グループ会社をマネジメントする仕組み構築のポイント
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グループ会社を持つ企業にとって、効果的なマネジメントは事業の成功に不可欠です。グループ会社のマネジメントは、単一の企業を運営するよりも複雑で、多岐にわたる課題が存在します。この記事では、グループ会社をマネジメントするための仕組み構築のポイントを4つに絞って詳しく解説します。
明確なミッション・ビジョンとバリューの共有
グループ会社全体で統一されたミッション・ビジョンとバリューを持つことは、グループ各社が同じ方向に向かって進むための基本です。これにより、各グループ会社が独自の目標を持ちながらも、グループ全体としての一貫性・統一感を保つことができます。実際にグループ経営をしている多くの企業は、グループ各社ごとの単体ではミッション・ビジョン・バリューがあるものの、グループ全体では策定していないケースが非常に多いです。特にM&Aによるグループインしたグループ会社において、グループイン以前のミッション・ビジョン・バリューのままで、整合性が取れていないことが多いです。グループ経営を推進させていくには、まずはグループ会社のバックボーンを整えていくことが重要です。
また当然ながら、策定しているだけでは効果がなく、グループ各社にしっかりミッション・ビジョン・バリューを浸透させていくことが不可欠であり、浸透させる仕組み作りがポイントとなってきます。
グループミッション・ビジョン・バリューを浸透させる具体的なアクションとしては、大きく3点あります。
1点目はトップダウンでのコミュニケーションを図ることです。グループ全体のミッション・ビジョン・バリューをグループ本体のトップマネジメントから各グループ会社に伝えることが重要です。方法としては、グループ方針発表会などの全社員が集まる場や定期的な全社ミーティングの場での発信、またグループ規模が大きい場合はビデオメッセージなどで発信することが有効です。
2点目はグループ全体のミッション・ビジョン・バリューを再確認するための定期的なミーティングを開催すること。これにより、各グループ会社が最新の情報を共有し、共通の目標に向かって進むことができます。定期的なミーティングはこれ以外にもグループの一体感を醸成する効果もあります。
3点目は各グループ会社の社員に対して、ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるための研修やワークショップを実施することです。これにより、社員一人ひとりが自分の役割を理解することで当事者意識を醸成させ、グループ全体の目標に貢献する意識を持たせることができます。
効果的なコミュニケーションの確立
グループ会社間のコミュニケーションが円滑であることは、情報の共有や意思決定の迅速化に繋がります。グループ経営がうまくいっていないケースとして、各グループ会社間のコミュニケーションがないことにより、各グループ会社独自に経営を進めてしまう分社化経営スタイルとなっていることが多いです。結果としてグループ横断型でのシナジー効果が発揮できないだけでなく、グループを統制する機能が弱くなってしまいます。よって効果的なコミュニケーションの仕組みを構築することが重要です。
グループ会社間でのコミュニケーションを図る手段としては様々あります。
その1つとしてコミュニケーションツールの導入があります。グループ全体で共通のコミュニケーションツールを導入することにより、情報の共有をスムーズにできます。例えば、SlackやMicrosoft Teamsなどのツールを活用することで、リアルタイムでの情報共有が可能になります。
また定期的な報告会の実施も効果があります。各グループ会社の業績や状況を共有するための定期的な報告会を実施することにより、各社の進捗状況や課題を把握し、迅速な対応が可能となります。その際にそれぞれの課題に対し、グループ全体で連携することで、グループとしての一体感が生まれます。
その他には、フィードバックの仕組みを構築することも手段としてあります。各グループ会社からのフィードバックを収集し、改善点を見つける仕組みを導入する。これにより、現場の声を経営に反映させることができ、より実効性のあるマネジメントが可能となります。
人材育成とキャリアパスの整備
グループ会社全体での人材育成とキャリアパスの整備は、社員の成長とモチベーション向上に繋がります。優秀な人材を育成し、適切なポジションに配置することが重要です。グループ会社の数だけ社長のポストがありますし、役員のポストにおいても同様ですので、多くの経営者人材を育成する必要があります。優秀な人材を育成しながらグループ会社の社長や役員に登用することにより、座学だけではない実践的に経営者人材育成システムを構築することが企業の永続発展に繋がります。
グループ全体での育成を行うにあたり、具体的な実施策をご紹介します。
1点目は共通の研修プログラムを策定し実施を行うことです。各社単体ではなくグループ全体で共通の研修プログラムを導入し、社員のスキルアップを図ることです。これにより、各グループ会社の社員が同じ基準で教育を受けることができ、全体のレベルアップが期待できます。また各グループ全体で研修を行うことにより、各階層ごとでコミュニケーションを図ることができ、仲間意識や競争意識が生まれ一体感が醸成されます。
2点目は各グループ会社でのキャリアパスの明確化を図ることです。各グループ会社でのキャリアパスを明確にし、社員が自分の成長を見据えたキャリアプランを立てられるようにすることで、社員のモチベーションが向上し、長期的な視点での成長が期待できます。
3点目はグループ間での人材交流の促進です。 グループ会社間での人材交流を促進し、異なる視点やスキルを持つ社員が相互に学び合う環境を整える。これにより、各社の強みを活かし、全体のシナジーを生み出すことができます。グループ本社の経営層はグループ全体を把握する必要があり、各グループ子会社においても精通していなくてはなりません。よって各グループ会社の社長・役員というポストだけでなく、優秀な若い人材にグループ間における様々な経験を積ませることにより、結果的に経営者人材を育て上げることができるのです。
財務管理の統一
グループ経営を行っていく際に忘れてはならないのが、財務管理です。グループ全体の財務状況を一元管理することは、経営判断の迅速化やリスク管理において非常に重要です。財務管理の統一は、グループ全体の健全な経営を支える基盤となります。グループでのCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を構築することにより、稼いできた資金をどこに投資していくかという事業戦略の遂行においても重要となってきます。また、グループ本体に財務管理を統一・集約させることにより、経営の効率化およびスリム化も実現できます。
実際に財務管理を統一化させるには以下を検討することが必要となってきます。
1点目は共通の財務システムの導入です。グループ全体で共通の財務システムを導入し、財務データの一元管理を実現することにより、各グループ会社の財務状況をリアルタイムで把握することができます。しかしながら、各グループ会社ごとに異なるシステムを導入している場合、統一化するには費用と時間がかかることから、段階的に進めていく必要があります。
2点目は定期的な財務報告の実施です。各グループ会社からの定期的な財務報告を受け取り、グループ全体の財務状況を把握します。これにより、経営判断の迅速化が可能となります。例えば、月次決算においては、月末締めから何営業日までに報告するかというルールを作ることで、グループ全体での業績を把握することができます。
3点目は財務リスクの評価と管理の実施です。各グループ会社の財務リスクを評価し、適切なリスク管理策を講じる。これにより、グループ全体の財務健全性を維持し、リスクに対する迅速な対応が可能となります。
グループ会社をマネジメントするための仕組み構築は、多岐にわたる要素を考慮する必要があります。明確なミッション・ビジョン・バリューの共有、効果的なコミュニケーションの確立、人材育成とキャリアパスの整備、そして財務管理の統一が重要なポイントです。これらの要素をバランスよく取り入れることで、グループ会社全体の成長と成功を実現することができます。
グループ会社のマネジメントは一筋縄ではいかない課題が多いですが、適切な仕組みを構築することで、各グループ会社が協力し合い、シナジーを生み出すことが可能です。経営者やマネジメント層は、これらのポイントを押さえた上で、グループ全体の発展を目指していくことが求められます。
グループ会社のマネジメントにおいては、各社の独自性を尊重しつつ、全体としての一貫性を保つことが重要です。これにより、各グループ会社が持つ強みを最大限に活かし、全体の競争力を高めることができます。経営者やマネジメント層は、これらのポイントを実践し、グループ全体の成長と成功を目指していくことが求められます。
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