COLUMN

2022.11.02

企業経営にSDGsを統合する~実践編~

SDGs実装の5つのステップにおける4番目の段階は「企業経営にSDGsを統合する」です。自社の経営活動に即したSDGsテーマと具体的な目標を設定した後は、それを企業として実現するために組織・個人単位への目標・アクションプランに落とし込むことで、初めてその目標が達成されます。このコラムではその考え方・手法をお示しします。

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「経営のバックボーン」に則し、企業経営にSDGsを統合する

「経営のバックボーン」とは

経営理念~ビジョン~中期経営計画~全社年度計画~部門年度計画~個人アクションプラン~推進体制・制度等の仕組み、これらの企業に必要な「価値判断基準」「実行推進システム」という企業経営における「背骨(バックボーン)」が整備されていない企業は持続的な成長ができない。これがタナベコンサルティングの経営における重要な考え方の一つである「経営のバックボーン」という考え方です。この考え方に則して経営活動を行うことが、企業にとっては重要であると言えます。

裏を返せば、企業活動がうまくいっていない会社ほど、このバックボーンのどこかがゆがんでしまっている可能性があります。例えば、経営理念に則していない企業活動や事業を行った場合は、多くの場合その企業の強み・特徴を生かせず、失敗してしまいます。これが「経営のバックボーン」という考え方です。

企業経営にSDGsを統合する~企業~組織~個人への落とし込み~

企業経営にSDGsを統合する=「価値判断基準」にSDGsを組み込む

「書かざるものは実現しない」これも経営管理の原則でもあります。企業がSDGs目標を達成するためには、3つ目のステップまでで具体化したSDGsテーマと設定した目標を、経営のバックボーンに組み込み、企業活動に反映する必要があります。つまり、経営の判断指標としてSDGsテーマ・目標を明記することが必要だと言えます。
では、具体的に組み込むにはどのようにすればよいのでしょうか。それは、企業の「価値判断基準」にSDGsのテーマ・目標を反映させるということです。つまり、「中期経営計画」や「全社年度計画」に対して、SDGsのテーマ・目標を設定することから始まります。このことにより、企業としての価値判断基準にSDGsの考え方が反映されたことになります。まずは、この手順が第一歩であると言えます。

企業の方針を組織~個人に落とし込む(SDGs目標のブレイクダウン)

企業全体の「中期経営計画」や「全社年度計画」に対して、SDGsのテーマ・目標を設定しても、実際にその活動を行うのは、企業に所属する社員一人一人です。そのため、企業として設定したSDGsテーマ・目標を組織・個人単位の計画に落とし込んでいく必要があります。それによって初めてSDGs目標が達成されます。これは、中期経営計画や全社年度計画を組織~個人に落とし込むのと同様にそれぞれの活動を、「部門年度計画」・「個人別年度方針」・「アクションプランシート」に落とし込んでいくことによって行います。

そのため、SDGsを取りまとめしている部署(経営企画、SDGs推進チーム等)においては、その組織のミッション・活動の特長に合わせて、設定したSDGs目標を最適配分する必要があります。つまり、それぞれのチームが貢献しやすい・達成しやすい目標を設定することが重要であると言えます。すべてのチーム・個人がすべての活動を行うことは非効率かつ非現実的であると言えます。

事業推進に関わるテーマについては、事業部などの直接部門に割り振りをし、組織活動に関わるテーマについては、総務・人事やスタッフ機能などの間接部門に割り振りをすると実行しやすいです。この「SDGsテーマ・目標の最適な割り振り」が、その企業の活動が推進・成功するかのポイントであると言えます。

方針発表で全社・ステークホルダーに周知する

組織~個人に落とし込まれたSDGs目標は、そこから活動がスタートすることになります。その際にぜひ行っていただきたいのが、設定したSDGs目標について方針発表により、全社・ステークホルダーに周知することです。いわゆる「有言実行」の考え方の下、企業~組織~個人として掲げた方針について、改めて発表する場を設けることで、「やらざるを得ない仕組み」が出来上がると言えます。全社で一体となってSDGs活動を推進するためにも、ぜひ、方針発表の場を設けていただきたいと思います。

SDGs活動 PDCA推進の仕組みづくり

SDGs活動の見える化ツールを予め用意する

SDGsを企業活動の一つとして組み込み、継続的に行うポイントとしてぜひ行っていただきたいのが、「SDGs活動の見える化ツールを予め用意する」ことです。つまり、組織~個人単位で行った活動をまとめることができる管理ツール(エクセルシートなど)を予め用意しておくことをぜひ行っていただきたいです。

これには2つの目的(狙い)があります。1つ目は、企業としてのSDGs活動を取りまとめする組織(SDGs委員会等)の業務負荷を低減させるためです。多くの企業・社員の場合、SDGsは副活動として行っていることが多いため、その業務量を増やさないためにも、容易に集計するツールは重要であると言えます。2つ目は、SDGs活動を形骸化・陳腐化させないためです。テーマを設定するときは盛り上がったSDGs活動も、時間が経つとほかの業務に追われてどうしても形骸化することが多いです。その際に、予め見える化ツールを用意・配布しておき、集計する機会を明確化しておけば、一つの業務ルーティーンに組み込まれ、自動的に集計されるようになります。できれば年1回や四半期毎ではなく、月1回の集計をお勧めします。このことにより、活動の再周知も行うことができるため、形骸化しにくくなります。

SDGs委員会を定期開催する

SDGsの活動は2030年が一つのゴールです。しかし、企業における環境貢献活動は永遠のテーマになりつつあります。この課題に対して取り組み続けるためにも、ぜひ、SDGs委員会の組織を設立し、定期的に開催することを行っていただきたいです。
事務的には見える化ツールで各組織のSDGs活動状況把握をしながら、四半期毎に活動状況を振り返り、不具合・不活性が起こっている個所の問題解決をしていただきたいです。また、当初設定したSDGsテーマが何らかの理由で実行・達成できなくなることがあります。また、企業活動によっては、新たに行うべきSDGsテーマが生まれる場合があります。そのような時に、その企業自体のSDGs活動を見直す場として、SDGs委員会を活用し、年に1度程度は年度目標だけでなく、テーマ自体も再考していただきたいと思います。これにより、その企業のSDGs活動自体も持続可能かつ効果的でありつづけることができます。
この「PDCA推進の仕組みづくり」をぜひ行っていただき、世界におけるSDGs活動に貢献いただきたいと思います。


出所:タナベコンサルティングにて作成

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
エグゼクティブパートナー

井上 裕介

大型リゾート・旅館にてホテル・スキー場・飲食店舗を運営し、新規企画開発・人材育成・業務改善・収益改革などに従事後、当社へ入社。現場経験を生かした戦略設計や中期ビジョン策定、新規事業戦略策定、SDGs策定支援など幅広く活躍している。

井上 裕介

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