人事コラム
人的資本経営が注目される背景と企業に求められる対応策をご紹介
~新たな経営モデルである「人的資本経営」の基本理解と実践~
ここ数年のHRトレンドと人的資本経営が求められる背景
    ここ数年の間に、働き方改革(2018~)、SDGs(2019~)、ウェルビーイング(2020~)、パーパス経営(2021~)と、その年を代表する「メガトレンド」が目まぐるしいスピードで、我々を取り巻く経営環境に押し寄せ、自社の戦略との関係性や繋がりを考える機会(キッカケ)を日々提供してくれている。
上記のような環境変化に加え、少子高齢化やダイバーシティ&インクルージョンの加速、組織に属する意味そのものが変わっていく現代においては、ともに働く社員を資源(コスト)として捉えるのではなく、資本(価値)として捉えることがごく自然な流れであり、これらを総称した新たな経営モデルとして「人的資本経営」に注目が集まっている訳である。
本コラムでは、そんな人的資本経営の実装を視野に各企業がどのような視点に意識を向けて取り組むべきかに絞ってご紹介していきたい。
    人的資本経営の実装に向けて押さえるべき3つのポイント
押さえるべきセンターピン(重要ポイント)は大きく3つあると考える。
1点目は、人材投資の明確化・・・人材に対していかに投資をしていくのか
      2点目は、人材価値と企業価値の連動化・・・人材価値と企業価値をどう繋げていくのか
      3点目は、企業文化の再醸成・・・組織・チームの文化(価値観)をどう育んでいくのか
それぞれ丁寧に掘り下げて確認していきたい。
1.人材投資の明確化
      人材投資の明確化とは、言い換えればどれくらいの意志をもって人材(社員)に対して還元していくかを経営判断として明確にすることである。
      人材版伊藤レポート2.0(経済産業省)の中でも、リスキル(学び直し)や時間や場所にとらわれない働き方について、度々言及されてきているが、金銭的な報酬は当然ながら、トータルリワード(非金銭的報酬)の観点も踏まえて、
      いかに体験価値を還元できるかがポイントであると言える。
      多少飛躍するものの、これらを具体的な数値に落とし込んだ人的資本に関するガイドラインがISO30414であり、経営戦略として落とし込んだのが人事KPIである。
      共通して言えるのは、各社のパーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を踏まえて、個別具体的に設計していくことが重要である。
2.人材価値と企業価値の連動化
      2点目は人材価値と企業価値の連動化である。
      大前提は自社のパーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の再確認・再定義であり、そのうえで、自社の人事戦略を連動させていくことが大切である。
      人材版伊藤レポート2.0でも、経営戦略と人材戦略の連動に関する重要性は問われているが、経営システムとしてのパーパス・MVV・人事戦略の上位概念に一体感を持たせる事と人事部門の戦略人事化はぜひとも押さえていただきたい施策である。
3.企業文化の再醸成
      3点目は企業文化の再醸成である。文化は一日にして成らずである。
      パーパス・MVV・人事戦略を育むうえで、企業文化(カルチャー)は極めて重要な要素であり、企業文化を形成するうえで、非常に重要となる概念としてのエンゲージメント(組織と個人の関係性)については、
      各社、丁寧に現状を押さえていただき、継続的・連続的な定点観測を行っていただきたい。
さいごに
人的資本経営は何も奇をてらった施策ではない。
    古くから日本企業が根幹に持っていた思想をよりロジカル(論理的)に再現性をもって、現代版にリメイクした経営モデルであると言える。
大上段に構えることなく、自社の理想とする世界観を実現するための手段として検討を重ねていただきたい。
