人事コラム

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経営課題としてのハラスメント対策

組織のリーダーが知っておくべき、ハラスメント対策の現在
ーリスクマネジメントの視点から企業価値向上の視点へー

本記事では、ハラスメント対策を単なるリスク管理ではなく、企業価値向上と持続的成長を支える経営課題と捉え、その鍵となる経営層のコミットメントの重要性について解説します。

ハラスメント対策で実現する「持続的な成長」が「企業価値の向上」をもたらす

ハラスメント対策は「人事の取り組み」から「経営課題」へ
ー人的資本経営の礎としての取り組みー

ハラスメント対策は「人事の取り組み」から「経営課題」へ

ハラスメントやコンプライアンスの問題は、ひとたび表面化すると、長年かけて築いてきた企業の信頼やブランド価値を大きく損ない、多大な経済的損失を招く可能性があります。
近年は、ハラスメントそのものだけでなく、企業の対応の遅れや不適切な初動対応が社会的な批判につながるケースも少なくありません。
これまでの対策は、問題発生後の対応や禁止行為の防止に重点が置かれてきました。しかし、人的資本経営や健康経営が重視される現在では、それだけでは不十分です。社員が安心して能力を発揮できる職場環境を整えることが、企業価値の向上や持続的な成長につながる重要なテーマとなっています。
ハラスメント対策は、もはや単なる人事施策ではなく、経営課題として取り組むべき時代に入っているといえるでしょう。

放置の代償は大きい:ハラスメントが企業にもたらす経済的損失

放置の代償は大きい:ハラスメントが企業にもたらす経済的損失

ハラスメント対策が経営課題とされる理由の一つに、企業が被る経済的損失があります。ピースマインドと九州大学の共同調査では、ハラスメントによるストレスが社員1人あたり年間平均約17万円、深刻なケースでは約40万円の損失につながることが示されました。また、社員1,000人規模の企業では、年間約4,000万円の損失が発生すると試算されています(※1)。さらに、上場企業約10万人のデータ分析では、職場のストレス状態を改善することで純利益が約3億円増加し、企業価値が約74億円向上する可能性も示されました(※2)。ハラスメントがもたらす影響は、離職や生産性低下、エンゲージメント低下など目に見えにくい形で組織に蓄積されます。だからこそ、ハラスメント対策はコンプライアンス対応にとどまらず、企業価値向上と持続的成長を支える経営戦略として捉えることが重要です。

 

※1 ピースマインド・九州大学調査より:ハラスメントによるストレスの経済的損失を分析 〜1000人規模の大企業では約4000万円に〜
※2 ピースマインド・九州大学調査より:【調査分析】ストレスの改善は企業業績の向上につながるのか 〜「上場企業のストレスと企業業績」に関する調査結果を公開〜

「防止」から「変革」へ:ハラスメント対策の新たな位置付け

「防止」から「変革」へ:ハラスメント対策の新たな位置付け

従来のハラスメント対策は、防止教育や相談窓口の設置、事案対応、再発防止研修などを中心に進められてきました。これらは重要な取り組みですが、コミュニケーション不全や問題行動を見て見ぬふりする風土など、ハラスメントを生み出す土壌そのものの改善には十分つながらないこともあります。
その結果、明らかなハラスメントは減っても、職場の雰囲気がギスギスし、心理的安全性が十分に確保されていないケースも見られます。
こうした背景から、近年はインシビリティ(礼節を欠いた言動)にも注目が集まっています。今後は「ハラスメント防止=リスク管理」にとどまらず、「働きがいのある職場づくり=企業価値向上」という視点で、組織風土やコミュニケーションの改善に取り組むことが重要です。

「働きがいある職場づくり=企業価値向上」を目的とした「リスペクト・ステージ」の考え方

「働きがいのある職場づくり」を目指す上で、職場の状態は4つのステージで捉えることができます。ハラスメントが常態化している「ハラスメント・ステージ」、礼節を欠く言動が放置される「インシビリティ・ステージ」、最低限の礼儀は保たれているものの本音が出にくい「シビリティ・ステージ」、そして相互尊重と信頼関係を土台に活発な対話が生まれる理想的な「リスペクト・ステージ」です。近年、企業から多く寄せられるのはインシビリティに関する課題です。明らかなハラスメントはなくても、配慮を欠く言動や無関心な風土は、社員の意欲やエンゲージメントを低下させ、組織の成長を阻害する要因となります。だからこそ、自社がリスペクトステージのどこにいるかを見極め、組織に負の影響をもたらす言動・風土を変える対策を行うことは、企業価値向上の有効な一手となります。

 

職場環境を表す4つのステージ

経営層の本気の取り組みが企業を変える一歩に:リスペクト文化醸成のために

組織文化は、経営層の価値観や日々の言動に大きな影響を受けます。相互尊重を重視し、活発な対話から柔軟性や創造性ある組織文化を育むためには、経営層からの発信や主体的な関与が欠かせません。
人事部門や現場の取り組みも重要ですが、トップが明確な方針を示し、自ら行動することで、組織全体の意識改革は大きく前進します。
近年、ハラスメント対策は単なるリスク管理ではなく、社員が安心して力を発揮できる環境づくりを通じて企業価値向上につなげる経営課題へと変化しています。
だからこそ、経営戦略の一環として、トップがハラスメントに関する明確な方向を示し、自社の状況に適した対策を打つことが、持続的な企業価値向上を実現する組織作りには不可欠です。
まずはハラスメント対策を経営戦略の一つとして位置づけることから始めてみてはいかがでしょうか。

この課題を解決したコンサルタント

武田 英彦

ピースマインド
組織支援コンサルティング部
ソリューションコンサルタント

武田 英彦

国立精神・神経医療研究センターでの臨床検査、東京都知事部局において、職員のメンタルヘルスケアに従事。その後、ピースマインド株式会社に入社。現在、EAPコンサルタントとして社員と企業向けのコンサルティング業務を担当。

<資格>
公認心理師、臨床心理士、キャリアコンサルタント
<専門分野>
産業領域におけるカウンセリング、組織へのコンサルテーション(休復職支援・職場改善活動支援)、ハラスメント事案調査、コーチング

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