COLUMN

2022.08.05

SDGsとESG~時代に求められる経営の在り方とは~

「SDGs」や「ESG」という言葉は聞かない日がないというくらい、近年関心が非常に高いテーマであり、自社で取り組みたいと考えている方も多いのではないでしょうか。本コラムでは、SDGsとESGの違いとともに、取り組むメリットなどについて解説します。

SDGsとESGの違い

SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略であり、持続可能な社会の実現を目指すため、2030年までに達成すべき17の国際社会共有の目標と169のターゲットから構成されるゴール(目標)のことです。2015年の国連サミットで採択がされ、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を目指すこと、国や自治体、企業、個人まですべてのステークホルダーが協力して、経済・社会・環境の3つのバランスがとれた世界を目指す目標です。もちろん、企業も例外ではなく、その一員として参画が必要です。

また、SDGsはすべての企業に対し、明確に、その創造性及びイノベーションを活用して、持続的発展のための課題を解決するよう求めています。多くの企業は、世の中を良くするため、課題解決のために存在しています。それ故に、今の取り組みでもSDGsの目標達成に貢献している企業は多い筈です。しかし、2030アジェンダの前文には「大胆かつ変革的な手段」を取る必要性が訴求されています。既存の取り組みの延長線上ではなく、「大胆かつ変革的」に取り組む必要があります。SDGsは「もっとできることがあるのだ」と私たちに気づかせてくれています。

【関連ページ】:
SDGs(持続可能な開発目標)とは
SDGsとは?企業における取り組みの意義

ESGとは

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の英語の頭文字を合わせた言葉で、2006年、当時の国連事務総長のコフィー・アナン氏が発表した「責任投資原則(PRI)」の中で、投資判断の新たな視点として紹介されました。そして、企業が成長していくためには、ESGの3つの観点が必要不可欠であるという考え方が世界中で広まっています。

例えばESGの「Enviroment(環境)」では、二酸化炭素(CO2)の排出による温暖化や水質汚染などをはじめとする環境問題を解決する為の視点です。企業は環境を考慮した商品開発や太陽光発電や風力発電に代表される再生可能エネルギーを使用し、自社の電力をまかなうことによって環境負荷を減らす取り組みなどが考えられます。続いて、ESGの「Social(社会)」では、人権問題を解決するための取り組みを表しており、企業におけるダイバーシティやワークライフバランスの実現を目指します。ダイバーシティ(多様性)の為には、性別や国籍などを問わず、社員が自分の個性を発揮して働くことが出来るような環境整備をすることが重要です。最後にESGの「Governance(ガバナンス)」は法令順守を指します。企業が健全な活動を行うためには、企業自身が内部統制を強化し、経営上で起こり得るリスクをあらかじめ把握し、先回りしてリスクを管理する責任があります。

SDGsとESGの違いと関係性

SDGsとESGは、どちらも国連から普及した言葉という点で共通しています。

またどちらも環境への配慮や、社会に対する影響を考慮した経済活動を行うといった要素があるため、同じような意味合いとして捉えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、SDGsは国連の加盟国が採択した目標であるため、対象が全世界中の人々であることに対して、ESGは企業経営の中で取り組むべき課題であるため、対象は民間企業となります。
SDGsは国から個人に至るまでのすべてが主体であるのに対し、ESGは民間企業や投資家が主体と考えられます。
したがって、両者の違いは「取り組み規模の違い」であると言えます。

前述の通り、企業活動と捉えるとSDGsとESGには共通するものが多いため、企業がESGに配慮しながら活動を行えば、SDGsの達成にもつながるという関係性になります。そのため、企業がESGやSDGsに取り組む際は、具体的な活動内容はSDGsの17のゴール169のターゲットをベースに組み立て、実施内容をステークホルダーに発信する際はESGの切り口でまとめて発信すると良いでしょう。

SDGs達成のカギとなるESG投資

ESG投資とは従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指し、現在、投資家の中でこの投資方法が拡大しています。
これまでの投資方法では、企業の業績や財務状況といった財務情報が、投資する上での主要な判断材料とされてきましたが、近年では財務情報だけでは、企業の持続性や長期的な収益性を図ることは不十分であると考えられるようになり、ESGという非財務情報の要素を加えて投資判断されるようになりつつあります。

その背景として、2008年のリーマン・ショック後の資本市場において、短期的な利益を目指す投資スタイルへの反省や批判が高まり、世界の多くの投資機関がこの責任投資原則(PRI)へ署名するようになりました。2020年8月時点で3,332の年金基金や運用会社が責任投資原則(PRI)に署名しており、日本では85機関が署名、運用資産残高の合計は103兆ドルにも達しており、世界の投資マネーがESG投資に向かっています。投資家はESG投資を、リスクは低めに抑えつつ、長期的なリターンを確保していくのに適した投資方法として評価しており、企業もESGの観点を無視できないものになっているのです。

【引用】
参考資料4-1 ESG投資の動向 ー不動産分野におけるESG-TCFD実務者WG第1回資料5-1のアップデートー(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001362975.pdf

企業がSDGs・ESGに取り組むメリットとは?

企業価値・評価の向上

SDGs・ESGへ取り組むことにより、環境や社会に配慮したさまざまな施策を行っていることをアピールすることができます。その結果、企業ブランドの向上やIR活動への好影響、顧客・消費者からのイメージアップなど、企業価値の向上が期待できます。また特に若い層はSDGsへの関心が高く、SDGs・ESG経営に取り組む企業であるという認知が広がることで採用面においても優秀な人材確保も期待できます。

2019年に日経新聞が行った「SDGs経営調査」 では、SDGs経営を「環境価値」や「社会価値」、「ガバナンス」など4つの視点で評価し、総得点を偏差値で格付けしました。結果、SDGs偏差値が高い企業ほど、売上高営業利益率およびROE(自己資本利益率)も高く、SDGsを経営に活かしている企業ほど収益力が高い傾向が見られました。社会課題の解決と企業の事業成長は、相互に関連しているといえそうです。

新たな市場機会の可能性

「SDGsビジネス」は大きな市場機会を秘めていると言われております。

「SDGsビジネス」を企業として新たに取り組む際に大事なポイントとして、「アウトサイドイン」という考え方があります。これは「社会課題の解決を起点にしたビジネス創出」のことで、アウトは世界や社会を、インは企業や組織を意味します。世界・社会という「外部」の視点から、将来のありたい姿や何が必要かについて検討し、それに基づいて目標を設定していく方法を指します。つまり、企業を起点とするのではなく、顧客が求める価値の提供や社会的課題を起点に取り組みを検討することが大事になります。

優秀な人材を確保しやすくなる

例えば、SDGs目標8の「働きがいも、経済成長も」という目標に関連して、働きやすい職場環境を整えることで、社員のモチベーションや満足度が上がります。また、採用活動の面においても、学生に対するイメージの形成や求職の動機づけのみならず、求職者・転職者における優秀層の獲得にも繋がります。Hrpro調べによると、20代の7割以上がSGDsを認知しており、8割がSDGsに取り組む企業に「好感が持てる」と回答、転職市場においても、過半数が「SDGsに取り組む企業」に対して「志望度があがる」と回答しています。これらの調査から、SDGsに取り組むことで優秀な人材を確保できる機会が増えるといわれています。

【引用】
20代の過半数が、SDGsに取り組む企業に「転職活動の志望度が上がる」と回答。認知や関心の高まりが顕著に(HR pro)
https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=1730


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企業のSDGs取り組みポイント~お客様に選ばれ続ける持続可能なビジネスへ

ESGの観点から考える経営戦略

ESG経営は中小企業にとっても無視できない


ESGという概念は投資という文脈から来ていますが、今や企業活動に欠かせないキーワードとなり、ESG経営という企業サイドから見た概念が強くなっています。
そのため、非上場企業や中小企業にとってはあまり関係がないと考えられている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。例えば、サプライチェーン全体で捉えれば、取引先として繋がっている大手企業がESG調達を行っており、環境・社会などへの対応が求められ、それらの取り組み進捗を問われるというケースも出てきています。
今後益々このような動きが加速していく中、どのようにSDGs・ESGへ取り組むかは、企業として生き残るための必須条件とも言えるのです。中小企業こそESG経営に取り組み企業価値の向上を推進しましょう。

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著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
エグゼクティブパートナー

井上 裕介

大型リゾート・旅館にてホテル・スキー場・飲食店舗を運営し、新規企画開発・人材育成・業務改善・収益改革などに従事後、当社へ入社。現場経験を生かした戦略設計や中期ビジョン策定、新規事業戦略策定、SDGs策定支援など幅広く活躍している。

井上 裕介

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