COLUMN

2024.02.02

経営サイドの判断基準を持った人材をつくる ~財務視点の必要なスキルを鍛える~

  • 資本政策・財務戦略

経営サイドの判断基準を持った人材をつくる ~財務視点の必要なスキルを鍛える~

数字というものは万国共通のものであり、普遍的なものであることに異論を唱える方は少ないと思われますが、経営に関わる方の中の大多数が、その数字で経営サイドから物事を判断できる人材が欲しい、もしくは育てたいと考えています。当然のことながら、企業経営という観点においては数字は切っても切り離せないものであり、数字を自社の経営指標として捉え、経営判断ができる人材はどこの企業でも必要とされています。今回は財務知識に長けた人材の育成のポイントや流れを紹介いたします。

経済的価値を高め、企業価値向上につなげる

ビジネス社会においてVUCA(ブーカ)時代と言われ始めたのは2010年代の前半であり、早10年が経ちます。この不確実性が高まる中で、企業はその価値(企業価値)を高め持続的成長を遂げていくために、社会的価値と経済的価値の向上に取り組んでいます。近年では世界的にもSDGsの考え方が浸透し、ESGをはじめとする非財務資本が着目され企業にとっての社会的価値が見直されています。一方で、経済的価値としてPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)といった財務指標に対する認知・認識も進んでおり、中長期ビジョンの中で目標値として明確化する企業も増えてきています。

ただしこの財務指標については、その意味や意義を理解して改善に向けた施策を打ち出せている企業は多くはありません。その一番の要因は社内において計数感覚を持って財務の視点から分析ができる人材が不足しているからです。本来このような役割を担うのはCFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー/最高財務責任者)と呼ばれる人になりますが、必要となる基本知識や実践的スキルは日常業務でなかなか身に付けられるものではなく、また突発的に開花するものでもありません。さらに会社にとってCFOは一人ですが、経営者が社内で「経営が分かる人材」を育てたいと考えているのと同様に、「財務が分かる人材」を育てていくことも企業の経済的価値を高めていくためには欠かす事はできません。

基本的な財務知識を体系的に押さえる

アカウンティングスキルを身に付けていくための最初のステップとしては、財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)と、財務会計の基本的な概念の理解です。ここでは財務三表の詳細は割愛しますが、兎にも角にも財務データの分析が出来ない事には始まりません。単に売上高や売上総利益、経常利益が前年と比べて上がったのか下がったのか、また同業他社や目標と比較して良いのか悪いのかだけではなく、付加価値である限界利益や生産性、前述したROEやROICなどの財務指標にも目を向け、言葉の意味や計算式を正しく理解することが必要です。

次のステップでは、企業価値・事業価値評価の基本を押さえることです。代表的な算出方法としてはDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)があり、これは企業や事業が将来的にキャッシュを生み出す力を評価するものです。企業・事業の収益力に着目した評価方法であるため高精度の事業計画があれば、その納得感は高い結果になりやすい一方で、将来のキャッシュフローの見積もり次第で企業価値が変わってしまうため客観性が失われる可能性があります。そのため近年は、企業価値評価ではPBRが採用されるケースが増えてきています。

これらの財務知識の基本を押さえることで、ファイナンス思考からの事業戦略判断ができるようになります。具体的には事業成長に向けた投資判断や新規事業の撤退判断、さらにM&Aの実行判断など、その内容は多岐に渡ります。財務というと経営戦略のイメージがありますが、実は事業戦略の判断基準となっています。

①ROE(自己資本利益率 / Return On Equity)
企業が自己資本に対してどれだけの利益を生み出したのかを表す指標。基本的にはROEが高いほど資本を上手に使い、効率良く利益を創出している会社と言える。

②ROIC(投下資本利益率 / Return On Invested Capital)
投下資本に対して、どれだけ利益を出しているかを表す指標。ROEが純資産を分母にして計算するのに対し、ROICは純資産+有利子負債で算出する。また分母も純利益ではなく、営業利益をベースにしたNOPATを使うことが多い。複数事業を展開している企業では、事業別ROICを算出することで各事業における投資効率を見ることができる。

③DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法 / Discounted Cash Flow Method)
企業評価方法のひとつ。略称の「DCF法」と呼ばれることが多い。将来企業が生み出すと予想されるキャッシュフローを見積り、その総合計を現在の価値に割り引き換算することにより、その企業の株式価値(企業価値)を算定するというもの。評価対象企業が上場企業・非上場企業を問わず、ほとんどのケースで採用される。

PBR(株価純資産倍率 / Price book-value ratio)
株式判断指標の代表的な指数のひとつ。一般的に株価の割安感の指標として用いられることが多い。PBRは株価を、1株当たりの株主資本(BPS)で割ることで求められる。なおBPSは株主資本を発行済み株式数で割ることで求められる。

企業価値を高める実践的スキルに繋げる

財務知識の基本を押さえた後は、それを実経営へと無図日付けていかなければなりません。ファイナンス思考からの判断基準は前項で記載しましたが、あくまで判断となる指標でしかありません。企業全体における価値判断期基準であるパーパスやMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)から見た企業価値向上のストーリーが必要であり、これがなければその財務指標を変化が果たして良いのか、悪いのかの判断ができなくなってしまいます。プロパー社員をはじめとする社歴の長い社員であれば自社の原点や貢献価値などは感覚的に理解している人もいるかと思いますが、社歴の浅い社員は、その定義を明確にしておくと判断基準のブレが少なくなります。ここで大事になるのは単に言葉として覚えるのではなく、みずからが理解、納得できているかどうかです。そのためには自社の商品・サービスの提供する価値(商品価値)や、顧客が期待する真の価値(顧客価値)も明文化しておくと良いです。

ここまでの流れを押さえられたのであれば、最終的にそれを中期経営計画へと落とし込むことが出来るはずです。自社の価値判断基準に沿って中期ビジョンを実現していくために、財務指標はどこを目標とするのか、またその目標達成に向けてどのような施策を打っていくのか、現状の中期経営計画のブラッシュアップを図る際にも財務知識は今後必要になってきます。

財務に長けた人材は待っていても育つものではなく、計画的な育成が不可欠です。単に経理・財務業務ができるだけではなく、ファイナンス思考を持ち戦略的発想ができる人材育成へと取り組んでみてはいかがでしょうか。

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