人事コラム
人材マネジメント運用システム
本コラムは、ダイヤモンド社発行の「戦略起点の人材マネジメント」の第3章の抜粋記事です。
近年、人事機能の強化を進める企業が増えている。その背景には、経営環境の急激な変化に対するスピーディーな対応、人口減少と採用市場の競争激化による働き手の確保、データドリブン人事(収集・分析データを根拠に人事の意思決定を行うこと)による適材適所と適所適材の実現、エンゲージメント向上による社員の活躍・定着など、従来のオペレーション業務中心の人事では実現が難しくなってきたことがある。
人的資本経営への取り組みは、上場企業だけでなく、中堅・中小企業も含めたすべての企業が取り組むべき時代に突入している。そのためにも、企業経営における人材マネジメントの高度化・専門化は必須であるが、制度や仕組みを整備してもそれが適切に運用されなければ成果・効果を得ることはできない。企業における人材マネジメントの変革は、その運用主体である人事部門の機能強化を伴うことも忘れてはならない。
【図表3‒7】は、人事の業務を専門性と戦略との連動性の高低で分類したポートフォリオである。労務管理やオペレーション業務などは専門性・戦略連動性がともに低く(Ⅳの象限)、人材戦略や要員計画の立案は専門性・戦略連動性が最も高い業務に位置づけられる(Ⅰの象限)。そしてこのポートフォリオから、自社における人事の中心業務をポジショニングしたうえで、そのレベルに応じて機能強化を図る必要がある【図表3‒8】。
レベル1は、中小企業が多い。この段階では、人事だけでなく総務や法務、経理などと兼務していることもある。そうなると日々の業務に追われ、オペレーションをこなすことで精いっぱいという状態になってしまう。 これがレベル2になると、人事部門がオペレーション業務に加えて企画業務も担うようになり、社内でのプレゼンスも高まってくる。そしてレベル3は、CHRO(最高人事責任者)を設置して戦略人事を推進する段階に入ってくる。一般的に、経営戦略と人材戦略との連動性が目に見えて実感できるようになるのがレベル3である。 さらにレベル4になると、デジタルデータを活用し、勘や経験だけに依存しない精度の高い意思決定が実現できる。データに基づいた人材マネジメントを行うことで、採用・育成・評価などの判断がより適正に行うことが可能となる。また人材情報を経営トップと共有することにより、人事上の課題に関する解決スピードも飛躍的にアップすることが期待される。 そしてレベル5の段階では、HRBP(Human Resource Business Partner)が設置される。HRBPは「ヒューマン・リソース・ビジネス・パートナー」の略称で、事業部責任者のパートナー、いわば「事業部人事」として戦略人事を展開し、事業に価値貢献する人事プロフェッショナルを指す。近年は大企業やメガベンチャー企業などで導入が進んでいる。中堅・中小企業で導入している例はまだ少ないが、今後は導入に向けた取り組みが広がると期待されている。なお、人材マネジメントの運用システムと人事機能の強化については、第8章で詳しく説明をしているので確認いただきたい。
