人事コラム

コンサルタント一問一答人事制度・人事処遇制度

絶対評価とは?
絶対評価と相対評価の組み合わせで人事評価の最適化を目指す

自社のビジネスモデルや組織文化に合った、
公平で納得感のある評価制度を構築・運用しよう!

ビジネス環境における人事評価の重要性

ビジネス環境における人事評価の重要性

現代のビジネス環境は、変化のスピードが速く、競争も激化している。
企業が持続的な成長を遂げるためには、優秀な人材を確保・育成し、最大限に活躍いただくことが不可欠である。
そのために人事評価は極めて重要な役割を果たす。

人事評価は、社員の能力・実績・行動などを客観的に評価し、その結果を本人にフィードバックすることで個人の成長を促し、組織全体のパフォーマンス向上に繋げるためのツールである。
適切な評価制度は、社員のモチベーションを高め、エンゲージメントを向上させ、優秀な人材の定着を促進する。
また、評価結果は昇給・昇格・異動・研修へのアサインなどの人事処遇の決定に用いられ、社員のキャリア形成を支援する。

さらに、人事評価は組織全体の戦略目標達成にも貢献する。
個々の社員の目標設定を組織目標と連携させることで、組織と個人が同じ方向を向き、目標達成に向けた取り組みを加速させることができる。

しかし、評価制度が適切に設計・運用されていない場合、個々の貢献や成長に応じて報いることが難しく、社員の不満や不信感を招き、モチベーションの低下や離職率の上昇に繋がる可能性もある。

そのため、企業は自社のビジネスモデルや組織文化(組織カルチャー)に合った、公平で納得感のある評価制度を構築し、運用することが極めて重要である。

絶対評価と相対評価の違いとは?

人事評価制度を見直す上で、まず押さえておくべきなのが「絶対評価」と「相対評価」の基本的な違いである。両者は「基準をどこに置くか」という点で大きく異なる。それぞれの特徴を以下の表にまとめた。

項目 絶対評価 相対評価
定義 あらかじめ定めた目標や基準に対する達成度で評価する手法 所属する集団(組織や部署)の中での相対的な順位で評価する手法
評価の基準 目標達成度・個人のスキル到達度 集団内での順位・他者との比較
評価の分布 決まっていない(全員が高評価になる可能性もある) あらかじめ決まっている(例:S評価10%、A評価20%など)

このように、両者は根本的な評価の仕組みが異なる。かつての日本のビジネス環境では、あらかじめ評価分布が決まっており、人件費をコントロールしやすい「相対評価」が主流であった。
しかし近年では、社員の個人の成長やスキルアップに焦点を当て、評価への納得感を得やすい「絶対評価」へと移行する企業が増加している。
だからといって、絶対評価がすべての企業にとって完璧な制度というわけではない。自社のビジネスモデルや組織風土に最適な人事評価制度を構築・運用するためには、まず両者のメリットとデメリットを正しく理解することが重要である。

絶対評価・相対評価それぞれのメリットとデメリット

絶対評価・相対評価それぞれのメリットとデメリット

絶対評価とは社員の能力や実績を、あらかじめ定められた基準に照らし合わせて評価する方法である。

 

(1)メリット

個々の社員の努力や成果を正当に評価できる点にある。他者との比較ではないため、評価理由を説明しやすく、社員の納得感を得やすい。
また、自身の課題に向き合いやすいため、個人の成長を促すことにも繋がる。

 

(2)デメリット

評価者によるばらつきやブレが生じる傾向にある点である。評価者が社員に良い評価を与えようとする心理など様々なバイアスが働くため、評価基準が曖昧になったり、形骸化する可能性がある。
また、評価者の評価レベルが一定以上育まれていないと想定以上に高い評価ランクが頻出してしまい、結果的に相対的な調整を行わざるを得ない状況になる場合もある。

 

相対評価とは、社員の能力や実績を、他の社員と比較して評価する方法である。例えば、上位何%をS評価、次の何%をA評価というように、社員をグループ分けして評価を行う。

 

(1)メリット

評価の公平性を保ちやすい点である。社員を比較して評価するため、評価者による評価のばらつきを抑えることができる。
また、相対評価は、組織内の競争意識を高める効果も期待できる。社員は、他の社員よりも良い評価を得ようと努力するため、組織全体のパフォーマンス向上に繋がる可能性がある。さらに、あらかじめ評価の分布が決まっているため、人件費の予算をコントロールしやすいという利点もある。

 

(2)デメリット

個々の社員の努力や成果が反映されにくい点である。たとえ優秀な社員であっても、他の社員よりもパフォーマンスが低ければ、低い評価を受ける可能性がある。また、常に他の社員と比較されるため、競争に疲れてしまったり、不公平感を抱いたりする社員が出てくる可能性があり、結果、社員のモチベーションを低下させる可能性がある。

具体的な活用シーンや部門別の導入事例

具体的な活用シーンや部門別の導入事例

絶対評価と相対評価は、どちらか一方が優れているというものではなく、企業の規模や職種、評価の目的に応じて使い分けることが成功の鍵となる。

 

(1)職種・部門別の使い分け

売上や成約件数など、明確な数値目標を設定しやすい「営業部門」においては、個人の成果にダイレクトに報いることができる絶対評価が適している。個人の頑張りがそのまま評価に直結するため、モチベーション向上に繋がりやすい。
一方で、定常業務やサポート業務が中心となる「管理・バックオフィス部門」では、絶対評価の基準設定が難しいケースが多い。このような部門には、全体の評価分布を定めて不公平感を防ぎやすい相対評価が有効に働く場合がある。

 

(2)組織規模や目的に応じた使い分け

組織の規模や評価の目的も重要な基準である。人数が多い組織では、相対評価によって優秀な人材の選抜や人件費の管理がしやすくなる。しかし、少人数の組織では優劣をつけることが難しいため、相対評価は適さないことが多い。人材育成や個人のスキルアップを主目的とするのであれば、他者との比較ではなく自身の課題に集中できる絶対評価を中心に据えるのが望ましい。

 

(3)両者を組み合わせたハイブリッド型の活用

両者のメリットを活かす「ハイブリッド型」の評価制度を採用するケースも増えている。たとえば、「1次評価は個人の目標達成度に基づく絶対評価で行い、2次評価において部門間の甘辛調整や予算配分のために相対評価を用いる」という手法である。これにより、社員の納得感を高めつつ、組織全体の公平性と人件費のバランスを両立させることが可能となる。

絶対評価と相対評価の組み合わせの必要性

絶対評価と相対評価の組み合わせの必要性

絶対評価と相対評価は、それぞれメリットとデメリットがあり、どちらか一方だけでは、必ずしも最適な人事評価を実現できるとは限らない。絶対評価は、個々の社員の努力や成果を正当に評価できる一方、評価者によるばらつきが生じやすい傾向がある。一方、相対評価は、評価の公平性を保ちやすい一方、個々の社員の努力や成果が反映されにくいという問題点がある。
そこで、絶対評価と相対評価を組み合わせることで、それぞれのメリットを活かし、デメリットを補完し合うことが重要になる。絶対評価で個々の社員の能力や実績を評価し、その結果を相対評価で調整することで、より公平で納得感のある人事評価を実現することができる。
例えば、絶対評価で一定以上の評価を得た社員は、相対評価の対象から除外することで、優秀な社員のモチベーションを維持することができる。また、相対評価の結果を絶対評価の参考にすることで、評価の偏りを防ぐことができる。

絶対評価を導入・運用する際の注意点

絶対評価を導入・運用する際の注意点

絶対評価を正しく機能させ、そのメリットを最大化するためには、単に制度を導入するだけでなく、以下の点に注意して運用する必要がある。

 

(1)評価基準のオープン化と多角的な指標の策定

「何を達成すれば、どの評価になるのか」という評価基準を、全社員に対して明確かつ透明にしておくことが不可欠である。
また、評価が結果のみに偏らないよう、売上などの「成果指標」だけでなく、日々の業務姿勢やプロセスを評価する「行動指標」の両面から基準を策定することで、より公平で納得感のある制度となる。

 

(2)個人の目標設定と定期的な進捗管理

企業全体の目標と連動した、従業員一人ひとりの具体的な目標を設定し、評価の拠り所を明確にする必要がある。加えて、期末にまとめて評価するのではなく、期中において四半期ごとの進捗確認や1on1ミーティングを実施し、達成度を定期的にすり合わせることで評価の精度が高まる。

 

(3) 評価者のスキル向上と主観を抑えるルールづくり

絶対評価は他者との比較がない分、評価者の主観に左右されやすく、評価に甘辛のブレが生じやすい。これを防ぐためには、評価者ガイドラインの策定や、評価基準を正しく運用するための評価者研修が欠かせない。さらに、複数の評価者による評価調整会議や二次評価の仕組みを設けることで、評価の客観性を組織として担保することが重要である。

 

評価の納得感を高める評価者研修と人事評価運用のポイントを解説

 

(4)丁寧なフィードバックを通じた人材育成

評価結果を算出して終わりではなく、必ず面談を通じて「なぜこの評価になったのか」「より高い評価を得るために何が必要か」を丁寧にフィードバックしなければならない。納得のいく説明と同時に「次期に向けてどのような目標を立てるべきか」を共に考えることが、絶対評価本来の目的である「従業員の自己成長」とモチベーション向上に直結する。

 

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絶対評価と相対評価を組み合わせた人事評価の最適化方法

絶対評価と相対評価を組み合わせた人事評価の最適化方法

絶対評価と相対評価を組み合わせた人事評価を最適化するためには、以下の点に注意する必要がある。

(1)評価基準の明確化:絶対評価の評価基準を明確にすることで、評価の客観性と公平性を高めることができる。評価基準は、具体的で測定可能なものにする必要がある。例えば、「売上目標達成率」「顧客満足度」「プロジェクトの完了」など、具体的な数値や成果に基づいて評価を行う。
(2)評価者のトレーニング:評価者に対して、評価の目的や評価基準、評価方法に関するトレーニングを実施することで、評価のばらつきを抑えることができる。評価者は、社員の行動や成果を客観的に観察し、評価基準に照らし合わせて評価を行う必要がある。
(3)フィードバックの徹底:評価結果を本人にフィードバックすることで、社員の成長を促し、モチベーションを高めることができる。フィードバックは、具体的な事例に基づいて、良かった点と改善点を伝える必要がある。
(4)目標設定の工夫:社員の目標設定を組織全体の戦略目標と連携させることで、組織全体のベクトルを合わせ、目標達成に向けた取り組みを加速させることができる。目標は、SMARTの法則(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)に基づいて設定する必要がある。
(5)評価結果の活用:評価結果を昇給、昇格、異動、研修などの人事処遇の決定に活用することで、社員のキャリア形成を支援することができる。評価結果は、社員の能力開発やキャリアプランニングにも役立てることができる。

絶対評価と相対評価の組み合わせ方は、企業の規模や業種、組織文化によって異なるものの、タナベコンサルティングでは、個々の働きぶりを把握している一次・二次評価者は絶対評価、組織全体を俯瞰して見ている三次評価者は相対評価にて行うことを推奨している。
また、三次評価者の相対評価はあくまでも評価者による評価のバラつきを確認するものであり、一方的に評価ランク別の出現率に当てはめるということではない旨、留意いただきたい。

絶対評価と相対評価の組み合わせによる効果

絶対評価と相対評価の組み合わせによる効果

絶対評価と相対評価を組み合わせた人事評価を適切に運用することで、以下の効果が期待できる。

(1)社員のモチベーション向上:公平で納得感のある評価制度は、社員のモチベーションを高めエンゲージメントを向上させる。
(2)優秀な人材の定着:優秀な社員は、正当な評価を受けることで企業への愛着を深め定着する理由となる。
(3)組織全体のパフォーマンス向上:個々の社員の目標設定を組織全体の戦略目標と連携させることで、組織全体のベクトルを合わせ、目標達成に向けた取り組みを加速させることができる。
(4)公平性の確保:絶対評価と相対評価を組み合わせることで評価の偏りを防ぎ、より公平な評価を実現することができる。
(5)透明性の向上:評価の理由や評価基準を明確にすることで社員の不信感を解消し、評価制度への理解を深めることができる。

絶対評価と相対評価の組み合わせは、人事評価制度の最適化に向けて有効な手段である。自社の状況に合わせて、最適な組み合わせ方を選択し、社員の成長と組織全体のパフォーマンス向上を目指していただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

鈴木 大誠

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフ

鈴木 大誠

「クライアントに寄り添い、組織・個人の成果最大化に貢献する」をモットーに、中堅・中小企業向けの人事制度再構築や教育制度構築に従事している。 また、中堅・若手・新入社員を対象とした研修の企画・運営や、コーディネーターとして講義・指導も担っている。

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