持株会社とは?種類やメリット・デメリット
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近年、企業規模や業種を問わず、持株会社を中心としたホールディングス体制へ移行する企業が増加しています。従来は事業承継の手段として、その中でも特に資本・株式の承継の手段として活用されることが主流でしたが、近年においては持株会社設立の目的自体が多様化しており、企業においては固有の目的に応じた自社らしい経営体制を模索することが重要になっています。今回は、持株会社のメリット・デメリットを中心に、皆様にタナベコンサルティングの考え方をお伝えします。
持株会社とは何か?
持株会社とは、傘下にしている会社の株を保有・支配する会社のことを指し、大きく分けて「純粋持株会社」と「事業持株会社」の2種類があります。
純粋持株会社は、自らは事業を行わず、子会社の株式を保有するだけの会社のことです。株式移転によって持株会社となる場合は、親会社となる持株会社を新たに設立する必要があり、この場合は持株会社には既存の事業が存在しないため、設立後の持株会社はグループ企業の統治のみを行う純粋持株会社になります。グループ全体の経営管理に専念できる一方で、子会社からの配当金収入が主な収入になるため、子会社の業績に左右されやすい側面があります。
事業持株会社とは、自らも事業を行いながら、子会社の株式を保有する会社のことです。株式交換によって持株会社となる場合は、持株会社後も既存事業を継続するため、事業持株会社としてグループ企業の統治を行いながら事業も継続します。自社の事業と子会社の事業のシナジー効果を狙える一方で、自社の事業と子会社の事業のバランスを取ることが難しい側面もあり、自社の事業と子会社の事業の競合や衝突を避けることも必要になります。
ホールディングス化を行う際には、上記の純粋持株会社と事業持株会社のどちらを選択するかは慎重に検討することが必要です。自社の事業内容や目的、子会社の事業内容や規模、グループ全体の経営方針や戦略などを検討したうえで、最適な選択をすることが必要であり、その選択結果は会社によって異なります。
持株会社のメリット
持株会社にするメリット・デメリットは何なのかとコンサルティングをしている際によく聞かれます。その際にメリットとしてよく挙げているのは「グループ経営の推進」「経営リスクの分散」「M&Aの円滑な実行」の3点です。
「グループ経営の推進」についてですが、タナベコンサルティングではグループ経営と分社経営を分けて考えており、必ずしも複数の企業を保有している経営スタイルをグループ経営と呼んでいるわけではありません。まず、各社がバラバラに経営している状態をタナベコンサルティングでは分社経営と呼んでいます。分社経営の状態では1+1は2にしかならず、複数の会社を保有するシナジー効果を得ることができません。そこで1+1が2以上の効果を発揮するために、グループ全体で下記に記載する5つの機能を実装する必要があるとタナベコンサルティングでは提唱しています。1つ目はグループ企業としてのベクトル・価値判断基準である「グループ理念」を明確化することです。全ての人が同じ方向を向いている組織が一番強いとされることから、グループのミッション・ビジョン・バリューの設計は必要不可欠です。2つ目はグループ全体の最適を実現する資源配分とシナジーを発揮するための「グループ経営企画機能」の設計です。3つ目はグループ全体を統制する「グループガバナンス機能」の設計です。4つ目はグループ全体を管理・評価する「マネジメントシステムの構築」です。5つ目は共通オペレーションの集中処理を実現する「シェアードサービス機能の設計」です。複数の会社で共通する経費などは一緒にすることで効率化させることが重要になってきます。
続いて「経営リスクの分散」についてですが、持株会社の傘下にあるグループ会社は、各社が法人格を持っており、各社同士が独立した関係を維持しています。仮に業績悪化や損害賠償などのリスクが生じた場合でも、他のグループ会社に直接影響することはありません。このように、グループ会社は持株会社以外のグループ会社と資本関係がないため、経営リスクを分散することができます。また、売却したいと考えた場合も、グループ会社ごとに売却することができることもメリット(容易に売却できる)として挙げることができます。
最後に「M&Aの円滑な実行」についてですが、持株会社の傘下のグループ会社に上下関係がなく、兄弟会社として並列に配置され独立して営業を行う体制になっているため、買手としてM&Aを行う場合、売手(被買収側)の従業員などに不安や心理的抵抗を与えることが少ないと思われます。要するにM&Aを円滑に進めることができ、M&A後のシナジー効果も期待できるということです。
持株会社のデメリット
持株会社のデメリットとして、「求心力の低下」「グループ内の連携」「管理コストの増加」の3点が主に挙げられます。
「求心力の低下」についてですが、グループ会社が事業を円滑に行うためには、ある程度の権限を与える必要があります。それにより、各グループ会社の裁量権が大きくなると、持株会社の求心力が低下して持株会社との意思疎通が難しくなる場合があります。要するに「求心力」と「遠心力」のバランスを取る必要があるということです。
続いて「グループ内の連携」についてですが、各社ごとに決算を行うため、独立性が高くなり過ぎるとグループ内での連携が難しくなることもあります。連携力を維持するために、グループ全体に横ぐしを入れるようなコミュニケーションパイプの設計を行う場合もあります。
最後に「管理コストの増加」についてですが、基本的には各社ごとに管理をするため、グループ会社の数だけ管理コストがかかります。一方で、管理を効率化するために、持株会社にシェアードサービス機能を付与してグループ全体の間接業務を持株会社に集約する場合もあります。
まとめ
持株会社のメリット・デメリットという切り口で持株会社について今回説明しましたが、いかがだったでしょうか。一方で上記のようなメリット・デメリットばかりに固執し過ぎると意思決定しないあるいはできないということも生じます。なので最終的には「企業を長期的に存続させる」という目的を達成するためにどの体制にすべきかという観点で持株会社化を検討すべきであり、経営者の理念に対する意思の強さが試されるとも考えています。
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