COLUMN

2022.11.30

今なぜ、サクセッションプランが
求められているのか?

  • 事業承継

今なぜ、サクセッションプランが求められているのか?

新型コロナウイルスによる停滞からの回復途上において発生したウクライナ紛争は、原材料やエネルギー価格の高騰など、世界的な景気後退局面を招く事態を引き起こしました。一方で、コロナ禍において新たな行動様式は定着しつつあり、未来に向けた企業の変革への対応力が試されていると言えます。いかに企業価値を上げるかがすべての経営者の命題です。この命題に対して持続可能な経営を実現するために不可欠なものの一つが「サクセッションプラン」の策定です。

企業価値とは?

企業価値とは、企業が将来にわたって生み出す経済的な価値と社会的な価値の総和

経営者にとっては、株主だけでなく社会・顧客・取引先・従業員などの全てのステークホルダーにとっての価値を最大化することが求められます。企業価値は、企業の利益や儲けとして表される経済的価値だけでなく、社会的価値を含めた両面でのアプローチが必要になります。なぜならば、これまでのように企業のバランスシートに表れる財務資本だけで企業価値は図れなくなっており、非財務資本の中核をなす人的資本に始まり、知的資本製造資本、社会関係資本、自然資本などの無形資産が企業価値の源泉となってきているからです。財務資本で直接的に評価されないESG活動を企業経営に組み込むことで、企業のサステナビリティを向上させることが必須になっています。

企業価値向上を求められる日本企業

PBRが極めて低い日本企業

では、非財務資本が企業価値にどれだけ寄与しているかについて見ていきましょう。これを表す指標は一般的にPBR(株価純資産倍率)で把握でき、目安としてはPBRが1倍であれば、会計上の価値(純資産)と企業価値(時価総額)は同等であり、PBRが1倍より高く、会計上の価値を超えている分は、非財務資本による付加価値と言えます。

主要株価指数の構成企業のうち非財務資本がゼロを下回る(PBRが1倍未満(純資産>株式時価総額))企業の割合は、米国(S&P)3%、欧州(STOXX)約2割に対し日本(TOPIX)は約4割にもなります。2022年3月2日時点での東証一部市場上場企業では、PBR0.5~0.6倍が最頻値となっており、極めて非財務資本による付加価値が低いと言えます。
(東証一部上場2,173社中、PBR1倍以上は 1,075社(49.5%):2022年3月2日時点)

参考

マーケット情報(JPX 日本取引所グループ)
https://www.jpx.co.jp/markets/index.html

そのような日本企業の状況下で、将来の企業価値に大きな影響を与えると考えるサステナビリティ 関連課題に関する調査(出所:経済産業省 経済産業政策局による調査)では、「人的資本の開発・活用」が77%と最も高く、「気候変動69%)」、「ダイバーシティ(53%)」、「知的資本の開発・活用(34%)」が順に続きます。この点から言えば、やはり人的資本をどのように高めるかがポイントであるという認識を持っていると言えます。

しかしながら、内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局(2021年11月)の発表した「各国のGDPに対する人材投資の割合」調査では、日本は人材投資が他国に比べて圧倒的に少なく直近は0.1%と年々減少しています。

経営者にとって人的資本への投資に対しての課題意識はあるものの実際には十分な投資が出来ていないことが、日本企業の企業価値や生産性の低さの要因の一つと考えられています。

参考

基礎資料(内閣官房 新しい資本主義実現本部事務局/経済産業省 経済産業政策局)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/wgkaisai/hizaimu_dai1/siryou3.pdf

人的資本におけるサクセッションプランとは

サクセッションプランが必要とされる背景

非財務資本の中核をなす人的資本において、サクセッションプランとは「後継者育成計画」と訳されます。『全国企業「後継者不在率」動向調査』(2021 年 株式会社帝国データバンク)によると、全国・全業種のうち、後継者が「いない」、または「未定」とした企業は全体の61.5%を占めています。また、日本における「サクセッションプラン」は、将来の後継者育成だけではなく、次世代リーダーとなり得る若手人材を選定・育成することも目的になっていることが多いです。

今、なぜサクセッションプランが重要視されているか?大きく2つの理由が考えられます。1つは、コーポレートガバナンス・コードからの要請です。東京証券取引所は2021年6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、企業統治の観点からサクセッション・プランに主体的に関わることがより強く求められるようになりました。2つ目は、ISO30414による人的資本開示の流れです。2018年12月に国際標準化機構ISOが定めた、ステークホルダーに対する人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインで、サクセッションプランは持続可能な労働力計画に不可欠なツールと位置づけています。

これらの背景から、ますますサクセッションプラン策定が求められるようになっています。

参考

全国企業「後継者不在率」動向調査(株式会社帝国データバンク)
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p211104.pdf

当然、サクセッションプラン策定にはメリット・デメリットがあります。この点もしっかり認識して策定しなければなりません。メリットとしては、

①経営幹部のポスト不在による組織の混乱やそれに伴う業績不振を回避できる
②社内人材から経営幹部の後任を決定できれば今までの企業風土を維持しやすい
③経営ポジションにおける人材要件を可視化できる
④育成対象となり得る従業員のリテンションにつながる
⑤優秀な人材の確保と採用コストの削減が可能

などがあります。逆に、デメリットとしては、

①短期間での成果は表れにくく、育成コストがかかる
②候補者が辞退・退職した場合、これまでの時間と費用が無駄になる
③候補外の従業員のモチベーションや生産性の低下

などがあります。

多くの企業でデメリット以上にメリットを優先して、サクセッションプランを策定しています。やはり、上場企業を中心に人的資本開示が求められる背景として『ESG経営の実現』が挙げられます。財務以外に、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」を考慮し、安定的な事業継続に必要不可欠である後継者育成の情報開示が、世の中から求められるようになったからです。ぜひ、このような価値観の変化を前向きに捉え、自社の人的資本をいかに高めていくかに対して向き合い取り組んでください。

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