人事コラム
給与テーブルの作り方ガイド
─ 優秀な人材が辞めない賃金レンジと人件費コントロール
給与テーブルは、等級や評価、勤続年数に基づき給与を決定し、透明性と公平性を確保する基準表です。
「賃上げ」が連日ニュースに取り上げられるようになった昨今、賃金の決定が経営者、人事担当者の頭を悩ませている。
適正な給与テーブルの設計方法を理解し、実践することで、自社に適した、かつ競争力を最大化させる賃金決定が可能となる。
適正な賃金設定を実現するための賃金テーブル
給与テーブル導入の目的と役割
給与テーブルの導入は、企業の給与体系を透明かつ公平にするための重要な手段です。
給与テーブル導入の主な目的と役割は下記のとおりです。
- ①透明性の確保
給与決定基準を明確にすることで、評価がどのように反映されるか明確になります。 - ②モチベーション向上
期中の評価結果を給与に反映することで、社員のモチベーション向上を促すことができます。 - ③賃金管理の効率化
給与決定までのプロセスが明確になり、給与管理コストを軽減します。 - ④法的リスクの軽減
公平な給与体系は労働法規に準拠し、労働争議のリスクを低減します。
総じて、給与テーブルは企業の持続的成長と社員満足度の向上に寄与する重要なツールであるといえます。
給与テーブルの種類
給与テーブルは、大きく①号俸表、②段階号俸表、③ゾーン型給与表、④複数賃率表の4つに大別されます。
いずれの仕組みにおいても、一定の基準に基づいて給与を決定するため、公正な給与の算定が可能となります。
また、給与テーブルを社員に公開することで、給与に対する納得感を醸成することが可能となります。
1.号俸表
等級(横軸)と号俸(縦軸)で構成される額表で、等級/号俸別に設定された金額により給与を算定する仕組みとなっています。
号俸表は1号俸が下限額を示し、毎期1号俸ずつ上昇するのに合わせて賃金も上昇していきます。
また、1号俸当たりの昇給金額をピッチと呼びます。一般的にピッチは等級ごとに設定され、各等級の昇給額を設定することができます。
号俸による給与算定の仕組みはあらゆる給与テーブルに応用されており、設計に際しては必ず押さえておく必要がある基本的な形であるといえます。
2.段階号俸表
段階号俸表は、号俸表に毎期の評価結果を反映した給与テーブルです。号俸表では、毎年1号俸ずつ昇給するのに対し、段階号俸表は評価結果ごとに設定された昇給号俸数に応じて、毎期の昇給額が変動します。毎期、昇給号俸(昇給額)が積み上げ式で算定されるため、一回の評価結果がその後の基本給に影響することも大きな特徴の一つと言えるでしょう。
段階号俸表では評価ごとに昇給号俸数(昇給額)が設定されているため、社員のパフォーマンスによって、昇給額に差が出ます。そのため、上限額の設定には注意する必要があります。上限額を低く設定しすぎてしまうと、ハイパフォーマーが上限額に達してしまうため昇給が止まってしまいます。また、上限額を高く設定しすぎてしまうと人件費の増大につながってしまいます。適切な上限号俸数(上限額)を設定するためには、標準滞留年数をもとに昇給スピードをシミュレーションする必要があります。また、昇格基準との連動を測ることで、予期せぬ昇給停止を防ぐことができます。
3.ゾーン型給与表
ゾーン型給与表とは、号俸表において等級ごとに基本給範囲(ゾーン)を設定し、それぞれのゾーンに評価ごとの昇給号俸数を設定した給与テーブルを指します。つまり、段階号俸表の昇給システムをより詳細に作り込んだものが、ゾーン型給与表と言い換えることができるでしょう。一般的には、等級内の高い基本給範囲ほど、評価ごとの昇給号俸数を低く設定し、滞留すればするほど昇給率が低くなる設計をします。それにより、同一等級に滞留すればするほど昇給率が低くなるため、昇格への意欲を高める効果が期待できます。ゾーン型給与表を適切に運用するためには、適正な昇格条件の設定と厳正な運用が欠かせない仕組みとなります。
4.複数賃率表
複数賃率表とは、号俸表を基準として、一つの号俸に複数の基準額のランクを設定するものです。毎期、1号俸ずつ昇号し、評価結果に基づいて号俸に設定された金額が基本給となる仕組みです。複数賃率表の最大の特徴は、前年の昇給額が基本給の算出に影響しない洗い替え方式をとっている点です。そのためこの給与テーブルの下では、社員は毎期新たな気持ちでの職務遂行につながりやすい反面、昇給額がリセットされるため、やりがいを感じにくくなる可能性があります。
まとめ〜競争力のある賃金制度を設計するために〜
給与テーブルの設計において最も重要なのは、企業の経営戦略や人事方針と整合性を持たせながら、社員の納得感とモチベーションを高める仕組みを構築することです。方針と連動した給与テーブルの設計により、社員を適切に方向付けすることが可能となります。
まず、給与テーブルの設計は「公平性」と「透明性」を確保することが基本です。社員が自分の給与がどのように決定されているのかを理解し、納得できる仕組みであることが求められます。給与の決定基準が不明確であったり、評価と連動していない場合、社員の不満や不信感を招き、モチベーションの低下につながる可能性があります。そのため、給与テーブルの基準や昇給ルールを明確にし、可能な範囲で社員に公開することで、透明性を高めることが重要です。
次に、「戦略的な一貫性」を持たせることも重要です。給与テーブルは、企業の経営目標や人材戦略と密接に関連しています。例えば、若手社員の早期の活躍を促したい場合には、「成果主義」の思想に基づき、若手のうちから大きく昇給する仕組みを導入するなどして、方針と連動した仕組みとすることが可能です。一方で、コスト管理の観点からは、昇給スピードや上限額を慎重に設定し、企業の財務状況に見合った制度設計を行う必要があります。このように、給与テーブルは企業の戦略を実現するためのツールとして機能させるべきです。
最後に、給与テーブルの設計においては、社員の声を反映させることも大切です。社員がどのような報酬制度を望んでいるのか、どのような点に不満を感じているのかを把握することで、より実効性の高い制度を構築することができます。これにより、社員のエンゲージメントを高め、組織全体のパフォーマンス向上につなげることが期待できます。
総じて、給与テーブルの設計は、企業の戦略と社員の期待をバランスよく反映させることが鍵となります。公平性、透明性、戦略連動性を兼ね備えた給与テーブルを検討することで、自社にあった仕組みを構築することができるようになります。