EXM(社員体験価値マネジメント)を会社全体で取り組むことで、
自社の魅力を高め持続的成長につなげることができる

EXMとは
EXM(Employee Experience Management)とは、社員体験価値マネジメントの略称であり、入社前、在籍中、退職後の全ての時間軸において、社員一人ひとりが体験できる価値を最大化するためのマネジメント手法を指します。
この手法は、社員を単なる資源ではなく、価値ある資産として捉え、その価値を最大化することを目的としています。
EXMは、企業が求める人材を引き寄せ、育成し、退職後も良好な関係を維持するための重要な経営概念です。
具体的には、入社前には採用マインドセットを通じて自社の魅力を伝え、在籍中には制度やカルチャーを通じて社員のエンゲージメントを高め、退職後にはアルムナイ制度を通じて卒業生との関係を維持することが求められます。

EXMがもたらす組織への影響
EXMは、組織に多大な影響を与えると考えます。
まず、EXMを高めることは社員のエンゲージメント向上にも影響するため、一人ひとりの生産性が高まることで企業の業績向上に繋がります。また、EXMが高まることで、その会社で働くことに価値を感じ、社員の定着率が向上することで優秀な人材の流出を防ぐことができます。さらに、退職後も良好な関係を維持することで、他社で経験を積んだ後アルムナイ採用や人材の紹介に繋がるケースや、ビジネスマッチングなどの新たな価値を生み出すことが可能になります。つまり、EXMを高めることで現役社員とOB・OG社員が会社の魅力を発信し続け、会社の成長に貢献することにもつながっていきます。
したがって、EXMは単なる人事施策ではなく、経営戦略の一環として位置付けられるべきであるとタナベコンサルティングは提言しています。

採用から退職後までのEXMの全体像
EXMの全体像は、入社前、在籍中、退職後の三つのフェーズに分かれています。
1.入社前
企業のPMVV(Purpose Mission Vision Value)を対外的に発信し、求職者に自社の魅力を伝えることが重要です。
具体的には、会社見学会やインターンシップを通じて、求職者に実際の業務や文化を体験してもらいます。
例えば、社員との交流機会を増やすことで、早く会社の雰囲気を知ってもらうことや、社員としての帰属意識を高めることにつながります。
2.在籍中
制度やカルチャーを通じて社員のエンゲージメントを高めることが求められます。
具体的には、人事制度や評価制度、福利厚生制度を整備し、社員が働きやすい環境を提供します。
制度以外にも賞賛し合うことやお互いが教え合う風習など文化として根付いていることなどもEXMを高める一つです。
3.退職後
アルムナイ制度を通じて、卒業生との関係を維持し、情報交換やビジネスマッチングを行うことで、企業と卒業生の双方に価値を提供します。同窓会と同じように同期会の場を提供する企業などもあり喧嘩別れではなく、気兼ねなく連絡できるような関係性が望ましいです。
このように、EXMは採用から退職後までの全てのプロセスを通じて、社員体験価値を最大化することを目指しています。

体験型ワークショップ
「自社の社員体験価値マネジメントを考える」
今回のEXM(社員体験価値マネジメント)をテーマにしたワークショップは、前半は講義形式でEXMについて学び、後半はグループワークを通して取り組んでいきたいことを共有していただきました。参加者自身が現状自社でできていることとできていないことを整理し、それを基にグループ内で意見交換をすることでよりEXMに対する理解度が深まったなどの意見もありました。EXMを初めて学んだ企業様も多く、自社では取り組めていないが取り入れたいこと、業界・業種特性を活かしたEXMの高め方など活発に意見交換することができましたので一部紹介させていただきます。
グループAでは、特に経営層のメンバーが中心となり、実際に取り組まれている事例や風土の変化についてディスカッションを行いました。例えばオフィスをフリースペースと集中スペースに分け、フリースペースは「私語自由」をキーワードに積極的にコミュニケーションを促すことで、会社の雰囲気の向上・社員同士が教え合う文化・離職率の低下につながった事例などを紹介されていました。また5年ごとに1か月間の有給休暇を付与する制度を導入し、社員が自己研鑽やリフレッシュの時間を持てるようにした結果、これまで育児休暇に馴染みのなかった世代の男性社員にも、育児休暇への理解が広がった事例などがありました。
グループBでは、入社前と退職後の接点の持ち方を中心に活発なディスカッションが行われました。例えば、入社前に面談を設定する場合は、「カジュアル面談」という名目で社歴の浅い社員と面談していただくことによって、よりリアルな会社の魅力を生の声でお伝えできるようにしている企業様もありました。また、面談をOB訪問や入社前面談とするのではなく、「カジュアル面談」とすることで面談に対するハードルを下げ、求職者に身構えさせない工夫をしていることもポイントであるという話も出ました。退職後(アルムナイ)については、導入を考えているがまだ導入できていない企業様が多かったですが、ディスカッションの中では退職者との接点を持ち続けるという視点で議論がなされ、終盤ではアルムナイに対して前向きに検討すべきだという意識がグループ全体から感じられました。
グループCでは、特に採用に関する取り組みに関してディスカッションが盛り上がりました。まだまだ応募者が入社のイメージが沸いていない、という悩みがある担当者に対して、他の方がオウンドメディアを運用されていることを聞き、自社でも取り入れられるよう検討されるとのことでした。また、現状一部のメンバーにて1on1ミーティングを取り入れているものの、運用が煩雑になっており、全社展開に課題を感じられている担当者に対し、別の方から実際の細かい運用のアドバイスをされておられました。
グループワークでは他にも活発に情報交換がなされ、参加者同士で質問し合い、理解を深め、新たな気付きを得るという非常に有意義な時間となりました。実際に参加者からは、「自社で実施している施策もまだ伸びしろがあることが分かったため、自社に持ち帰って再度検討したい。」というお声もあり、自社の課題を前向きに捉えられていた参加者が多かったです。
入社前、在籍中、退職後の3つの時間軸で検討することにより、EXMの全体像を把握することができ、各段階での体験を考慮することで、採用から退職後までの一貫した社員体験をデザインする重要性を認識し、具体的な課題を明確化するきっかけとなったと感じております。
さいごに
EXM(社員体験価値マネジメント)は、企業が社員の体験価値を最大化するための重要なマネジメント手法です。入社前、在籍中、退職後の全ての時間軸において、社員一人ひとりが体験できる価値を高めることが求められます。EXMを実践することで、社員のエンゲージメントが向上し、業務の生産性が高まり、企業文化が強化されます。また、退職後も良好な関係を維持することで、アルムナイネットワークを活用し、新たなビジネスチャンスを生み出すことが可能になります。
EXMは、企業戦略の一環として位置付けられ、持続的な成長を実現するための鍵となります。これにより、企業は競争力を高め、優秀な人材を引き寄せ、育成し、維持することができるのです。EXMは、未来の組織にとって不可欠な要素であり、今後ますます重要性を増していくと考えられます。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
コンサルタント稲垣 咲香
- 主な実績
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- 中堅電機工事業:人事制度運用支援、採用戦略
- 中小物流業:人事制度再構築コンサルティング
- 中小商社:人事制度再構築コンサルティング