収益力を高める5つの条件とは?
企業が実践すべき対策
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企業の収益力向上について、小手先のコストダウンや生産性の改善には限界があります。会計システムにおいても、拠点や部門単位の独立採算制度を前提とした従来の管理会計では、全体最適の視点になりづらく戦略的な発想の妨げとなります。また、管理面をいくら強化しても、収益力の本質である事業競争力を高めることはできません。収益力の向上を図るためには、利益を生み出す構造、すなわち、ビジネスモデルそのものを戦略的に改革していかなければなりません。収益力の決定要因はマネジメントではなく、ビジネスモデルそのものであると言えます。
※今回の内容に関しまして、高収益モデル企業の定義を経常利益率10%以上と定義します。
収益力を高める5つの条件とは
①オンリーワンポジションの確立
「誰に(顧客)」「何を(顧客価値)」を明確にし、それを徹底する一方、やらないことを決断することがポイントとなります。「誰に」「何を」を明確にすることは、創業時にははっきりしていても、時間が経つと曖昧になり、結果として収益力が低迷してしまう企業が少なくありません。何もかも全てに対応できれば良いですが、経営資源が限られる中で、「切る」「分ける」「絞る」技術を駆使して、自社のポジショニングを明らかにすることが大切になります。
②提供方法の独自化とブランディング活動の強化
「同質化競争」は、日本の中堅・中小企業が低収益に陥っている大きな理由の一つです。「他社との違い」を際立たせると同時に、その「違い」を顧客に知らしめる工夫が重要です。粗利益率の高い事業構造を作るためには、「業界平均と決別する」視点が必要となります。業界の常識は、「提供方法」に顕著に表れますが、業界の非常識に挑戦し、成長力だけでなく収益力まで高めている企業が存在します。その上で、「ブランディング活動」の強化が重要になります。
③リピート・紹介を重視したベースモデルの確立
勘定科目には直接的に表れませんが、企業の収益を圧迫する要因の一つに「顧客獲得コスト」があります。これは、企業の成長と収益力が単純に結びつかない1つの要因とも言えます。この課題を解決する処方箋が「リピート率の向上」と「顧客紹介の増大」です。新規顧客を獲得することはもちろん大切ですが、新規顧客の獲得コストは、リピートや紹介で得られる顧客獲得コストの3倍以上が必要と言われています。そのため、獲得コストという観点から見ると、リピート率や紹介率の向上は収益力に直結すると言えます。そのため、打つべき手は「ロイヤルカスタマーづくり」になります。顧客が顧客を呼ぶ善循環の仕組みを確立し、ロイヤルカスタマー数の増加に結び付けることが鍵となります。
④収益の変動と格差の解消
拠点格差や季節変動、事業間格差を放置したままでは、「経常利益率10%の継続」は難しくなります。格差解消の鍵は「3S」です。1つ目は「サービス=事業のサービス化」、2つ目は「システム=顧客獲得のシステム化」、3つ目は「セレクト=やめる・やらぬ選択の決断」です。拠点格差や季節変動、あるいは事業部間格差などを放置したままでは高収益は持続できません。経常利益率10%を継続するファーストコールカンパニーは、「利益の質」にも妥協しないことが重要です。
⑤顧客創造投資
顧客創造へのチャレンジが、「持続的経常利益率10%モデル」には不可欠です。その鍵となるのが「開発投資」です。新たな顧客価値を作り出す先行投資が、企業の収益力を高めることに繋がります。高収益を継続する企業は例外なく、新たな「顧客を創る」活動に経営資源を重点的に配分しています。つまり、商品開発に留まることなく、市場開発、人材開発、システム(仕組み)開発などの多岐にわたる「未来への投資」が企業の持続的高収益を可能にするのです。
時代の変化に合わせた事業ポートフォリオの転換
従来のマーケットで従来の技術やサービスに固執したために、時代の変化に対応できないことが多くあります。既存の事業領域の枠にとらわれず、未開の顧客ニーズをキャッチして、自社を適応させていくことが重要です。そのために必要な戦略が「事業ポートフォリオ戦略」です。事業ポートフォリオを構築するためには、新規事業開発を自社で取り組むことも選択肢の一つになりますが、M&Aも重要な選択肢の一つとなります。自力開発(オーガニック戦略)とアライアンス・M&A(ノンオーガニック戦略)といった複数の手法を組み合わせた参入戦略を検討し、最適な事業ポートフォリオを構築することが目指すべき姿です。
「事業ポートフォリオ戦略」を構築する上で重要なのは、事業を立ち上げる「スピード」です。M&A戦略を活用し、早期に事業ポートフォリオを構築することが企業成長にとって不可欠です。また、事業ポートフォリオ戦略を活用する際のもう一つのポイントは、マーケットからの撤退時にもM&Aを活用することです。成長の鈍化した既存マーケット(判断事業)からM&Aを活用して撤退し、限られた経営資源を未開のマーケット(育成事業)に集中させることが効果的です。
未開のマーケットの開拓
未開のマーケットにスピーディーに適応するためには、ビジネスモデルの転換が必要です。そのためには、バリューチェーンの構成要素に着眼することが必須となります。これは、ビジネスモデルをバリューチェーンの視点で構成要素ごとに組み替え、変化する市場に対応するということになります。
具体的には、バリューチェーンに着目し、その機能を拡張、または事業化して提供する視点が必要です。既存事業のバリューチェーンの川下・川上でビジネスの範囲を拡張する「横に広げる」視点。そして、バリューチェーンの機能をシステム化することで新たな収益源を作り出す「縦に伸ばす」視点です。さらにこれらの実践の結果、ドメインに特化してバリューチェーンを磨き上げる「奥行きをつける」という取り組みが展開できます。
さいごに
世の中の流れとして、原材料費や人件費の高騰、為替相場の円安傾向での推移など、コスト面への影響が想定される外部環境の変化が激しい時代の中で、高収益を目指すことは競争を勝ち残っていくためにも非常に重要なポイントです。それは、利益を生み出すことが「未来への投資」につながるからです。企業が生き残り、成長していくためには、変化する市場環境に挑戦し、適応し続けることが大変重要です。
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