代幹部(ブレーン)の育成が求められます。後継者をいつ経営者にするか、次世代幹部人材をいつ役員に登用するか逆算で計画的な人材育成が必要になってきます。
特に親族外の経営人材の場合は、求められる経営者(役員)像を明確にする点も重要です。上場企業では、コーポレート・ガバナンス・コードにおいて、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成に十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくことが求められ、多くの企業がサクセッションプランに取り組んでいます。
サクセッションプランでは、人財プール(プールA、B等)を設定し、継続的に人材が育っていく仕組みを導入し始めています。非上場企業においても、サクセッションプランの考え方に基づいた計画的な人材育成が今後求められてきます。事業承継は優先度が高いと認識しているものの、先延ばしにされている企業が多いのが現状です。まずは、いつまでに、どのような人材が、どのくらい必要で、どのように育成するのか、を事業承継カレンダーという形で事業承継に着手していきましょう。バトンタッチの日にちから逆算で考えた場合、時間が足りないことに気づくケースが多いと思います。中長期的な視点を持ち、株式といった資本の承継のみならず、組織・事業といった経営の承継を次世代に引き継ぐことで、成長発展につながる事業承継を進めていきましょう。
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