人事コラム
人材育成

助成金活用を踏まえた、リスキリングの社内推進ポイント

デジタル社会を生き抜くためのリスキリングを、価値ある学びとするためのポイントをご紹介

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助成金活用を踏まえた、リスキリングの社内推進ポイント

助成金ありきではなく、なぜリスキリングに取り組むべきなのか
コンセプトを明確にし、企業の推進力を高める

リスキリングと世の中の動き

リスキリングと世の中の動き

リスキリングとは、新たな時代に必要な能力の再開発のことであり、今後新たに発生する業種・職種・領域に順応するための知識やスキルを習得することを指す。
近年リスキリングが注目を浴びている背景として、急激に発達するAIの登場やDX化の推進により、今の仕事が10年後・20年後も当たり前に存在するという前提が崩壊していることが考えられる。

加えて、我が国における労働人口が今後も減少傾向であることが予想されており、その対策の一環として、各企業が社員に新たな知識・スキルを習得させる動きが広まっている。
このような背景のもと、企業のリスキリング推進を後押しするために、行政が助成金を提供し日本全体としてリスキリングを推進する動きが活発になっている。

リスキリングに関する助成金の種類

行政が設けているリスキリングに関する助成金の種類は以下のとおりである。

※2024年5月1日時点の情報

(表1)人材開発支援助成金について
コース名 対象となる訓練等
人材育成支援コース 10時間以上のOFF-JT、新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練、有期契約労働者等の正社員転換を目的として実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練
教育訓練休暇等付与コース 有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を導入し、労働者がその休暇を取得して訓練を受けた場合に助成
建設労働者認定訓練コース 職業能力開発促進法第24条第1項に規定する認定職業訓練又は同法第27条第1項に規定する指導員訓練のうち、別表に定める建設関連の訓練
建設労働者技能実習コース 建設工事における作業に直接関連する実習 など
人への投資促進コース 高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練   など
事業展開等リスキリング支援コース 事業展開やDX・GXに伴い新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練


助成金を活用することで、より少ないリスクで社内の人材育成を活発化させることができる。
一方、助成金ありきでリスキリングの導入を検討した場合、事業の成長を後押しするようなスキルではなく場当たり的になりやすい。
単に「学んだだけ」で終わってしまうことを避け、学びを成果として発揮できるようにするためには、自社に沿ったリスキリングのコンセプトを明文化することが重要となる。

具体的には次の項目で紹介する。

社内でのリスキリング推進の考え方

社内でのリスキリング推進の考え方

(1)リスキリング推進の目的を洗い出す
まず初めに、なぜリスキリングを推進するのか、という目的を明確化することが必要だ。
目的が不明確な状態で新たなことを学んだ場合、本来得たいスキルを得られない可能性や、習得効率低下の恐れがある。
推進の理由は様々考えられるが、以下を参考にしていただきたい。


  • ・非効率な〇〇業務を効率化させ、生産性を上げたい
  • ・〇〇業務の属人化を解消したい
  • ・新規事業を担当するために必要な能力を身につけたい


上記の目的をリスキリングを実施する本人にも共有をすることで、意味のある学びへと繋がる。

(2)リスキリング推進のメリットが自社に当てはまるかを確認する
次に、上記で挙げた目的を達成するための手段として、リスキリングが適当なのかを精査する必要がある。
例えば、自社にないノウハウを得たいのであれば、既存社員にスキルを身に付けてもらうより、その経験を有した外部人材を採用するという手段もある。他にも業務自体を外注化するという判断も考えられるだろう。
リスキリング推進するメリットと、代替手段のメリットを比較した上で、最終的にベストな手段を取られることを推奨する。

(3)リスキリング推進のためのコストは許容範囲内であるか確認する
最後に、リスキリングを推進するためにかかるコストを確認する。この段階で助成金の活用を検討いただくことで、助成金ありきのリスキリングではなく、本当に自社に必要なリスキリングを実施できるのである。

あくまで助成金は補助ツールであることを念頭に置き、自社の成し遂げたいこと(目的)を見失わずにリスキリングを活用いただきたい。

リスキリングの活用事例

リスキリングの活用事例

最後に、リスキリングの活用事例を記載する。

<食品業界A社>
主にDX・ITを学べるeラーニングを導入
スキルを身につけることで何が出来るようになるのかを明確に社員に対して示すことで、学びの効果を最大化している。

<IT業界B社>
キャリアアップに必要なスキルを明確化し、階層別に何を学ぶ必要があるのかを具体的に社員へ公開し、リスキリングの取り組み状況を評価制度へ反映させることで、高いモチベーションで取り組む体制を構築している。

他にもリスキリングを活用している企業の中には、企業内大学を設立するケースがある。
それにより、社員が新たな知識を身につけられるだけなく、社員同士で教え合う文化の醸成や、学べる環境が整うことでインナーブランディングにも良い影響をもたらす。

まとめ

リスキリングが注目される昨今、助成金の活用に踏み切る企業は今後も増えてくると考えられる。
成功している企業の事例や、活用を支援するための助成金など、リスキリングの導入に向けた動きは続くと考えられる。しかし、必要な知識・スキルは企業ごとに異なるものであり、リスキリングを成果に繋げることができている企業はまだまだ少ない。改めてリスキリングに取り組む目的を再定義し、自社に取って最適な方法を選択いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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