COLUMN

2022.11.02

SDGs実装に向けた目標設定について

SDGs実装の5つのステップにおける3番目のステップは「目標を設定する」です。ステップ2で優先課題を設定した後には、優先課題を着実に解決していくための道しるべとなる数値目標を設定することがSDGsを推進していく上では重要になります。本コラムではその考え方と手法を説明します。

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目標設定について

目標設定の重要性

SDGs実装の5つのステップにおける2ステップ目で優先課題を設定した後は、優先課題の達成度を測る目標設定をすることが必要です。目標設定をしない、または設定した目標が不十分であれば下記のようなデメリットが生じ、企業として一丸となってSDGsを推進することが困難になってしまいます。

■目標設定が上手く出来ていない場合のデメリット
①課題の達成度が分からずSDGsの取り組みが進んでいるかどうか判別できない
②課題の達成度が分からないため、成果が出ていないように社員が感じてしまい、モチベーションが低下する
③目標が不明確な為、SDGsの取り組みが分散してしまう
④社外に対してSDGsの取り組みを発信する際に説得力が欠ける

上記デメリットが生じるのを防ぎ、全社で同じゴールを目指して着実にSDGsを推進するうえでは、意欲的かつ明確な目標設定が重要となります。

目標設定の仕方について

KPIを設定する

KPIとはKey Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標と訳されています。
最終的な目標値を達成するためのプロセスにおいて、重要な中間目標がKPIであり、KPIを設定することによりゴールに向かってどれだけ進んでいるのか進捗状況が把握出来るようになります。

例えば、「2030年までに自社の使用エネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄う」という最終目標を設定した際には、KPIとして下記のような指標設定が想定されます。
①各事業所の太陽光発電システム導入率○○%
②生産設備の動力源の再生エネルギー利用比率○○%
③社用車のEV化比率○○%
など。

挑戦的な最終目標は達成に向けて時間を要することもあり、進捗を把握して成果を着実に積み上げていくうえでもプロセス上の重要指標であるKPIを設定することは重要です。
最終目標達成に向けたプロセスを論理的に描き、プロセスの中で重要な指標をKPIとして設定し全社で着実に進捗させていきましょう。

目標設定の方法

また、目標設定の方法にはいくつか手段があります。
以下でそれらについて説明します。

①ベースラインの設定
ベースラインとは目標を評価するための基準点のことです。基準点には主に、(a)特定の時点、(b)特定の期間の2点があります。

(a)特定の時点
目標指標について、過去のある時点を基準として目標を設定する考え方です。
例)2012年と比較して2025年に女性管理職の割合を30%増加させる

(b)特定の期間
目標指標について、過去のある期間を基準として、将来のある期間の目標を設定する考え方です。
例)2023年から2025年の3年間の廃棄物重量を、2012年から2014年の3年間と比べて70%減少させる

②目標タイプ(絶対目標、相対目標)
SDGsの目標設定には、(a)絶対目標、(b)相対目標の2点があります。

(a)絶対目標
単純にある指標の増減を目標値として設定する考え方です。
例)労働災害の発生率を 2015 年から 2020 年までに 90% 削減

(b)相対目標
企業活動の算出単位と比較した目標値を設定する考え方です。
企業活動の状況を反映しつつ目標達成への進捗を確認することができます。
例)自社の単位売上高に対する温室効果ガス排出量を2014年から2025年までに30%削減する(ガス排出量○○トン/売上高を目標値とする)

目標設定の仕方を誤ると達成困難となり社内のモチベーションが下がる、目標達成したが実効性がないなどの弊害が生じます。上記の考え方を理解したうえで適切な目標設定を行いましょう。

意欲的な目標設定で社会に貢献する

意欲度の高い目標設定

目標を設定するうえでは、社会へ大きく貢献し、創造性を高めてイノベーションを生み出すためにも意欲度の高い目標設定をすることが重要です。例えば、「2025年までに再生可能エネルギーの利用率を30%にする」という目標と「2030年までに再生可能エネルギーの利用率を100%にする」という目標ではどちらの方がメッセージ性が高く、対外的なインパクトが大きいと感じるでしょうか。

後者は前者よりも時間軸を長くし、中長期的な目標設定をすることで自社のSDGsにかける意欲の高さを対外的に示すことができますし、挑戦的な目標であるがゆえに、その達成に向けた自社内の取り組みも創造性の高いものが生まれてくる可能性が高くなります。

一方で、時間軸を長くとり意欲度の高い目標設定をした場合、達成までの道筋があいまいになるリスクも抱えています。そうならないためにも、上記で紹介したKPIを複数設定し、目標に対する進捗を明確にして着実に達成に向けて活動していくことが重要になります。

さいごに

どのくらいの高さの山に登るのか、今どの高さまで登っているのかが分からなければ登頂することは難しいのと同じように、SDGsの実装に向けて目標設定をすることは、全社が目指す方向性を統一し、一丸となってSDGsを推進するうえでは必須になります。
ただし、目標設定を誤ってしまうとそもそも達成が実現不可能なほど難しい目標になりモチベーションを削いでしまう、達成したものの実効性がなく社会的なインパクトが小さいなどマイナスの影響が生じるリスクもあります。
意欲的で明確で実効性のある目標設定を行うことで、全社一丸となってSDGsを推進していきましょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
エグゼクティブパートナー

巻野 隆宏

専門分野は事業戦略の立案をはじめ開発・マーケティングなど多岐にわたる。企業の持続的な変化と成長のサポートに取り組み、志ある企業・経営者のパートナーとして活躍中。「高い生産性と存在価値の構築」を信条とし、明快なロジックと実践的なコンサルティングを展開。建設業、製造業を中心に中・長期ビジョン構築において事業の選択と集中で高収益ビジネスモデルへの変革を数多く手掛けてきた。

巻野 隆宏

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