1. 新規獲得より「既存顧客・LTV重視」へ:顧客ロイヤリティに注目すべき背景と理由
近年、企業を取り巻く外部環境と内部環境が大きく変化し、多くの企業が新規顧客の獲得よりも、既存顧客のライフタイムバリュー(LTV)向上に注力する傾向が強まっています。主な外部環境と内部環境の変化を以下に記載しております。
(1)外部環境の変化
①市場の成熟化
多くの業界で市場が成熟し、新規顧客の獲得が難航しています。特に、競争が激化している市場では、顧客の獲得コストが増加しており、新規顧客を獲得するための広告費やマーケティング費用が高騰しています。
②消費者行動の変化
消費者は、商品やサービスを選ぶ際に、価格だけでなく、ブランドの信頼性や価値観の一致、カスタマーエクスペリエンス(CX)を重視するようになっています。
(2)内部環境の変化
①デジタル化の進展
デジタル技術の進化により、顧客の購買行動や嗜好を詳細に把握することが可能になり、企業は顧客のニーズに応じたパーソナライズされたサービスを提供しやすくなり、顧客ロイヤリティを高めるための施策を実行しやすくなっています。
②収益性の向上
既存顧客のLTVを向上させることは、収益性の向上に直結します。研究によれば、既存顧客を維持するコストは新規顧客を獲得するコストの5分の1程度であり、既存顧客のリピート購入率を5%向上させるだけで、利益が25%から95%増加する可能性があるとされています。
既存顧客を維持し、LTVを向上させる方が効率的であると認識されており、このため、企業は顧客との長期的な関係を築くことが競争優位性を高める鍵と考えています。 これらの理由から、企業は顧客ロイヤリティに注目し、既存顧客との関係を深めるための戦略を模索しています。
2. 顧客ロイヤリティとは?継続購入と愛着度の2軸で捉える定義
本コラムでの顧客ロイヤリティは、顧客が特定の企業やブランドに対して示す信頼、愛着、そして継続的な購買意欲を指します。
(1)顧客ロイヤリティの定義
顧客ロイヤリティにはさまざまな定義がありますが、本コラムでは以下の2つの軸で考えます。
①継続購入
顧客が同じブランドや商品を繰り返し購入する行動を指します。
②愛着度
顧客がブランドや商品に対して抱く感情的なつながりや信頼感を指します。この2軸で顧客ロイヤリティを捉えることで、企業は顧客の行動や心理をより深く理解し、適切な施策を講じることが可能になります。
3. リピート購入を生む条件とボトルネックの特定法:前提確認・要因分析・データ活用
顧客にリピート購買を促すためには、いくつかの重要な要素を考慮する必要があります。
(1)前提条件の確認
リピート購買を促進するためには、まず以下の前提条件を満たしているかを確認する必要があります。
①閾値の存在
顧客が商品やサービスを再度購入するためには、一定の満足度や価値を感じる必要があります。この「閾値」を超えない限り、リピート購買は期待できません。
②商品の付加価値
商品やサービスが競合他社と比較して、明確な差別化ポイントを持っているかを確認します。付加価値が陳腐化している場合、顧客は他社に流れる可能性が高まります。
③顧客満足度の確保
顧客が商品やサービスに満足していない場合、リピート購買は期待できません。顧客満足度を定期的に測定し、改善点を特定することが重要です。
(2)継続購買する理由の特定
顧客が反復購買を行う理由を特定するためには、以下のポイントを分析する必要があります。
①商品理解・認知
顧客が商品やサービスをどの程度理解しているかを把握します。例えば、顧客が抱える課題を解決できる商品であっても、その価値が十分に伝わっていない場合、購買行動にはつながりません。
②販売チャネル
顧客が商品を購入しやすい環境が整っているかを確認します。例えば、オンラインストアの使いやすさ、配送の迅速さ、店舗の立地などが重要な要素となります。
③顧客のライフスタイルの変化
顧客のライフスタイルやニーズが変化している場合、それに対応できる商品やサービスを提供することが求められます。
(3)データの活用
これらの要素を評価するために必要なデータを洗い出し、NPSやVOC分析の際に見るべき切り口として活用します。具体的には、顧客の購買履歴、アンケート結果、顧客の声(VOC)などを分析し、反復購買を促進するためのインサイトを得ることが重要です。
4. 愛着度の測り方と実践:NPSとVOCで推奨者を増やしリピートを促進する
(1)NPS(Net Promoter Score)
NPS(Net Promoter Score)は、顧客が商品やサービスをどの程度推奨するかを測定する指標です。NPSを活用することで、顧客の態度(愛着度)を把握し、リピート購買を促進するための施策に役立てます。NPS調査では、顧客を「推奨者(9~10)」「中立者(7~8)」「批判者(0~6)」の3つに分類します。この分類を基に、顧客全体の傾向を把握します。推奨者は、リファラル(紹介)や口コミを通じて新規顧客を獲得する上で重要な役割を果たします。推奨者を特定し、彼らの声を活用することで、ブランドの信頼性を高めることができます。
(2)VOC分析
VOC(Voice of Customer)は、顧客の声を収集し、分析する手法です。VOC分析を通じて、顧客が商品やサービスに対してどのような評価をしているのかを把握し、改善点を特定します。
①反復購買に関連する声の収集
VOC分析では、反復購買を促進するための要因に関連する顧客の声を収集します。例えば、「商品の使いやすさ」「価格」「カスタマーサポート」などの要素が挙げられます。
②データの可視化
VOCデータを可視化することで、顧客のニーズや課題をより明確に把握できます。例えば、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックを比較することで、改善すべきポイントを特定できます。
5. VOC起点の改善を事業に実装する方法:商品・チャネル・価格・プロモーション・連携・評価
VOC分析を通じて顧客の声を抽出し、それを具体的な改善活動に反映させることが重要です。
(1)VOC分析での抽出観点例
①VOC分析では、前段で特定した「継続購買をする理由」に基づき、抽出していきます。
商品理解に関連する声
顧客が商品やサービスをどの程度理解しているかを示す声を抽出します。例えば、「商品の使い方が分かりにくい」「商品の価値が十分に伝わっていない」といったフィードバックは、商品理解を深めるための改善点を示しています。
販売チャネルに関連する声
顧客が商品を購入する際の利便性や体験価値に関する声を抽出します。例えば、「オンラインストアが使いにくい」「店舗が遠い」「配送が遅い」といった意見は、販売チャネルの改善に直結します。
顧客のライフスタイルや変化に関連する声
顧客のライフスタイルやニーズの変化に対応できているかを示す声を抽出します。例えば、「商品のラインナップが自分のニーズに合わない」「季節やトレンドに対応していない」といったフィードバックは、商品開発やマーケティング戦略の見直しにつながります。
価格や価値に関連する声
顧客が商品やサービスに対して感じる価格と価値のバランスに関する声を抽出します。例えば、「価格が高すぎる」「コストパフォーマンスが悪い」といった意見は、価格戦略や付加価値の向上を検討する材料となります。
プロモーションに関連する声
顧客が商品やサービスを知るきっかけや購入を促進する施策に関する声を抽出します。例えば、「キャンペーンが魅力的ではない」「広告が分かりにくい」といった意見は、プロモーション活動の改善点を示しています。
(2)VOC分析から見えた改善点の具体的な反映方法
VOC分析で抽出した顧客の声を基に、以下の具体的な活動に反映させます。
①商品改善
商品理解に関連する声を基に、商品の価値を顧客に分かりやすく伝えるための施策を実施します。例えば、商品の使い方を分かりやすく説明する動画やマニュアルを作成、商品の特徴を明確に伝える広告を展開します。また、顧客のライフスタイルやニーズに合わせた新商品の開発や既存商品の改良を行います。
②販売チャネルの改善
販売チャネルに関連する声を基に、顧客が商品を購入しやすい環境を整備します。例えば、オンラインストアのUI/UXを改善し、購入プロセスを簡素化します。また、配送スピードの向上や店舗の立地条件の見直しを行い、顧客の利便性を向上させます。
③価格戦略の見直し
価格や価値に関連する声を基に、価格戦略を見直します。例えば、競合他社と比較して価格が高い場合、価格を調整するか、付加価値を強化することで顧客の満足度を向上させます。また、顧客が感じるコストパフォーマンスを改善するために、割引キャンペーンや特典を提供します。
④プロモーション活動の強化
プロモーションに関連する声を基に、顧客に商品の魅力を効果的に伝える施策を実施します。例えば、顧客のニーズに合わせたターゲティング広告を展開し、商品の価値を分かりやすく伝えるキャンペーンを実施します。また、口コミやリファラルを促進する施策を導入し、推奨者の声を活用して新規顧客を獲得します。
⑤部門間の連携強化
VOC分析で明らかになった改善点を各部門に展開し、部門間で連携して施策を実行します。例えば、マーケティング部門が広告戦略を見直し、商品開発部門が新商品の開発を行い、カスタマーサポート部門が顧客対応を改善するなど、全社的な取り組みを行います。
⑥継続的な評価と改善
改善施策を実行した後、その効果を継続的に評価し、必要に応じて修正を加えることが重要です。例えば、NPSやVOC分析を定期的に実施し、顧客の声を収集し続けることで、顧客ロイヤリティ向上の取り組みを持続的に改善していきます。
6. まとめ
顧客ロイヤリティを高めるためには、顧客の継続購買と愛着の2軸で捉え、それぞれに対して適切な調査と改善を行うことが重要です。NPSやVOC分析を活用し、顧客の声を基にした施策を実行することで、既存顧客のLTVを向上させ、企業の持続的な成長を実現することが可能です。顧客ロイヤリティ向上の取り組みは、単なるマーケティング施策にとどまらず、企業全体の戦略として位置づけ、取り組む必要があると考えます。