1. 2025年度デジタル経営アンケートの要旨と本稿の狙い
タナベコンサルティングでは、全国の経営者・経営幹部・DX責任者・DX担当者などを対象に「デジタル経営に関するアンケート」を例年実施しています。ここでは2025年度の結果を見ながら、2026年のDX戦略策定・実行のポイントをお話しします。
なお、詳細についてはデジタル経営に関するアンケート調査レポート 2025年に掲載しております。
2. 2025年DXの全体動向:推進状況・重点領域・人材育成・AI活用・DX認定の5ポイント
(1)DXの推進状況
DXの推進(全社的に推進・一部の部門で推進)や、デジタル活用(複数業務で活用・一部の業務で活用)に取り組んでいる企業の割合は、2025年は全体の約7割を占め、これまでで最も高くなりました。急ピッチで進んでいるとは言い切れませんが、各企業がデジタル化の取り組みを進めている(進めざるを得なくなっている)ことがうかがえます。
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(2)DXの重点領域
DXで重点的に取り組んでいる領域は、「業務プロセスの効率化・自動化」(64.6%)が最も多く、「生成AIや業務特化型AIの活用推進」(36.5%)が続きます。DX(デジタルトランスフォーメーション)という真の意味では、「新規事業・新サービスの創出」などを実現することが大きな目標ですが、実態としては「部分的に」「できるところから」のデジタル化から取り組んでいる企業が多いようです。
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(3)DX人材育成
DX人材育成について、2024年から変わったのは、「検討中」が増加し、「予定もない」が減少したところです。その一方で、「全従業員を対象に定期的に実施している」(11.5%)と「特定部署・役職を対象に定期的に実施している」(10.4%)を合わせても約2割にとどまっていることは2024年からあまり変化がなく、まだまだ実施までには至っていないことがうかがえます。
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(4)AI技術(生成AI含む)の活用状況
「AI活用ガイドラインを整備し、全社的に活用している」と答えた企業は24.7%で、前回2024年での12.2%からほぼ2倍に増えており、個人レベルでの活用から企業としての活用へと展開していることがうかがえます。技術の急速な進歩とともに、企業での利用も急速に増えると想定され、逆に活用しないことがリスク・遅れをとる原因になることも考えられると言えます。
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(5)DX認定制度
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国(経済産業省)が認定する制度ですが、その取得状況を見てみると、「すでに取得している」(10.8%)と「取得に向けた準備・検討を行っている」(9.0%)を合わせても2割にも満たず、まだ認知を含めて広がりが薄いことがうかがえます。
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3. 領域別DXの進捗:ビジネスモデル・HR・マネジメント・オペレーション・マーケティング
(1)ビジネスモデルDX
「既に新規事業・新サービスの立ち上げで活用している」は17.0%にとどまりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の文字通り、新規事業に発展させ、企業としての「変革(トランスフォーメーション)」にまで昇華できている企業はまだ少ないようです。新規事業の立ち上げは難易度が高いですが、実現すればまだまだ先行者利益を獲得できるとも言えます。
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(2)HR(人的資本)DX
「人材データをもとに施策立案・配置・育成等を実施している」は6.3%にとどまり、「データ基盤が整っていない」(25.7%)が最も多い結果となりました。採用・育成・スキル・評価・報酬など、従業員1人に対してもたくさんの人事に関するデータがありますが、その性質上、一部の人しか持っておらず、企業としての活用ができていないという状況がうかがえます。人手不足や人材の流動化はどんな産業でも起きています。自社の人材が最大限に活躍し、「この会社にいてよかった」と思ってもらえるように、デジタル技術も活用した人的資本の価値最大化をする必要がありそうです。
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(3)マネジメントDX
企業内のデータを蓄積・活用し、よりスピーディーに、より透明に、より精度の高い経営判断ができるようにすることが「マネジメントDX」です。アンケートの結果からは、「データは蓄積されているが活用しきれていない」が35.1%と最も多く、その割合が2023年・2024年と比べても増加しています。ノーコードツール活用のハードルが下がっていることや、基幹システムのリプレイスなどにより、データを蓄積する体制は整っているものの、それを活用するフェーズには至っていないことがうかがえます。
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(4)オペレーションDX
業務領域でのDXでは、「AI活用による契約書作成・レビュー業務の効率化」「IoTによるデータ収集プロセスの無人化」「ロボット導入による省力化・省人化」といった取り組みが上位に挙がりました。特定の業務に偏っているわけではないことから、企業ごとの事情や費用対効果など、それぞれ優先順位をつけて取り組んでいることが考えられます。
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(5)マーケティングDX
新規事業や新商品が開発できても、それを認知してもらい、お客様の購買意欲につなげなければなりません。こうした際にデジタルマーケティング戦略の有無やその巧拙がカギとなるのですが、アンケート結果ではデジタルマーケティング戦略に「特に取り組んでいない」と答えた企業が37.5%と最も多くなりました。逆に言えば、まだまだDX後発組にも挽回・逆転するチャンスがあると言えるでしょう。
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4. 2026年に向けたDX推進の実行指針:勝ち筋の選定・人材育成・DX認定の活用
(1)今一度「どの領域で勝負するか」を明確にしよう!
今回のアンケート結果からは、企業でのDX推進は広がっていることがわかりました。ただ、そのスピードはよく言えば「着実」、悪く言えば「それほどのスピードでもない」であり、遅れをとっていると思っている企業でも、まだまだ挽回・逆転のチャンスはあると考えられます。
ただし、企業の限られたリソースの中で「あれもこれも」と手を出し、結果「どれも中途半端」になるぐらいであれば、「わが社はこの領域で勝負する」をしっかり定め、そこで尖る(他社に対する優位性をハッキリさせる)ほうが得策だと考えます。開発、営業・マーケティング、業務、マネジメント、人材といった領域のどこを強化するか、DXレベル表によるチェックなども助けとして、わが社らしいDX戦略を定め、実行していただきたいと思います。
(2)DX推進の人材育成を絶えず進めよう!
DX推進には、変化・進化のスピード著しいデジタル技術に関する知識を絶えずアップデートすることが必要です。また、CDO(最高デジタル責任者:Chief Digital Officer)とまではいかなくても企業・組織を引っ張っていく「DX推進リーダーの育成」と、一人残らず全員がデジタルツールに慣れ親しみ、そして使っていくという「デジタルリテラシーの向上」の両輪が必要で、どちらが欠けても企業のDX推進は進まないと考えられます。人材不足が叫ばれる時代、安易に社外から採ろうとするだけでなく、人材育成を自社内で進めることが重要です。
(3)DX認定なども活かして社内・社外に取り組みを発信しよう!
今回のアンケートでは、DX認定を取得済・取得予定の企業は2割程度だったことから、今からでも取得に向けた取り組みをしても遅くないと考えられます。取得により、税制面での優遇などの実利的なメリットだけでなく、社内でのムード醸成や経営者の覚悟を示す良いツールになり、社外に対しては公表による企業イメージ向上といった効果まで期待できます。もちろん、認定を取得することを目的化しては本末転倒ですが、有力なひとつの発信手段であることは間違いないです。
以上が2025年のアンケート結果と、タナベコンサルティングからの提言です。2026年の戦略策定に大いに活かしていただき、真の意味のDXの実現に向けて、取り組みを加速していただきたいと思います。