
ダイバーシティ経営とは何か?
そもそもダイバーシティとは何か?日本語に直訳すると「多様性」であり、性別、年齢、国籍、障害の有無、性的指向、宗教、価値観などの様々な特性を持つ人々が共存している状態を指す。
それではダイバーシティ経営とは何か?これについては経済産業省が「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義している。
それでは昨今、なぜダイバーシティ経営が注目を浴びているのか?その背景には、グローバル化の進展、少子高齢化による労働力不足、そして価値観の多様化などがある。
企業が持続的に成長するためには、異なる文化を持つ人材を受け入れ、多様な市場に対応する柔軟な力が不可欠であり、それぞれに応じたワークライフバランスや個々の価値観を尊重し、全員が自分らしく働ける環境を整えることは、離職率の低下にもつながる。更には、近年では多様性を積極的に取り入れる企業が社会的にも評価されるようになっており、ダイバーシティ推進は単なる人事施策に留まらず、企業戦略としての重要性を増していっているのである。

ダイバーシティ推進がもたらす企業成長メリット
ダイバーシティ経営には、次に示す4つのメリットがあると言われている。
1.プロセスイノベーション
様々なバックグラウンドを持つ人材が集まることで、新しい発想が生まれ、収益性が高いアイデアが生まれる可能性が高まるとされている。
2.プロダクトイノベーション
多様な人材を抱える企業は、多様な顧客層のニーズを理解する能力にも長けている。社員自身が顧客と同じ視点を持つことで、より細かく的確な製品やサービスの提供が可能になるのである。
3.インナーブランディング
内閣府が行った調査によると、ダイバーシティが高い組織で働いていると感じている社員は、そうでないと考える社員よりも、「5年以上勤務する」と回答した人の割合が高い。つまりは、多様性のある組織の方が社員満足度が高まる傾向にあるとされている。
4.アウターブランディング
ダイバーシティを重視する企業文化は、求職者にとっても大変魅力的に映る。多様性を尊重する組織は、幅広い人材層から支持され、優秀な人材を引き寄せ、採用市場において有利に働くとされている。

ダイバーシティ推進の主な課題と乗り越え方
ダイバーシティ推進が企業にもたらすメリットは多い一方で、現実には様々な課題に直面することも少なくない。代表的な課題としては、次のようなものが挙げられる。
1.無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)
固定観念は、採用・昇進・業務配分の場面で無意識に差別的な判断を生むことがある。これを克服するためには、全員が自らの思考の癖に気付くことが重要であり、ダイバーシティ研修などを通じて、自分とは異なる価値観を持つ他者と向き合う機会を増やすことが効果的である。
2.インクルージョンの不足
重要なのは、誰もが尊重され、能力を発揮できる「インクルーシブ(包摂的)」な職場づくりである。そのためには、心理的安全性を担保する職場環境が必要であり、上司や同僚が多様な意見やスタイルを歓迎し、対話が活発に行われる組織文化を育てることが必要となる。
3.組織風土の変革への抵抗
既存の企業文化や慣習が強く根付いている組織では、ダイバーシティ推進に対する抵抗感が生まれることもある。これを克服するには、ダイバーシティがもたらす具体的な成果データを可視化し、組織全体で共有することが有効となる。また、推進の中心となるリーダー層が率先して姿勢を示すことで組織全体の意識を変えていく原動力となっていく。
4.評価制度やマネジメントの未整備
多様な人材を正当に評価するためには、従来の一律的な評価基準だけでは不十分である。成果主義に偏りすぎず、プロセスやチームへの貢献も含めた多角的な評価を導入することが求められる。

ダイバーシティ経営を実現するステップ
最後に、ダイバーシティ経営を成功させるための具体的なステップについて述べる。
STEP1. 経営層のコミットメントとビジョン策定
経営層がダイバーシティ推進の必要性を理解し、自らの言葉で明確なビジョンや価値観を社内外に発信すること。ダイバーシティ経営は単なる人事施策ではなく、経営課題である。人事部任せでは絶対に実現しない。まずは経営者が本気でコミットし、自らその想いを発信することが全てのスタートである。
STEP2. 現状把握と課題の可視化
自社の現状を分析し把握すること。多様性指標を収集・分析し、どこに偏りや課題があるかを可視化する。具体的な取り組みを実施する前に、想定される問題はできる限り先に潰しておきたい。
STEP3. 目標設定と具体的施策の設計
分析結果をもとに、中長期的な目標を設定する。例えば、「3年以内に女性管理職比率を20%に引き上げる」「外国籍社員の採用を年5名以上実施する」など、定量的なKPIを設定できるとよい。
STEP4. 継続的な検証と改善
取組みは継続的なモニタリングと改善が重要である。定期的に施策の効果を検証し、必要に応じて制度の見直しを行い、柔軟に対応していくことが持続可能なダイバーシティ経営の実現につながっていく。
まとめ
これまでダイバーシティ経営について述べてきた。
一昔前はダイバーシティ経営が実践できていることは企業にとっての強みであったが、これからの時代は実践できていることが当たり前で、実践できていなければ、それが弱みになる時代である。
ダイバーシティ経営は、単なる企業のイメージアップなどではなく、競争力を維持していくためには必要不可欠なのである。
「できたら良いな」ではなく、「絶対に実現する」という強い意志を持ち、経営マターとして取り組んでいただきたい。
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タナベコンサルティング
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ゼネラルマネジャー鎌田 智一
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