COLUMN

2022.04.28

SDGsで企業経営を成功させる5つのステップを大紹介

2015年国連総会にて採択された「SDGs」。
誰一人も取り残さないことを宣言した全世界共通の目標であり、私には関係ないでは済まされないテーマとなっています。
もちろん企業においても企業価値の向上・ステークホルダーの関係性強化のためにもSDGs経営が求められています。本コラムではSDGs経営を成功させるための切り口を紹介していきます。

【関連ページ】:
戦略的にSDGsの優先課題を決定する手法とは(連載コラム第2弾)
SDGs実装に向けた目標設定について(連載コラム第3弾)
企業経営にSDGsを統合する~実践編~(連載コラム第4弾)

SDGsとはニューノーマル時代の"生存戦略"

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goalsという英語の頭文字を取った略称で、「持続可能な開発目標」と訳します。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のために、2030年を年限とする17の国際目標です。17の国際目標の下に、169のターゲットと、現在247(重複を除くと231)の指針が設定されています。 これらは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。SDGsという言葉は、いまや小学生や中学生でも学ぶ一般的な考え方であり、2020年度の新学習指導要領に「持続可能な社会の創り手の育成」と明記されています。SDGsを学校教育のなかで教え、現在の子供たちが大人になる頃には、誰もが知っている「当たり前」になっています。

SDGs経営とは

続いて、SDGs経営とは、「SDGsの思想や理念を念頭に置いて、持続可能な企業活動を進めること」を意味します。CSR(企業の社会的責任)とよく混同されることがありますが、CSRは様々な社会活動のなかで、お客様や従業員、株主、投資家をはじめとするビジネスパートナーや国、地方自治体、地域社会などの、多様なステークホルダーから寄せられる声を聞き、その期待に応えることで信頼を得る為に行う行動であり、直接的な利益には繋がらない社会貢献活動、いわば、「社会をよくするためのボランティア」であることに対して、SDGsは国連で定められた17の目標と169のターゲットによって詳細に課題が明示されており、持続可能な社会を実現する為に「自社のビジネスを通じて経済価値だけではなく、社会価値・環境価値も両立させる」という考え方です。
従来のビジネスモデルでは大量生産・大量消費・大量廃棄を前提としながら経済発展をしてきました。今後目指すべきSDGsビジネスモデルでは今までのような直線型経済ではなく、循環型経済(サーキュラーエコノミー)・トレード・オン思想を構築し、経済価値だけではなく、社会価値・環境価値を変えていかなければなりません。
自社のバリューチェーンにSDGsの考え・価値を付与することで、誰もが開拓できていない社会課題解決マーケットの参入にも繋がり、中小・中堅企業にとっての生存戦略にもなり得ます。 SDGs経営実装完全ガイド~メリット・事例・戦略のポイントまで一挙ご紹介

企業のSDGsに対する取り組み状況は?

当社主催「SDGsフォーラム」への参加者に対して、アンケートを実施しました。(調査期間:2022年3月1日~2022年4月15日 調査方法:インターネットによる回答  有効回答数:328人)本コラムでは、内容を抜粋し、「SDGs取組状況」についてご紹介致します。

質問1「SDGsの取り組み状況は?」
①SDGsに取り組んでいる...59%
②1年以内に取り組む予定がある...17%
③取り組んでいないが検討している...22%
④SDGsに取り組む予定はない...2%

全体の59%が「SDGsに取り組んでいる」という結果となり、進捗具合は各社まちまちではあるが、全体の76%もの企業が「SDGs経営の実装に向けて取り組みをスタートさせている」または、「1年以内に取り組む予定がある」と回答しています。企業規模の大小問わず、SDGs取り組みは不可欠となる昨今において、SDGsを「ジブンゴト」としてとらえていることがわかります。

質問2「SDGsの推進度は?」
①SDGsについての情報収集を開始した...53%
②SDGsの基本的な知識のインプット、自社の企業活動における役割が理解できた...23%
③自社の事業活動における影響範囲の整理と、優先課題が明確化された...10%
④自社のSDGsにおける目標を設定し、実行計画に落とし込みが出来た...7%
⑤SDGsの取り組みと既存の事業活動を統合し、持続可能な戦略の策定・実施を推進するための組織体制が整った...7%

最も多かった回答は、①であり、全体の53%となったが、⑤まで推進しているという回答は7%に程度に留まっていることがわかります。SDGsへの取り組みの必要性を理解しているが、まだ自社でどのようにSDGsに取り組むべきか視点が定まっていないことが伺えます。

次章からは、実際に企業でSDGs経営を実装するための5つのステップをご紹介します。

【関連ページ】: 【2022.4.14開催】SDGsフォーラムアンケート調査レポート

SDGs経営を成功させるためのポイント

推進における全体像

SDGs経営を成功させるためには5つのステップがあります。
まずはGRI、国連グローバル・コンパクトおよび WBCSDが開発した指針である「SDGコンパス」確認してみると良いでしょう。
大きくステップとしては、
①SDGs を理解する
②優先課題を決定する
③目標を設定する
④経営へ統合する
⑤報告とコミュニケーションを行う
です。
本コラムにおいては各ステップごとで成功するためのポイントを紹介していきますので、皆様のSDGs経営推進にご活用ください。

【関連ページ】: SDGs戦略実装コンサルティング

SDGs経営を成功させるためのステップ① ~SDGsを理解する~

自社でSDGs経営をする目的とは

SDGs経営がトレンドになっている今、「自社でもすぐSDGsを展開していきたい」、そのように感じている企業も多いのではないでしょうか。その際気を付けるべきポイントとして「SDGs経営をする目的」を明確にすることが重要です。
目的は企業様々であり、既存事業の付加価値を高めるために実践する場合や企業価値向上のためのブランディングなど社員全員が同じ共通言語で理解しているのであれば問題ありません。
SDGsとビジネスを関連付ける際には、改めて自社の経営理念や創業の精神を振り返り、自社のビジネスモデルに社会課題解決要素を加味する戦略を推進することが求められます。こうした取り組みは企業価値向上、事業機会の創出、未来のリスク回避、生存戦略に繋がり、企業として取り組む意義であるといえます。企業は決して経済性のみを追求するのではなく、社会性も同時に追求していくことが重要なSDGsの捉え方です。
SDGs経営をとりあえず発信したいなど目的なくした経営スタイルは「SDGsウォッシュ」と呼ばれる「中身のない、見せかけのSDGs」と揶揄されることがあるので注意が必要です。

【関連ページ】: SDGs戦略実装コンサルティング

SDGsを推進することのメリットを理解する

SDGs経営をすることのメリットは数多くありますが、ここでは2つご紹介します。1つが「取引先との継続的な関係性の構築」をすることでの「企業価値、評価の向上」、2つ目は「新たな市場機会の可能性を秘める」という点です。
まず1つ目は「企業価値、評価の向上」という点です。大企業ではサステナビリティレポートや統合報告書を通して、ステークホルダーにSDGsの発信を行っています。
それ故、大企業のサプライチェーン状にいる企業に関しては、大企業の目指すベクトルに合わせて自社もSDGs経営をする必要があります。逆の発想をすれば、大企業の目指すベクトルに対応することができれば今後も末永く取引ができる関係なることもできます。その結果、企業ブランドの向上やIR活動への好影響、顧客・消費者からイメージアップなど、企業価値の向上が期待できます。また、特に若い層はSDGsへの関心が高く、SDGs経営に取り組む企業であるという認知が広がることによって採用面でも大きくプラスに働くことが期待されます。
2つ目は、「新たな市場機会の可能性を秘める」という点です。SDGsに取り組むことで、同じ課題を解決したい、行政やNPO、教育機関等、これまでの事業で関わりが無かったパートナーと関係性が生まれることから、新たな事業の機会を創出することにつながります。2018年に経済産業省が発表した「事務局説明資料(2018年11月)」によると、SDGsが達成されるなら、2030年まで、労働生産性の向上や環境負荷低減等を通じた外部経済効果を考慮すると、全世界で年間12兆ドルの新たな市場機会の創出につながるといわれています。また、2020年に環境省が発表した、「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド[第2版]概要」では、2030年までに創出される雇用は世界で約3億8,000万人だと推計されています。

【関連ページ】: SDGs戦略実装コンサルティング

SDGs経営の機運を高める「SDGs研修」を開催する

自社で既に実施していること・今後やりたいことの2軸でディスカッションを行う

SDGs経営を始めるにあたり、社員の一人一人の理解や協力が必要となります。
まず自社がSDGsを行う目的に関してはトップメッセージまたはSDGs推進リーダーより発信し、理解・共感をしてもらうことが重要です。
その後メインテーマとなる、自社が既に行っている事業活動とSDGs17ゴール・169ターゲットへの紐づけを行います。
ポイントとしてただ紐づけを行うのではなく、自社が該当ゴールに向けて、「なぜ活動をしているのか」を明確にするのが良いでしょう。
またより広くSDGs経営を捉えるために、自社の経営資源を生かしてどのような社会課題が取り組めるのか、自身がやりたいことも含めてディスカッションができると望ましいです。

釣り具製造業のA社では自社が行っているSDGs活動を改めて「経営理念との整合性(自社が行う理由)」・「実現可能性」・「環境価値」・「社会価値」・「ステークホルダーへの価値」・「情熱・思い」6指標でスクリーニングをかけ、自社は何に取り組むべきなのか、どのような社会課題を解決したいのかを明確にしています。

SDGs経営には当事者意識が何よりも重要

SDGs経営と考えると、企業が行うものという認識が強まり、個人の行動との繋がりが弱くなります。
一個人としてSDGsを通してどんな社会課題を解決するのか当事者意識を持って取り組むことが大切です。

今回はファーストステップである「SDGsを理解する」について説明を行いました。
次回は「優先課題を決定する」について事例含めて紹介させていただきます。

【関連ページ】: 戦略的にSDGsの優先課題を決定する手法とは(連載コラム第2弾)

SDGs経営を始めたい方に

SDGs実装においては、2030年に向けたダイナミックな定量的な目標設定が必要になります。
そこで、女性管理職比率やエネルギー削減率などの取り組み状況を把握しやすい目標のほか、環境配慮製品の上市数や写真からのアイディア数など、通常では意識しにくい部分も指標に置くことで多面的に成果を図る必要があります。
タナベコンサルティングの「SDGs戦略実装コンサルティング」では、将来に対する優先的な課題の整理から、SDGs戦略のロードマップの策定、策定した後の計画の実装と、取組実施状況に対する情報発信の仕組みを構築します。SDGs構造の分析、計画の策定から、SDGsの実装まで、ワンストップでご支援することが可能です。
より具体的なSDGs経営について検討したい方は、ぜひご活用ください。

【関連ページ】:
SDGs戦略実装コンサルティング
SDGs企業事例

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
チーフマネジャー

中野 翔太

SDGsを軸とした戦略構築から実装のための教育を得意とする。「ステークホルダーがワクワクしないSDGsは展開しない」を信条に、企業価値向上に数多く貢献している。また、建設業・製造業を中心とした人材育成体系の構築や人事制度アドバイザリーなどHR分野のコンサルティングにも定評があり、幅広く活躍している。

中野 翔太

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
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コンサルティング実績

創業66
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