COLUMN

2025.01.20

経営理念と中期経営
未来を見据えた戦略的思考とは

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経営理念と中期経営 未来を見据えた戦略的思考とは

経営理念とは何か、企業は理想に向かって走り続ける集団です。中期経営計画を3年、5年とつなぎ合わせることで、その理想の実現を目指します。現在、企業を取り巻く環境は「先行きが不透明で、将来予測が困難な時代」に突入しています。そのような状況下で、未来を見据えた経営戦略や計画をどのように描くべきかをご紹介します。

自社の原点から貢献価値を定義する(=経営理念)

(1)貢献価値(=経営理念)は提供価値と顧客価値の接点にあり

①真の提供価値は何か

真の「提供価値」とは自社が顧客に提供する独自の価値を指します。よって自社が提供するコアコンピタンス(=強み)を明確にしておくことが必須条件です。
※強みとは良い点ではないことに留意して下さい。
また、ライバルが提供する価値と比較し、自社が競争優位性を維持するために必要な重要成功要因を明確にします。

②真の顧客価値は何か

真の「顧客価値」とは自社の「提供する価値」が適正と認めてもらえる価値をいいます。

③「貢献価値(=社会に存在する意義=経営理念)」を定義する

先に述べた「提供価値」と「顧客価値」の接点を「貢献価値」と定義することができます。定義した「貢献価値」が顧客の成功や繁栄に貢献する価値であり、世の中に役立つ価値です。

④理念体系で見える化する

「貢献価値」をパーパス(ミッション・ビジョン・バリュー:MVV)として定義し、下表のように見える化して全社共通の価値判断基準とすることが重要です。

図表.1 貢献価値、提供価値・顧客価値

自社の原点から貢献価値を定義する(=経営理念)

(2)自社のビジネスモデルのあり方を再定義する

①戦略の要諦

戦略の要諦は、「顧客価値の最大化」です。自社の真の顧客に「自社が提供する価値」が認めてもらえてはじめて「顧客価値の最大化」が実現します。

②自社のバリューチェーンの総点検

ビジネスモデルのあり方を再定義する際、先ずやるべきことは自社のバリューチェーンの特徴を押さえることです。他社との違い、顧客から評価されている点、強化すべき点を明確にします。

③財務・収益モデルの総点検

自社のビジネスンモデル(バリューチェーン)から「収益の源泉」はどこにあるのかを明確にします。併せて安定性、収益性、成長性、生産性などの財務分析からボトルネックを明らかにします。

④勝てるマーケットを決める

自社を取巻くマーケットにおいて、どのような社会課題と向き合うのか。「誰に・何を・どのように」提供するのかを再定義します。(ビジネスモデルの再定義:磨くべきコアコンピタンスは何か)

⑤KGI・KPIをデザインする(あるべき姿からの逆算方式による:いつまでに達成するのか)

収益・財務構造、業績マネジメント、生産性からみたKGI・KPIをデザインします。 等

ポジショニング分析から戦い方を決める

(1)各ポジショニング分析

①定量ポジショニング分析

自社における個々のSBU(Strategic Business Unit:戦略を策定・実行する事業単位)のシェア・業界内順位・成長性順位・収益性順位など、定量的に判断できるクライアントのポジションを分析します。

②特性ポジショニング分析

個々のSBUでの特長(差別化要素)を特性ポイジショニング。ライバル企業のポジションと比較して分析すると有効です。

③事業ポートフォリオ分析

a.複数のSBUについて、全体を俯瞰してそれぞれSBUのポジションを分析する。個々のSBUのポジションは事業の成長性(売上高前年度伸び率)と収益性(売上高経常利益率)の2つの要素に基づき判断します。

b.事業ポートフォリオ分析に基づき、それぞれのSBUのポジションから成長力強化と収益力強化の2つの組み合わせで戦略の方向性を検討する。各SBUが目指すべき方向性は、「売上高前年伸び率10%以上」
(成長性)×「売上高経常利益率10%以上」(収益性)の成長エンジンです。

図表.2 事業ポートフォリオ分析

事業ポートフォリオ分析

図表.3 成長エンジン分析

成長エンジン分析

(2)戦略オプションテーマの検討

事業ポートフォリオの最適化に向けて、戦略オプションテーマの仮説を検討します。目指すべき事業ポジションに向けて、成長力・収益力の強化を図ります。その際の戦略上の選択肢としては、下記表のようなテーマ(例)があります。

戦略オプションテーマの検討

事業ポートフォリオの最適化

(1)ミッションを核としたポートフォリオの設計

①ミッションを核としたポートフォリオの設計

ポートフォリオの最適化における最も重要なポイントであり、ミッション(顧客価値)を追求するためのビジネスモデル(事業)への資源配分という考え方に立脚しています。つまり、全てのビジネスモデルはミッションに基づいています。

②中長期の成長を時系列で設計

断片的なポートフォリオ設計ではなく、中長期的な競争環境を見据えて、将来で向けての成長シナリオを時系列で設計します。

③ビジネスモデルの数と規模の拡大で将来の成長を設計

ポートフォリオの最適化においては、ミッション(顧客価値)に基づいたビジネスモデル (事業)の数を増やすこと、ビジネスモデルの規模を拡大することの両面で成長を設計します。

図表.5 ポートフォリオの最適化

ポートフォリオの最適化

(2)顧客創造マトリクスによる新たな価値の発見

①「価値創造マトリクス」の活用

事業ポートフォリオを設計するに当たって、既存のビジネスモデルの拡大可能性の検討や新たなビジネスモデルを発見するツールとして、「価値創造マトリクス」を活用します。

②ビジネスモデル発見の着眼点

ビジネスモデル発見の着眼点は、内部環境(自社の強み・固有技術)でも外部環境(市場における機会)でもなく、あくまでも「顧客の抱える課題解決(顧客価値)」にあります。顧客の抱える課題は、大きく2つに分類することができます。1つ目は、顕在的課題です。顕在的顧客課題とは、既に顧客が理解している課題です。2つ目は、潜在的課題です。潜在的課題とは、現時点で顧客が認識していない課題をいいます。潜在的課題は、解決のためのビジネスモデルが提供されて初めて「課題」として認識されます。これらと「自社の提供価値」を組み合わせて、新たなビジネスモデルを発見します。

③顧客価値を発見するためのポイント

a.「顕在的課題」の発見:顧客の声に耳を傾ける

b.「潜在的課題」の発見:顧客の業務プロセスや思考・行動を熟知する
顕在的課題に対しては、ライバルも既にアプローチしているケースが多くその場合は、ライバルが提供する価値をよく知ることが求められます。

図表.6 顧客価値視点による価値創造マトリクス

顧客価値視点による価値創造マトリクス

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
チーフマネジャー

青山 雅久

半導体製造業界で原価低減や新商品評価など各種プロジェクトの立ち上げなどに従事後、当社に入社。製造業の生産マネジメント・収益改善を得意とする。コストリダクションによる付加価値向上対策立案・推進、工場マネジメント強化支援を通じて、多くのクライアントの生産性向上・利益改善に貢献している。

青山 雅久

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