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先を見通しにくい社会状況を背景に、企業の存在意義を軸とするパーパス経営が注目されています。
パーパス経営では、自社ならではの価値を見出し、写真にパーパス(目的)を共有します。従業員一人ひとりは、パーパスに基づいた自らの目標や課題に対して迅速な解決を求められるでしょう。
今回は、パーパス経営の概要や、メリットと事例についてご紹介します。
パーパス経営とは意義を掲げる経営
purpose(パーパス)は、目的・意義・理由を意味します。企業が存在する意義(= パーパス)を掲げてステークホルダーに共有します。そのうえで、従業員一人ひとりが課題に取り組み、成果を上げる経営がパーパス経営です。
企業の存在意義は、事業を通した社会や地球環境の課題解決です。パーパス経営は、事業収益と社会貢献が一体的で、同じベクトル上にあります。従来のような事業収益優先の考え方と異なるといえるでしょう。
パーパスと経営理念の違い
経営理念を具体化する方法として、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)があげられます。
●ミッション:企業の使命
●ビジョン:企業の方向性・将来像
●バリュー:企業の価値
パーパスは経営理念におけるミッションと似ています。
従来の経営理念に社会貢献や環境保全が含まれていれば、パーパスとして設定できます。これからの経営理念は「パーパス」が軸になるでしょう。
パーパス経営が必要とされる理由
パーパス経営が求められる理由として、近年の世界や日本の社会的関心や価値観の変化があげられます。ここからは、パーパス経営が必要とされる具体的な理由を紹介します。
①サスティナビリティへの関心
2015年の国連サミットで、SDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。地球環境や貧困の問題を解決するために、サスティナブル(持続可能)な環境や社会が求められます。SDGsには、企業が果たすべき役割も含まれています。
企業はSDGsの目標のうち、自社に関わるものを採り入れなければなりません。 経営や生産活動への反映が必要です。企業の持続可能性にも関わってくるでしょう。
②ESG投資への注目
世間のサスティナビリティへの関心は、投資にも影響します。従来の投資家は、投資に対する単純なリターンを求めていました。しかし、現在はESG(環境/社会/ガバナンス)に配慮した企業を評価し、投資する投資家が増えています。
このような投資家は、直接的な利益のためだけに投資をしません。社会の問題を解決しつつ、リターンを得られるような投資をおこないます。企業はそのような意向にも応える必要があります。
③ミレニアル世代以降の消費傾向
ミレニアル世代、すなわち1980年〜90年代半ばに生まれた世代(20歳で2000年を迎えた世代)は、SNSが身近にあります。
この世代の消費傾向を以下に挙げます。
●社会に関心が高く当事者意識も強い
●SNSで共感した商品・サービスを手に入れる
●体験や共感に価値を感じる
●お金の使い方にこだわりを持つ
●地球環境や社会に貢献する企業やサービスを選ぶ
この傾向は、子どもの頃からネットやデジタルデバイスに慣れ親しんでいるZ世代にも、受け継がれています。
④VUCA時代である
VUCAは、以下の頭文字を取った造語です。
●Volatility(変動性)
●Uncertainty(不確実性)
●Complexity(複雑性)
●Ambiguity(曖昧性)
自然災害や、科学技術の変化により想定外の出来事が起こる恐れがあります。企業活動の前提が覆される可能性もあるでしょう。企業は想像力を働かせ、あらゆる手段を模索しなければなりません。
パーパス経営を導入するメリット
パーパス経営は直接的に利益に作用しません。企業活動の社会的意義を浸透させて、人的資源を活性化させます。
ここからは、パーパス経営のメリットを紹介します。
①意思決定の統一化
パーパスを社内で共有することで従業員が企業と同じ方向を見て活動をすることができます。
そうすることで、日々の業務において従業員の意思決定の判断基準が統一されるでしょう。
また、会社としても組織全体の意思決定の判断基準が統一されることで、理念に反した活動や非効率な業務の抑制につながります。
②ステークホルダーからの信頼獲得
トップが企業の方向性や熱意を従業員と共有し、顧客や社会に知らせることで、ステークホルダーは安心し信頼・投資を得られます。それにより企業の社会的意義に共感し、支援者や商品・サービスの愛好者が増えるでしょう。
③従業員エンゲージメントの向上
パーパスが社内に浸透していない場合、従業員は企業の意義や方向性がわかりません。
企業の意義や方向性を理解できていないことで、仕事を行う意義ややりがいがわからなくなってしまうこともあります。
パーパスが浸透することで、従業員は進むべき道を改めて理解できます。
仕事のモチベーションややりがいの向上に繋がり、より積極的に会社への貢献をしてくれるでしょう。
パーパス経営の成功事例3選
パーパス経営を成功させた企業例を紹介します。
パーパスを浸透させて、従業員が経営に参加できることが成功のカギです。
①株式会社ウェルカム
株式会社ウェルカムは、食とデザインのプロデュースを行っています。飲食・小売店の経営を通して、良質なライフスタイルを提案する事業を展開しています。
「日常のハレ」を創り出すブランディング活動を背景に、パーパス「We make good changes 日々を魅せよう、日本を沸かそう」を策定しました。
新たに街やコミュニティづくりにつながる事業を手がけています。「店づくりは街づくり」の想いを形にするため、商業施設やホテルのプロデュースを地位活性化へつなげる活動を展開中です。
スマホアプリを用いてグループ全体へのパーパスの浸透を図っています。その他、従業員の気づきを発信して社内で共有するなどの取り組みを実施した結果、モチベーション維持に成果をもたらしています。
②株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは新しい未来のテレビ「ABEMA」やインターネット広告、ゲームなどのメディアと広告関連事業を展開しています。
社員が持つ「社会への貢献を感じ取りたい」という思いを受けて、パーパスを「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」と策定しました。
これはABEMAで取り組んでいるテレビのイノベーションにも沿った概念です。若い人に限らず新しいものを使いこなす人のパワーに着目したパーパスです。
③ユニリーバ
食品やビューティケア・ホームケアなどの消費財を提供するユニリーバは、パーパスを「サステナビリティを暮らしの"あたりまえ"に」に策定しました。
パーパスを通して利益を生み出す考え方に基づいた成長戦略「ユニリーバ・コンパス」を打ち出し、社会に対して責任のある成長を目指しています。
●プラスティックのサーキュラーエコノミーへの移行
●水資源が十分でない環境で使用できる製品の開発
●女性の収入と暮らしを向上
●植物の力で健康的な食生活
上記の取り組みによって、社会に貢献しつつ利益を上げています。
まとめ
パーパスとは、経営理念を具体化したMVVに、社会貢献の概念を加えたものです。社会や経済が変化する時代で、事業を持続可能にするための全社的な取り組みに対してはパーパスが必要です。
パーパスを社内やステークホルダーに共有すれば、安心感や信頼を得られます。企業と社会の利益を上げる概念といえるでしょう。
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