COLUMN

2023.09.04

組織の持続的成長の鍵 ガバナンスとは

  • ホールディング経営

組織の持続的成長の鍵 ガバナンスとは

ガバナンスは「統治」「支配」「管理」を意味する言葉です。ビジネスにおいては企業経営における透明性・責任・信頼性を確保し、健全な運営がされるよう、監視・統制する仕組みを意味します。コーポレートガバナンスとも呼ばれます。

ガバナンスの重要性は年々認知されるようになってきましたが、「具体的に何をすればよいのか分からない」という方も多いかと思います。

上場企業が守るべき行動規範は「コーポレートガバナンス・コード」として東京証券取引所より発表されており、基本原則・原則・補充原則の合計70超から成り立っています。上場企業のコーポレートサイトでは、ガバナンスへの取り組みを参照することができます。非上場企業は、これらのコードに従う必要はありませんが、「コードの要素を取り入れる」ことは非常に有効です。非上場企業と言えども、ガバナンスに対する取り組みは社会的責任として求められるようになってきました。

このコラムではガバナンスの重要性を掘り下げ、組織の持続的成長を担う役割やポイントに焦点を当てます。

権限と責任の明確化

組織運営において、権限と責任のバランスは非常に重要です。例えば、社内の生産性改善PJを担当しているAさんがいるとします。Aさんは責任のある仕事、ポジションに就いていますが、権限がありません。いかにAさんが頑張ってPJを推進し、会社が良くなるようと提案したとしても、実行力が伴わなければ、モチベーションに関わってきます。

何も権限がないから動けないということはよくあることです。これでは、組織は成長できません。「誰に」「どんな」権限と責任を明確に与え、最大限のパフォーマンスを発揮してもらうことが重要です。

特に日本企業は伝統的に各グループ会社の権限・影響力が強く、各グループ会社の「部分最適」が優先される傾向があります。企業全体で見た際に、経営資源の最適配分、事業評価や実効的な経営管理のための共通プラットフォームを構築する機能が、必ずしも十分発揮されていません。

そのためにも、組織運営の基準となるのが、権限と責任です。

権限と責任の明確化への取り組みとして、下記内容がポイントになります。

(1)役員人事・報酬ルール(選任・退任・評価基準等)の整備
(2)決裁・稟議ルールの整備
(3)グループ内人事異動のルールの整備

これらの諸規定・ルールの整備は組織経営の基盤となります。重要なのは単なるルール設計だけではなく、制度を運用することによる「人と組織の成長」に本質的な目的があります。企業規模が成長する中でも、安定した経営を行うために、規模に合ったルールを構築し、次の運用・定着につなげていくことが重要になります。

コンプライアンス・リスク管理体制の構築

ガバナンスとコンプライアンスの違い

近年、企業の不祥事の急増や法改正などの社会背景に加え、グローバル・スタンダードの要請もあり、企業のコンプライアンスという概念が重要視されるようになりました。そこには、不正防止や商品の安全性を守るなどの倫理的な問題に対しても、説明責任を含め、企業が社会的責任を果たすべきだという考え方が含められていると思われます。改めて、企業と社会の関係がより強くなっています。

コンプライアンスは組織運営においての重要なキーワードです。ガバナンスとコンプライアンスは似ているようですが、目的は違います。
ガバナンスは先ほどの「健全な判断・運営がなされるよう、監視・統制する仕組み」を意味しますが、コンプライアンスは「法令遵守」であり、倫理観や公序良俗など社会的な規範に従うことを意味します。コンプライアンスは法令や社内のルールに従うことに対し、ガバナンスは、コンプライアンスの意識を高め、それを維持するための管理・統制の仕組みを構築することを目的にしています。

管理体制構築のステップ

コンプライアンス・リスクの管理体制に向けて、構築ステップイメージを紹介します。

1.リスクアセスメントと優先順位付け

組織内における潜在的なリスクを評価し、重要度や影響度について優先順位を付けます。

2.コンプライアンスポリシーと手順の策定

組織の目標を反映したコンプライアンスポリシーを策定します。また、具体的な手順やガイドラインを作成し、従業員が遵守すべき行動を明確化します。

3.組織内のコンプライアンス文化の醸成

リーダー層の関与が重要です。組織のコンプライアンス文化を醸成するためにも従業員教育や意識向上活動の展開、報告・共有制度の導入などを検討します。

4.リスク管理プロセスの確立

リスクの識別と分析、評価、監視、対応を行うためのプロセスを確立します。内部監査体制やコンプライアンス委員会、リスク評価ツールの導入などを検討します。


社内における管理体制の構築は重要ですが、これがゴールではありません。上記ステップで組織内での合意形成を取りつつ、運用についても同時に考えていくことが重要です。

会社による一方的なコンプライアンス遵守のメッセージを発信するだけではなく、コンプライアンス担当を設置し、コンプライアンス委員会を定期的に開催しなければなりません。委員会の活動が回ることで、本来の目的である組織内でコンプライアンスに対する意識が高まり、それを維持するための管理・統制の仕組みが出来上がっていくのです。

「知りませんでした」では許されない

近年の潮流は「法化社会」への変化です。Twitter(現:X)にアップされたいたずら動画に対し、大手飲食チェーンが法的処置に踏み切った事例などからも分かるように、物事は法的に解決すべきという要請が高まってきています。

「法の不知は罰する」という法格言もあることから、事業活動をしている企業は法律問題について必要な情報をしっかりと押さえて活動することが求められています。社内で不祥事が発生した際に、「知りませんでした」と言っても許されないことを改めて認識していただきたいと思います。

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