COLUMN

2022.07.18

戦略的にSDGsの優先課題を決定する手法とは

前回コラム(https://www.tanabekeiei.co.jp/vision/column/detail31.html)では、SDGs経営を成功させるための5つのステップについて紹介し、「①SDGsを理解する」について説明をしました。今回は「②優先課題を決定する」について説明させていただきます。

優先課題を決定するための切り口を紹介

なぜSDGs経営を行うために優先課題を決めないといけないのか

SDGs経営を行う上で、自社で取り組む社会課題の優先順位を決定する必要があります。

SDGsのゴールは17個ありますが、ゴールに紐づくターゲットまで加味すると169個切り口があります。 すべての社会課題を解決するために行動を起こすのであれば、かなり浅い取組みになってしまうこととなるでしょう。 自社で注力する項目(社会課題)を選定し、行動することが望ましいです。

また今では多くの企業がSDGsに取り組んでいます。他社との「差別化」を図るためにも、自社で取り組む社会課題を意志として選定し、自社オリジナルの取組みとして展開が必要となります。

インサイド・アウト・アプローチでSDGsの取組みを整理する

インサイド・アウト・アプローチとは、自社の強みや自社がすでに行っている事業活動・経営活動から解決できそうな社会課題を模索し、ひも付けを行う手法です。

多くの企業では3カ年ないし5カ年の中期経営計画を策定し、事業・組織・財務の視点で重点テーマを策定しています。 まずは自社重点テーマとSDGs17ゴール・169ターゲットを確認し、ひも付けを行うのが良いです。

そうすることで重点テーマに掲げている事業・組織・財務のそれぞれのテーマにSDGsの付加価値を付与することができ、中期経営計画と連動したSDGs展開が可能となります。

アウトサイド・イン・アプローチでSDGsの取組みを整理する

アウトサイド・イン・アプローチとは、解決したい社会課題を先に選定し、自社で保有している経営資源を活用して解決できないか検討する手法になります。

自社のみで解決できない社会課題の場合は他社とのアライアンスを検討することもあります。このアプローチでは、社会課題として顕在化しているが、なかなか解決できていない社会課題に着手することができ、他社とは違うSDGs展開が期待できます。半面、成果が出るまでに時間を要すことが課題となります。

「インサイド・アウト・アプローチ」・「アウトサイド・イン・アプローチ」を基に、解決に向けて取り組む社会課題を選定した後は優先的に取り組む重点社会課題を決定するフェーズに移行します。優先課題を選定する際は、マテリアリティ(重要課題)・マトリックスを使用することを推奨します。

【関連ページ】: SDGs経営を成功させる5つのステップ

自社のマテリアリティを策定する

ロングリストからスクリーニングをかける手法とは

インサイド・アウト・アプローチとアウトサイド・イン・アプローチで自社が取り組んでいる全てのSDGs活動を一表に纏めたものを「ロングリスト」と呼びます。

ロングリストでは、自社で重点となるSDGs活動が分かりにくいため、スクリーニングをかけて、自社の重点実施事項を定める(マテリアリティを策定する)必要があります。 多くの企業ではスクリーニングをかける際、縦軸を「ステークホルダーにとっての重要度」、横軸を「自社の事業・経営にとっての重要度」とし、各SDGs活動をカテゴライズしています。

A社ではより詳細にスクリーニングをかけるため、上記の2軸以外にも「社会価値の高さ」・「環境価値の高さ」・「経済性の高さ」・「ステークホルダーの期待度」・「経営理念・ミッションとの整合性」・「社員の思い」などを項目設定し、自社が実施すべきSDGs活動を明確にしています。

【関連ページ】: SDGsで企業経営を成功させる5つのステップ

さいごに

「②優先課題を決定する」を決定することはSDGs経営の第1ボタンといっても過言ではありません。

優先課題の設定を誤ることは、推進力が落ちる要因となります。 また推進力が落ちるということは、SDGs活動そのものが形骸化する可能性が高まり、 「SDGsウォッシュ」に陥ることも考えられます。

今回お伝えした内容を参考に自社オリジナルの優先課題設定を行っていただければ幸いです。

【関連ページ】
SDGs経営を成功させる5つのステップ
SDGsビジネス完全ガイド~市場規模から成功事例まで一挙ご紹介
SDGs経営実装完全ガイド~メリット・事例・戦略のポイントまで一挙ご紹介

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

中野 翔太

SDGsを軸とした戦略構築から実装のための教育を得意とする。「ステークホルダーがワクワクしないSDGsは展開しない」を信条に、企業価値向上に数多く貢献している。また、建設業・製造業を中心とした人材育成体系の構築や人事制度アドバイザリーなどHR分野のコンサルティングにも定評があり、幅広く活躍している。

中野 翔太

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