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サステナビリティ経営がトレンドになっている中、自社のSDGs活動を棚卸して発信することやSDGs宣言を掲げるだけでは、ステークホルダーに評価されないことが多くなってきています。今回はサステナビリティ経営の基本である「グリーンサプライチェーンマネジメント」について説明します。
サステナビリティ経営に必要な"インパクトの見える化"
サステナビリティ経営がステークホルダーから評価されているかどうかの一つの基準としてESG投資があります。
ESG投資には投資戦略(野村アセットマネジメント:https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/strategy/strategy.html)があり、以下7つに分類されます。
❶ネガティブ・スクリーニング
❷ポジティブ・スクリーニング
❸規範に基づくスクリーニング
❹ESG統合
❺サステナブル・テーマ投資
❻インパクト投資
❼エンゲージメント・議決権行使
簡単に上記7つの説明をすると、以下のような内容となります。
❶ネガティブ・スクリーニング ・・・倫理的に反する事業を行っている企業への投資を避けること ❷ポジティブ・スクリーニング ・・・ESG評価の高い企業に投資を行うこと ❸規範に基づくスクリーニング ・・・国際基準と比較した際に規範を満たせない企業を除外し投資をしないこと ❹ESG統合・・・財務情報だけではなく非財務情報を併せて分析を行い投資判断をすること ❺サステナブル・テーマ投資・・・サステナビリティに貢献するテーマを取り扱っている企業に対して投資を行うこと ❻インパクト投資・・・ESGの活動において、どれだけのインパクトが見込める(成果がある)のかを重視して投資を行うこと ❼エンゲージメント・議決権行使・・・株主がESGにおける情報開示請求を行い、ESGを促進させること
ESGは企業が成長していくためのエンジン(取り組み)として必要な要素であり、そのエンジン(取り組み)を評価するESG投資戦略は、企業が持続的に成長をするサステナビリティ経営を見定める基準となります。
まずは自社がESG投資戦略において評価されるだけの取り組みを展開できているのかを見ていく必要があります。
また、ESG投資戦略に関しても評価におけるポイントに変遷があります。
サステナビリティ経営黎明期は、ステークホルダーに対していち早く重点課題(マテリアリティ)に対する取り組みを発信した企業が評価される風潮がありました。しかし多くの企業がサステナビリティ経営を進めている中、"ただ"活動を発信することだけでは意味がなく、評価をされない事象が増えてきています。要するにサステナブル・テーマ投資ではなく、企業がサステナビリティ活動を通して何を成したのか(企業がもたらす環境・社会へのインパクト)に注目されるケースが増えてきています。また2023年1月13日の日本経済新聞でもインパクト投資の拡大について記事化され発信されている状況にあります。
今後のサステナビリティ経営には企業が成すインパクト(効果の見える化)が重要である中で、企業が見える化すべき項目について次項目より紹介させていただきます。

自社のGHGをサプライチェーンで押さえる
サステナビリティ経営の見える化指標として、「グリーンサプライチェーンマネジメント」があります。
グリーンサプライチェーンマネジメントとは製品・サービスのサプライチェーン全体における環境負荷軽減対策を意味しています。対策を講じていくためには自社並びに自社の活動に関連する他社のGHG(温室効果ガス)排出量を見える化する必要があり、大きく3つのフェーズに分けてGHG排出量を把握していく必要があります。
1つ目のフェーズ「Scope1」として、自社の生産工程や工業炉などの燃焼活動によって排出されるGHGを押さえる必要があります。自社内にてディーゼル発電を行ってGHGを排出している場合はScope1で計算する必要がありますので、注意が必要です。
2つ目のフェーズ「Scope2」では、自社の電気使用におけるGHG排出を見える化する必要があります。自社内にて太陽光発電を行い、自社のすべての使用電力を賄っている場合や、再生可能エネルギー100%電力を電力会社から購入している場合はGHGを発生させていないことになります。電力会社が電気を生成する過程の中でGHGを発生させる場合(燃焼を基軸として発電、火力発電など)、その電気を使用している自社が間接的に事業活動を行う上でGHGを発生させていることとなり、GHG排出として把握が必要となります。
3つ目のフェーズ「Scope3」では Scope1、Scope2以外の間接排出(自社の事業活動に関連する他社の排出)を指し、15個のカテゴリーごとにGHG排出量の見える化が必要となります。詳細に関しては、環境省・経済環境省のグリーンバリューチェーンプラットフォームを確認してみましょう。

GHG算定における注意点
GHGプロトコルの内容を理解する
環境省の「GHGプロトコル」ではGHG算定・報告において原則が存在し、5つの指標に則る必要があると発信されています。
以下、https://www.env.go.jp/council/06earth/y061-11/ref04.pdfを引用しています。
❶妥当性
事業者活動の温室効果ガス排出及びユーザ意志決定の要求を適切に反映する境界を定義すること。
❷完全性
選定された組織境界及び活動境界の範囲内において、あらゆる温室効果ガスの排出源及び関連活動について説明すること。どのような特別な例外についても言及し、その正当性を示さなければならない。
❸一貫性
排出のパフォーマンスに関して、一定の期間にわたり、有意な比較をできるようにすること。報告原則を変更する際には、明確に言及し、継続的な意味のある比較を可能にしなければならない。
❹透明性
関連する問題やデータが公開された状態にあることが要求されている。透明性は、報告された情報の信頼性に密接な関連性を持つ。独立した外部検証は、情報の透明性を高めるよい方法の一つである。
❺正確性
温室効果ガス排出量計算が、自らの意図した利用に求められる正確性を満たすようにしたり、報告された温室効果ガスの情報の完全性について合理的な保証を与えたりするために、適切な注意を払うこと。
自社のGHGを把握し、発信することは非常に重要なポイントになりますが、対外的に発信をする情報として、発信情報の精度が必要です。自社の取り組みを正しく評価してもらうためにも上記5つの視点は必ずクリアしていく必要があります。
健全なサプライチェーン構築で社会性も評価される企業を目指す
製造業A社では原材料調達において、ハイリスクのサプライヤーを特定し、仕入先企業の見直しを行うなど良好な取引関係の実現を行っています。従来の日本企業の調達部門で言うと、企業の利益追求のため、いかにして調達コストを下げることができるのかを重視している傾向にありました。コストが低い原材料の背景には、過酷な労働環境の中で、成人にも到底満たない子供達が働いていることは大いに存在する話であり、社会問題となっています。そのような原材料を基に生産された製品は社会的に評価されず、企業信用の失墜にも繋がります。取引企業とのリスクや取引基準を明文化し、対外的に発信をしながら、健全なサプライチェーンを構築することが必要です。
さいごに
サステナビリティ経営の基本は効果・インパクトの見える化にあります。
今回はサプライチェーン全体を捉えた際のGHG排出量を把握するためのポイントや他社事例を紹介しましたが、サステナビリティ経営における見える化は他にも多々あります。GHG排出量の把握はもちろんですが、自社で行っているマテリアリティに対する取り組みに関してもKPIを設けて、結果(効果)はどうだったのか発信していくことも大切です。まずは自社内にて取り組むことができるところからスモールスタートで始めていくことをおすすめします。
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