人事コラム
人事制度

初めての賃金制度設計

会社の成長を見据えた人事処遇制度導入のタイミングと設計のポイント

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初めての賃金制度設計

賃金制度導入は社員の評価を公平に行い、
個人の成長と組織基盤を強化する手段です。

賃金制度とは

賃金制度とは

賃金制度とは、企業や組織が社員に支払う賃金や報酬の仕組みや体系を指します。

 

賃金制度には、社員の能力、職務内容、経験、スキル習得度、貢献度に応じて賃金を決定する方法や、その基準、規程が含まれています。
賃金制度は企業の目的や戦略に基づいて設計されることが多く、業績に応じて変動する制度や、職務に応じて固定される制度など、様々な形態があります。また、福利厚生やボーナスも賃金制度の一部として考えられます。
経営者の社員へ対する思想の表れです。

 

賃金制度は、社員のモチベーションや生産性に大きな影響を与えるため、企業にとって極めて重要な要素です。
適切な賃金制度の設計は、社員のやる気を引き出し、生産性を向上させ、ひいては企業の成長に寄与するため、賃金制度は企業の持続的な発展に欠かせない戦略的ツールであり、その設計や運用が企業の成功に直結すると言えます。

賃金制度の種類

賃金制度の種類

これまでのコラムでも紹介していますが、改めて代表的な賃金制度の種類を示します。

 

1.固定給制度:社員の職務に応じて、あらかじめ決められた給与を支払う制度

基本給と呼ばれる固定的な給与に加えて、特定の条件を満たした場合に手当が支払われることが一般的です。

2.能力給制度:社員の能力や技能に応じて、給与を支払う制度

能力に基づいて定められた単価に従い、作業やプロジェクトの成果に応じて支払われることが一般的です。
評価制度と連動して増減する場合もあります。

3.業績給制度:企業の業績に応じて、給与を支払う制度

売上や利益、顧客満足度などの指標をもとに支払われることがあります。決算賞与などもこれに該当します。

4.役割給制度:役割や責任に応じて、給与を支払う制度

例えば、役員や管理職には、社員を指導・管理する責任があるため、それに見合った役職手当が支払われることが多いです。

5.リワード制度:個人の成果に応じて、報酬を支払う制度

例えば、目標達成や成果に応じて賞与やインセンティブが支払われることがあります。

 

上記のように、賃金制度にはさまざまな種類があり、企業の目的や方針に合わせて採用・設計されます。

賃金制度設計の目的と重要性

賃金制度設計の目的と重要性

賃金制度は査定を決める仕組みではなく、組織風土改革やPMVV(パーパス・ミッション・ビジョン・バリュー)の実現と人材育成を目的とした手段です。
制度として整えることでマネジメントしやすくなり、公平・公正な評価ができ、ひいては働く社員の皆様のモチベーションアップとエンゲージメント向上につながります。

 

昨今は賃金制度だけではなく社内の仕組みがしっかりと整っているということが求職者にとっても重要な観点であると考えます。​

賃金制度設計のタイミングと進め方

賃金制度設計のタイミングと進め方

具体的に賃金制度を設計するタイミングと進め方を下記にあげます。

 

1.タイミング

⑴ 経営者が従業員の日常を評価できなくなる前(従業員規模が40~50名規模に成長したタイミング)
⑵ 業績が堅調に伸びている時

2.進め方

⑴ 適切な賃金体系の構築と賃金レンジの設計
⑵ 昇給・昇格運用管理基準の検討
⑶ 諸手当の検討
⑷ 新賃金以降のシミュレーションの実施と調整給の検討
⑸ 新賃金制度にあわせた再格付
⑹ 社員への説明・運用

賃金制度設計の事例紹介

賃金制度設計の事例紹介

それでは、実際に制度が整っていなかった企業へ制度構築を支援した事例を紹介します。

(創業5年、年商10億、従業員50名の電気設備工事業)
社長のビジョンは30億円規模の会社にすること。
初回面談当時、社長は48歳で60歳までには上記ビジョンを実現したいとのこと。
従業員が30名を超え、様々な制度を整える必要性を感じて当社へ相談をいただき人事制度構築支援を開始。

 

受注状況(仕事)も採用も好調、賃金水準も高く将来への見通しは明るいが、想定より人員増のスピードが速く、1年で従業員数は約倍に成長された。しかしながら社内のルール(制度・規定)や仕組みが整っておらず、経営者の裁量によるところが大きかった。
社員数が増えるにつれ感覚的に決めていたものを組織化・仕組化する必要性を日増しに感じていた。
今回の人事制度構築支援にあたっては経営者だけではなく社員にも丁寧にヒアリングを行い、経営者の想いや思想を人事制度に盛り込んでいる。

 

1.創業のきっかけ

前職在籍中、勤めていた会社が上場企業の子会社になり業界を知らない上層部との関係に悩んだ結果、家族の後押しもあり、会社を退職。30年以上真摯に培ってきた電気工事の技術と経験を活かし創業を決意。
ご自身の経験上、社員にとっても新たに入社する人にとっても豊かな生活を送ってほしいという願いを込めて経営理念の一つに"社員の生活向上"を掲げた。人事制度構築(賃金制度設計)も理念実現の一つ。

 

2.事業領域

一般的に電気工事業というとそれぞれ専門分野に特化する企業を想像する方が多いだろう。
当社の強みは工場や事務所といった業務用から一般家庭用のあらゆる現場管理から施工までを一気通貫で担える会社であること。大手ゼネコンの要求する現場管理ができることも強みの一つ。
競合はあるようでない。コストリーダーシップが取れる事業領域を展開している。
顧客にも徐々にこの一気通貫体制が認知されてきている。今後はフローからストックビジネスを創っていきたいという構想もある。

 

3.目指す企業像 「好待遇企業」

ある程度の額を保証すると社員がやる気を持ち質の良い仕事をする。
好待遇はいい人材を引き寄せる。噂が広がり、新たな人材がくる好循環が生まれると気づく。
いい仕事を行うとお客様からも喜ばれリピートに繋がる。チームで良い仕事をしてくれた社員をしっかりと評価し、報いたい。

 

4.人事制度への思い

目指す姿としては社長が社員全員を評価するのではなく、段階を踏めるような運用。
会社設立以降、初めて高校卒業生の採用を行った。今後も新卒採用は行っていきたい。
手当でごまかさず、しっかりと基本給を高水準に設定し社員の生活を安定させたい。

さいごに

人事制度は「経営者の社員に対する想いのあらわれ」であると考えます。

 

今回取り上げた事例企業においても同様であり、同社においては、「"働く"を豊かにしたい」という社長のお考えを具現化していくツールが人事制度であると私は強く感じます。

 

当然、人が増えると様々な問題が起こるのも現実です。一定のルールを定めるということは社員を縛ることではなく、不安を取り除く一つの策であるとも言えます。

この課題を解決したコンサルタント

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