人事コラム
優秀人材確保のためのキャリアアップ助成金「正社員化」とは?
申請のポイントは、「キャリアアップ計画書の事前提出」「就業規則への転換制度明記」「転換後6か月賃金の3%以上増額」「期限内の支給申請」
キャリアアップ助成金申請における、非正規雇用労働者を正社員化する「正社員コース」を中心に、申請時に押さえるべきポイントを解説する。また併せて「処遇改善支援に関するコース」を活用する際の考え方にも触れる。
助成金はゴールではなく、優秀人材をつなぎとめ、戦力化する仕組みづくりの一つとして上手く活用する。
キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは
キャリアアップ助成金「正社員化コース」とは、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者などの非正規雇用労働者を就業規則等に基づき正規雇用労働者へ転換または直接雇用した事業主に対して助成する制度です。厚生労働省が所管する助成金であり、雇用保険適用事業所の事業主であれば原則として申請対象となります。
この制度の目的は、非正規雇用労働者のキャリアアップと処遇改善を促進することにあります。正社員化によって労働者の雇用安定と収入向上が期待できるとともに、企業側にとっても人材の定着・育成につながる取り組みとして位置づけられています。
助成金の支給額は転換の類型や企業規模によって異なります。正社員化コースでは、転換後6か月間の賃金を転換前6か月間の賃金より一定割合以上増額していることが重要な要件となります。申請時には必ず厚生労働省の最新のパンフレット・支給要領・申請様式を確認する必要があります。
この制度を活用した企業に共通する「正社員化に踏み切った背景・きっかけ」とは
キャリアアップ助成金の正社員化コースを活用して正社員化に踏み切る企業には、いくつか共通した背景があります。
①人手不足で、既存人材を逃したくない
新規採用が難しいなかで、外部市場から採用を行うより「すでに自社の業務を理解している有期雇用労働者やパートタイム労働者を正社員化することで定着を図る」ケースです。
②すでに実務で戦力化しており、見極めが済んでいる
勤務態度・スキル・協調性などを一定期間確認できているため、外部から新たに採用するよりもミスマッチのリスクを押さえやすくなります。
「この人なら長く任せられる」という確認ができた段階で正社員登用を検討します。
③責任ある仕事を任せる必要が出てきた
リーダー業務、後輩指導、顧客対応、売場管理、事務の中核業務などを任せるにあたり、より広い役割を期待するタイミングです。
有期雇用のままだと役割設計しにくく、正社員登用が進みにくいです。
支給額の改定が毎年ある際に、「改定前後に申請のタイミングを意識した」事例について
制度改定の前後では、転換日、就業規則等の施行日、賃金改定日、支給申請日などの時期によって、適用される要件や様式が変わる場合があります。
たとえば正社員化コースでは、単に申請書の提出日だけでなく、キャリアアップ計画の提出日、就業規則等に定めた転換制度の整備時期、実際の転換日、転換後6か月分の賃金支給日、支給申請期限を一連の流れで確認する必要があります。
実務上は、制度改定の情報が公表された段階で、対象者の転換予定日や社内決裁、就業規則改定、労働条件通知書の作成、賃金計算スケジュールを確認し、最新の要件に沿って無理のないスケジュールを組むことが重要です。
ただし、助成金の受給を目的として形式的に日付だけを調整するのではなく、実際の雇用管理、労働条件、就業規則等の内容と整合していることが前提となります。
正社員化コース活用のポイントについて
キャリアアップ助成金「正社員化コース」を効果的に活用するためには、制度の要件を正確に把握したうえで、社内の人事制度・就業規則と整合させた運用設計が求められます。
特に留意すべき点として以下4点があげられます。
①就業規則への転換制度の事前規定
②キャリアアップ計画書の事前提出
③転換後の賃金増額要件の充足
④申請期限の厳守
これらは申請の可否を左右する根幹要件であり、いずれか一つでも欠けると支給が認められない場合があります。
また、助成金の受給はあくまで人材定着・処遇改善施策の一手段です。正社員化後のキャリアパスの整備や評価制度との連動を図ることで、転換した労働者のエンゲージメント向上と長期的な定着につなげることが、制度活用の本質的な目的といえます。
制度の内容・支給額・要件は年度ごとに改定される場合があります。
申請前には必ず厚生労働省の最新の公式情報を確認するとともに、必要に応じて社会保険労務士等の専門家に相談することをお勧めします。
「正社員化後のキャリアパス整備や評価制度との連動」について、
支援現場で実際に取組んだ事例
正社員転換に合わせて「等級」と「役割」を見える化した事例があります。
ある企業では、有期雇用やパートタイムで勤務していた従業員を正社員へ転換するにあたり、正社員になった後にどのような役割を期待されるのかが明確になっていませんでした。
そこで、一般職1等級、一般職2等級、主任補佐といった簡易な等級区分を設け、それぞれの等級に応じて「求める役割」「担当できる業務」「今後習得してほしい業務」を整理しました。あわせて、正社員転換時の職務内容や賃金水準の位置づけも明文化しました。
その結果、単に雇用区分を変更するだけでなく、本人が将来の昇格や役割拡大をイメージしやすい正社員化となりました。面談時にも期待役割を具体的に共有できるようになり、本人の納得感向上にもつながりました。
さいごに
キャリアアップ助成金「正社員化コース」は、助成金受給そのものを目的に活用する制度ではなく、優秀な人材を確保し、定着につなげるための人事施策として捉えることが重要です。
採用が難しい時代だからこそ、すでに自社で実績を積み、適性を見極められている非正規雇用人材を正社員化し、役割・処遇・成長機会を明確に示していくことが、実効性の高い人材確保策になります。
助成金はあくまでその取り組みを後押しする手段です。制度活用をきっかけに、キャリアパスや評価制度まで含めた仕組みづくりを進めることが、企業の持続的な人材力強化に繋げましょう。
本事例に関連するサービス
関連動画
評価制度の基本理解
~社員が育つ評価制度の作り方とその運用方法とは!?~
単なるモノサシではなく、社員が育つ適切な評価制度の作り方、ならびにその運用方法を事例を交えて解説します。
この資料をダウンロードする