人事コラム

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新入社員のメンタルヘルス、企業が知るべき原因と対策

新入社員のメンタル不調を防ぎ、早期離職を食い止める「組織のあり方」 ー 実践可能なメンタルヘルス対策とは

本コラムでは、新入社員のメンタルヘルスに焦点を当て、データから見る現状とその背景にあるストレス要因を紐解き、企業が今講じるべき具体的なメンタルヘルス対策について解説しています。

新入社員のメンタルケアは経営戦略であり、社内外からの支援が不可欠

新入社員のメンタルヘルスの現状と企業リスク

新入社員のメンタルヘルスの現状と企業リスク

「最近の新入社員はメンタルが弱い」といった主観的な印象論ではなく、統計データを見ても若年層の心の病は高い水準で推移しています。公益財団法人日本生産性本部の調査によると、10代・20代の心の病が最も多いと回答する企業は2010年から増加傾向にあり(※1)、もはや社会全体の共通課題となっています。
こうしたメンタルヘルス不調は、そのまま「早期離職」という形で企業に跳ね返ってきます。厚生労働省の「新規学卒離職者の離職状況」によれば、入社3年以内の離職率は高卒離職者で37.9%、大卒離職者でも33.8%と、およそ3分の1が3年以内に辞めてしまうという現状にあります(※2)。

多くの若手社員の早期離職は、企業にとって計り知れない経営リスクをもたらします。

 

長期的な成長機会の損失

多大な投資をして獲得・教育した人材が生産性を発揮する前に離職することは、採用・育成コストの回収不能を意味します。さらに、次世代のリーダー候補を失うことで、組織の長期的、継続的な成長が困難になるかもしれません。

 

企業価値の低下

現在、経済産業省が「健康経営銘柄」を選定するなど、従業員の心身の健康管理への取り組みは投資家や社会からチェックされています。若手のメンタル不調や離職が常態化している企業は、致命的な企業価値の低下を招く懸念があります。

 

※1 公益財団法人 日本生産性本部 「第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」
※2 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年の状況)」

新入社員がメンタルヘルス不調に陥りやすい原因

新入社員がメンタルヘルス不調に陥りやすい原因

なぜ、現代の新入社員はストレスを抱えやすいのでしょうか?その原因は、時代を問わない「普遍的な要因」と現代特有の「新たな要因」の二層構造にあります。

 

普遍的要因:環境変化とリアリティ・ショック

学生から社会人への移行という急激な「環境変化」そのものが、新入社員にとっては大きな負荷です。また、入社前に描いていた理想の働く姿と、実際の業務や人間関係とのギャップに戸惑う「リアリティ・ショック」は、新入社員の8割近くが経験していると言われています(※3)。多くの皆さんも、若手のときに経験されたのではないでしょうか。

 

新たな要因1:即戦力化のプレッシャー

日本の職場における年功序列制度が薄れ、成果主義や即戦力を志向する動きが強まっています。従来であれば、数年かけて段階的に育成していた30代の役割やアウトプットが、入社直後の若手にも「一気に」かつ「早い段階で」求められるようになり、構造的に過度な負担がかかっています。

 

新たな要因2:多様な働き方(テレワーク)によるコミュニケーション困難

コロナ禍を経てテレワークやハイブリッドワークが普及したことは利便性を高めた反面、社内の人間関係を十分に築けていない新入社員にとっては「孤立」を深める要因となっています。日本生産性本部の調査でも、コロナ禍でメンタルヘルスが悪化した原因の9割弱が「コミュニケーションの変化」であるとされています(※1)。実際のカウンセリング現場でも、新入社員から以下のようなテレワーク特有の悩みが多く寄せられています。

 

  • 職場の一体感を持ちにくい
  • すぐに反応が得られず、仕事ぶりに自信が持てない
  • 先輩の仕事ぶりを間近で見られず、将来のイメージが描けない
  • 同じ空間にいないため、小さな困りごとや相談を後回しにしてしまう

 

※1 公益財団法人 日本生産性本部 「第10回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果」
※3 パーソル総合研究所×CAMP共同調査「就職活動と入社後の実態に関する定量調査 結果報告書」

社内でできるメンタルヘルス対策:「ラインケア」強化とテレワークのコミュニケーション改善

社内でできるメンタルヘルス対策:「ラインケア」強化とテレワークのコミュニケーション改善

新入社員の多くは、社会人に必要なストレスマネジメントの知識やスキル、さらには「他者にうまく相談するスキル」が未熟です。しかしパーソル総合研究所によると、部下の早期離職を経験した管理職の約半数が、メンタルヘルス不調を「もっと早く相談してほしかった」と感じているのです(※4)。双方にとって相談への心理的ハードルを下げるには、企業側からの能動的なアプローチが不可欠となります。

まずは、現場の管理監督者が部下の不調に気づき、職場環境を改善する「ラインケア」が基本となります。新入社員は自分のメンタルヘルスの問題を上司に相談することに抵抗があります。また管理職側にも企業側が新入社員の特徴や傾向を共有・教育しておくことで、早期に不調に気づきリソースにつなげられるようにすることが大切です。

特にテレワーク下においては、以下の2点に注意したコミュニケーション設計が有効です。

 

丁寧で正確な文章指示

テキストコミュニケーションでは認識の齟齬が生まれやすいため、仕事の「目的」「期限」「優先度」を対面時以上に言語化して伝えるよう徹底します。(例:「月曜の会議用資料の作成」ではなく、「木曜の夕方までに一度チェックしたいので、木曜15時までに初稿を共有してほしい」等)特に業務アサインの目的や意味づけがないとモチベーション低下が生じ、不調のきっかけになる傾向があります。なぜアサインするのか、なんのためにこの業務を行うのか、丁寧なコミュニケーションが必要です。

 

定例的なオンライン顔合わせ・雑談の場づくり

朝の数分間でもメンバーがカメラをオンにして顔を合わせ、業務以外の「雑談」ができる時間を設けることで、孤独感を解消し、人間関係への安心感を醸成します。

 

※4 パーソル総合研究所「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」

ピースマインドの事例に学ぶ:自立を促す「セルフケア研修」と「EAPカウンセリング」のシナジー

ピースマインドの事例に学ぶ:自立を促す「セルフケア研修」と「EAPカウンセリング」のシナジー

社内ケアを補完し、より実践的な効果を生む手法として、心理学や行動科学の観点から「はたらく人」と「企業」を支援する従業員支援プログラム(EAP)の活用が注目されています。
ある企業の人事担当者様からの「知識のインプットにとどまらず、自ら状態に気づき、周囲に困りごとを相談できるようになってほしい」という要望に対し、ピースマインドが提供した2つのソリューションの組み合わせ事例をご紹介します。

 

セルフケア研修(知識の実践化)

研修では、一般的なストレス知識だけでなく、新入社員特有のストレス要因や、多様な働き方の中で自ら仕事のオン・オフをコントロールする手法をワークショップ形式で学びます。
さらに最大の特徴として、学んだ知識を行動に移すために「期間中に自身のストレス状態をメモし、実際に誰かに相談してみる」という宿題を課します。

受講者の声:
「自分のストレス状態をチェックしたり、他の人の経験を聞いたりすることができ、自分だけではないと少しホッとしました。」
「会社がストレスやメンタル不調に対して相談の体制を持っていることがわかり安心しました。」

 

EAPカウンセリング(体験のポジティブ化)

研修後に一定の実践期間を経た後、外部のプロのカウンセラーと1対1で面談を行います。個々のストレス状況や宿題の振り返りを行いながら、具体的な相談の伝え方のコツなどをスキルトレーニングします。
「相談して、丁寧に受け止めてもらえた」という成功体験は、新入社員の心理的安全性を高め、将来本当に困った際にも社内外のリソースを躊躇なく活用できる行動変容をもたらします。

受講者の声:
「相談すること自体に抵抗感があったのですが、思い切って相談して、丁寧に話を聞いてもらえると少し気持ちが楽になることがわかりました。」
「上司に相談するときの伝え方のコツを教えてもらえたので、今後何かあったときには早めに相談してみようと思えました。」

また、これらのカウンセリングで得られた傾向(個人情報は厳重に管理)を分析・集約することで、経営層・人事担当者は「自社の新入社員が何に悩み、会社にどんなサポートを期待しているか」の生のデータを組織改善に活かすことが可能です。

さいごに

新入社員のメンタルヘルス対策は、単なる「福利厚生」や「優しさ」ではなく、企業の人的資本を守り、持続的な成長基盤を強固にするための「経営戦略」そのものです。

新入社員が自らを守るセルフケア能力と、悩み事やメンタル不調に気づき受け止めるためのラインケアや制度整備の両方が機能していることが重要になっています。企業側が積極的にセルフケア研修やEAPのような外部資源を適切に組み合わせ、新入社員と彼らと共に働く周りの社員を支援することで、組織全体で「いきいきとはたらける環境」を整えていきましょう。

ピースマインドでは、新入社員の定着率向上やメンタルヘルス対策に向けた各種研修・EAPサービスを提供しています。他社の具体的な相談事例集などの資料もご用意しておりますので、組織の健康経営に向けてぜひお気軽にお問い合わせください。

この課題を解決したコンサルタント

玉井 敬一郎

ピースマインド
組織支援コンサルティング部
部長

玉井 敬一郎

心理系大学院修了後、EAP提供会社にて働く人へのカウンセリング、管理職・人事へのコンサルティング、メンタルヘルス関連の研修講師などの業務に携わる。その後、英国ロンドン大学にて組織心理学の修士号取得後、2013年よりピースマインド株式会社にてコンサルタントとしてEAP、ストレスチェック、研修業務に従事。2019年に組織コンサルティング部(現組織支援コンサルティング部)部長に就任。メンタルヘルスやハラスメント対策に関する施策立案、運用支援を中心とした組織人事コンサルティングを担当。

<資格>
公認心理師、臨床心理士
<専門分野>
メンタルヘルス対策、ハラスメント対策を目的とした組織人事コンサルティング

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