人事コラム
企業が直面する外国人労働者雇用の課題と実践的解決策
外国人労働者の受入れで直面する課題を整理し、企業が取り組むべき対応策を解説します。
外国人労働者の雇用において企業が直面する言語・制度・文化・在留資格などの課題と、その解決に向けた実践的なアプローチを、最新の統計データと制度動向を踏まえて解説します。
最も大事なのは外国人雇用の目的を明らかにすること。外国人労働者に何をさせたいかを明確にし、その活躍のために組織をデザインしましょう。
外国人労働者の受入れが求められる背景
厚生労働省の発表によると、2024年10月末時点での外国人労働者数は230万2,587人となり、前年同期比で約25万人増加し、過去最高を更新しました。この数字は、日本における外国人労働者の受入れが、もはや一時的な対応ではなく、構造的な人材戦略の一部となっていることを示唆しています。
この背景には、少子高齢化による生産年齢人口の減少があります。総務省の統計では、日本の生産年齢人口(15歳から64歳)は減少を続けており、特に地方や中小企業において人手不足が深刻化しています。製造業、建設業、サービス業を中心に、国内人材の確保が困難な状況が続いています。
また、2019年に創設された特定技能制度や、2027年に施行予定の育成就労制度など、外国人材の受入れに関する法制度も整備が進んでおり、外国人を単なる労働力ではなく、育成と定着を前提とした人材として位置づける方向へと転換しつつあります。
こうした状況下で、外国人労働者の受入れは企業にとって避けて通れない選択肢となっており、適切な雇用管理と課題解決が求められています。
企業が直面する主な課題とその構造
外国人労働者の雇用において、企業が直面する課題は多岐にわたります。厚生労働省が実施した令和6年外国人雇用実態調査によると、企業が感じる課題として「日本語能力などのためにコミュニケーションが取りにくい」が43.9%で最も多く、次いで「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」が24.7%、「在留資格によっては在留期間の上限がある」が21.5%、「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」が20.9%となっています。
言語面の課題は、日常会話レベルの日本語は可能でも、業務上の専門用語や安全に関する指示が正確に伝わらないケースが多く見られます。特に製造業や建設業など、安全管理が重要な現場では、指示の誤解が労働災害につながるリスクもあります。
制度面では、在留資格の種類によって従事できる業務範囲が異なるため、採用時の確認が不可欠です。出入国在留管理庁が定める在留資格は29種類あり、就労が認められる資格、制限付きで認められる資格、認められない資格に分類されています。また、外国人を雇用した際には、ハローワークへの「外国人雇用状況の届出」が法律で義務付けられており、怠った場合は30万円以下の罰金の対象となります。
文化・価値観の違いも見過ごせない課題です。時間に対する認識、報告・連絡・相談の習慣、上下関係の捉え方など、職場文化に関する認識のずれが、日本人社員との摩擦を生むことがあります。
これらの壁をクリアして雇用できたとしても、次に立ちはだかる壁があります。それが「定着の壁」です。
ヒューマングローバルタレント株式会社の調査によると外国人労働者の1年以内離職率は28.0%と、日本人の大卒11.6%、高卒16.6%に比べて高い傾向にあることがわかります。
また外国人労働者が定着しているものの、うまく活躍させることができないケースも多くみられます。
実際にタナベコンサルティングのクライアント企業においても、「外国人労働者を採用したものの、日本人労働者の代替にはならない」といったご相談をよく受けます。
採用競争が激化し、これまでのように日本人労働者を採用しようにもできないため、外国人労働者を採用する企業も多いですが、そもそも外国人労働者に何をさせるのかが明確になっていないことも少なくありません。
外国人雇用・定着への真の課題はここにあるのではないでしょうか。
人材戦略の不在に起因する漠然とした外国人採用
経営の原理原則は勝てる場の発見と勝てる条件づくりが重要です。すなわち「どんな仲間(人的資本)で、何を成し遂げるか(価値判断基準)」ということ。価値判断基準となる経営理念やビジョン、経営戦略などを明確にし、それを実現する組織戦略・人材戦略の構築が求められます。つまり、適切な人材リソースが備わらなければ、理念・戦略は推進・実現されません。経営理念・ビジョンから経営戦略、組織・人材戦略、その後のマネジメント施策まで一気通貫で連動させることが重要となります。
ここで問いかけたいのは、社内で人材戦略が議論・構築されているか、それが要員計画まで落とし込まれているか、ということです。どれだけ素晴らしい戦略を構築していても、最適な人材が備わっていなければ実現することはできません。最適な人材を備え、経営戦略を実現するためには、必要な人材を質・量ともにタイムリーに調達することと、個々の社員のパフォーマンス・能力を上げることの両輪が必要になってきます。
話を外国人労働者に戻すと、雇用したい外国人労働者は自社の戦略実現のため、どこの部署でどのような仕事を担わせたいのでしょうか。猫の手も借りたいからと、漠然と外国人労働者を採用しようと考えてはいないでしょうか。外国人労働者を採用し、定着させるため、まずは外国人労働者を迎え入れて何を実現したいかを整理していくことが先決です。
課題解決に向けた段階的アプローチ
外国人労働者の雇用における課題を解決するには、受入れ前の準備、受入れ時の対応、受入れ後の継続的支援という段階的なアプローチが有効です。STEP1からSTEP5に分けてみていきましょう。
STEP1 雇用目的の明確化
前述のとおり人材戦略・要員計画に照らし合わせながら、なぜ外国人労働者を雇用するのか、その目的を明確化します。組織戦略・人材戦略に関しての詳細についてここでは言及しませんが、大切なのは外国人労働者に何を担ってもらい、自社のどこに貢献してもらうか。これを先に定めるようにすると良いでしょう。
STEP2 業務の棚卸
外国人労働者に何を担ってもらうのかを検討するにあたって、自社が抱える業務の棚卸をしていくことも必要になります。業務には定常・定型業務もあれば非定型業務、専門的な知識・技術や高度な知識が必要な専門業務、管理業務など様々あります。またその中には自社の利益に直接影響を及ぼすコア業務から、間接的・限定的に影響するノンコア業務もあります。これらを業務棚卸の中で整理し、どのような業務を担ってもらうことで効率的な経営ができるのか、解像度を上げていくことが求められます。
STEP3 業務内容と在留資格の整合
外国人労働者に担ってもらいたい業務が定まったら、その業務にはどのような在留資格が必要かを確認します。在留資格によって行える業務に制限があったり、在留期間が変動したりします。採用してからのミスマッチをなくすため、事前によく確認するようにしてください。
STEP4 受入れ時の実務対応
受入れ時の準備段階では、まず在留資格の確認が必須です。在留カードまたは旅券(パスポート)で、在留資格の種類、在留期間、就労制限の有無を確認します。出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を活用すれば、偽変造の確認も可能です。また、社内の受入れ体制として、受入れ側の体制整備(異文化理解やモラル等)、人事制度のアップデートや業務マニュアルの多言語化/図解化、安全標識の視覚化などを事前に整備することができるとなおよいでしょう。
STEP5 定着までの継続的支援
受入れ後の継続的支援では、コミュニケーション方法の工夫が鍵となります。厚生労働省が公開している「外国人従業員とのコミュニケーションのコツ」では、ゆっくり話す、一文を短くする、難しい言葉を避ける、具体的に指示する、理解度を確認するといった「やさしい日本語」の活用が推奨されています。また、日本語学習の機会提供、相談窓口の設置、定期的な面談の実施なども、定着率向上に寄与します。
外国人材の活用を成功させるために
最後に、外国人労働者の雇用に成功している企業の特徴を以下に3点まとめます。
1.外国人労働者を安価な労働力と捉えていない
例えば技能実習生であっても、最低賃金+αの保証、管理団体費の負担、社会保険の適用、戦力化するための人材開発費など、戦略的な人的投資を行う。
2.働きやすい環境の整備
言語や職務遂行能力向上のための研修や日本で働く上で求められるビジネスマナー・一般常識のインプット、相手国の文化理解など、受入れ側の価値観を変えることで外国人労働者が働きやすい職場環境を作る。
3.人事諸制度の整備
自社は社員に何を求めるのか、何をすれば評価されるのか、「人」ではなく「成果」に対する報酬制度の実現など、国籍に関係なくパフォーマンスで処遇が決まる仕組みの再構築。
外国人労働者の雇用を成功させるには、単なる人手不足の補填ではなく、中長期的な人材育成の視点が不可欠です。2027年施行予定の育成就労制度では、3年間の育成期間を経て特定技能への移行が想定されており、計画的な育成と定着支援が制度の前提となっています。
企業には、適正な労働条件の提供、キャリアパスの明示、日本語教育の支援、生活面でのサポートなど、外国人が安心して働き続けられる環境づくりが求められます。また、受入れ企業だけでなく、地域社会全体での支援体制も重要です。各地の外国人雇用サービスセンターや地方自治体の相談窓口、登録支援機関などの外部リソースを活用することで、企業単独では対応が難しい課題にも対処できます。
外国人労働者の受入れは、企業にとって新たな挑戦であると同時に、組織の多様性を高め、グローバル化に対応する機会でもあります。適切な準備と継続的な支援により、外国人労働者が能力を発揮できる職場環境を整えることが、これからの企業経営において重要な要素となるでしょう。
