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2025.03.14

分社化を成功させるための
具体的な手続きの流れと手法

  • グループ経営

分社化を成功させるための具体的な手続きの流れと手法

目次

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分社化の目的と意義

分社化は、企業の経営戦略や事業環境に応じて柔軟に活用できる重要な手法です。その目的は、事業の専門性向上や経営効率の向上、リスク分散、資金調達の多様化など多岐にわたります。また、分社化を通じて企業価値を高め、競争力を強化することができる点で、企業にとって大きな意義を持ちます。
一方で、分社化にはコスト増加、経営資源の分散などのリスクが伴うため、慎重な計画の作成と実行が求められます。自社の成長を長期的な視点で見据えた上で、その目的と意義を明確にし、適切な手法を選択することが必要です。

分社化とは、企業が特定の事業や部門を切り離し、独立した法人(会社)として運営する組織再編の手法を指します。これにより、分社化された事業は親会社から独立した経営体制を持つことになり、独自の意思決定や運営が可能となります。
また、分社化にはいくつかの形態があり、企業の目的や状況に応じて選択されます。主な種類は下記の4つになります。

①会社分割

企業が特定の事業を切り離し、新たな会社を設立する方法で、新設分割(新たな会社に事業を移管する方法)と吸収分割(既存の他社に事業を移管する方法)の2つの種類があります。

②スピンオフ

親会社が特定の事業を分社化し、その新会社の株式を既存の株主に分配する方法で、親会社と分社化された会社は、資本関係がなくなり、完全に独立した存在となります。

③スピンアウト

親会社が特定の事業を分社化し、その新会社の株式を売却する方法で、売却先は、他の企業や投資家である場合が多く、親会社は分社化した会社との関係を解消します。

④カーブアウト

親会社が特定の事業を分社化し、その新会社の株式の一部を市場に公開(上場)する方法で、親会社は新会社の株式を一部保有し続けるため、資本関係が維持されます。

分社化の準備段階

分社化を成功させるためには、事前の準備が非常に重要です。多くのタスクを計画的に進める必要があります。以下に分社化の準備段階で行うべき具体的なステップを解説します。

①分社化の目的と戦略の明確化

分社化を行う前に、なぜ分社化を行うのか、その目的と戦略を明確にする必要があります。米国の経営史学者であったアルフレッド・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と言いました。企業としての戦略が決まらなければ、それに伴う組織構造も決まりません。組織は、常に戦略を達成するための設計図でなければなりません。分社化後の組織はどんな目的、戦略を達成するためのものなのかをまずは明確にすることが必要です。

②事業分析と評価

分社の対象となる事業や部門の現状を詳細に分析、評価を行います。まず、対象事業は分社化後独立採算で運営できるかを確認する必要があります。独立採算運営が確立されないと、経営責任が不明確になり、分社化後の成長が鈍化します。つまり、分社化された会社が自律的に成長し、競争力を高めるための基本条件だと言えます。そのために、対象事業の収益性、成長性、市場競争力を評価します。なお、親会社のサポートがどれほど必要なのか、関連する資産や負債はどれほどなのかもすべて洗い出します。

③ステークホルダーとのコミュニケーション

分社化は企業内外の多くのステークホルダーに影響を与えるため、事前に十分なコミュニケーションを行うことが重要です。株主や取引先、顧客への説明はもちろんですが、何より従業員への説明も丁寧に実施する必要があります。分社化を行う目的や今後のビジョンを丁寧に説明し、理解を得て、強く共感してもらう必要があります。また、分社化後の雇用条件やキャリアパスについても明確に伝え、不安を解消しておくことも重要です。本来、分社化することで、従業員がリーダーシップを発揮する機会が増え、活躍の場が広がります。正しい理解を得ることで、更なる人材育成の機会としても捉えることができます。

分社化手続きの流れ

分社化の手続きは、計画の策定から法的手続き、運営体制の構築まで多岐にわたります。いくつかのステップを計画的に進める必要があります。以下に分社化の一般的な手続きの流れを解説します。

①事業計画の策定

まずは分社化後の新会社がどのように運営されるかを具体的に示す事業計画を策定する必要があります。事業領域を定義し、誰にどのような社会価値を生み出すのかを明確にします。なお、必要な経営資源を洗い出し、調達計画を立てる必要があります。また、先ほど述べたように戦略に基づいた計画を策定し、一貫した経営を行うことが求められます。

②法的手続きの確認

分社化を実施するには、会社法や関連法規に基づく法的手続きが必要です。分社化の方法(会社分割、スピンオフ、スピンアウト、カーブアウト)を選定し、各手法に応じた法的要件を確認します。その後、「分社化計画書」を作成し、株主総会での承認を得ます。なお、分社化後の新会社が債務を引き継ぐ場合、債権者保護手続きも必要で、債権者に対して異議申し立ての機会を提供します。各方面にて理解を得たうえで、最後に法務局にて登記を実施します。

③資産・負債の分配

対象事業に関連する資産や負債を新会社に移管する必要があります。そのため、事前に資産・負債の分配計画を立てます。前述したように、分社化後の新会社が独立採算経営ができるように適切な分配を行います。分社化対象事業に関連する契約や許認可が新会社に引き継がれる必要があるかどうかも確認し、必要に応じて契約の再締結、許認可の再取得を行います。なお、資産の移管に伴う税務上の影響も考慮する必要があります。

④新会社の設立手続き

分社化の中心的なプロセスとして、新会社設立の手続きを行います。新会社の基本情報の決定後、登記手続き、税務・社会保険の手続き、銀行口座の開設を実施します。

⑤組織体制の構築

戦略に基づき、組織体制を整備します。なお、新会社の経営方針、経営理念などを作成し、経営の軸を定めることも重要です。必要に応じて、親会社からの派遣や外部からの採用を行い、経営陣の選任を行います。新会社の経営陣を中心に各部門の役割と責任を明確にし、必要な人材をピックアップします。業務プロセスの整備を行い、必要に応じて親会社からのサポート体制も整備します。

さいごに

分社化の未来と戦略の中での重要性

分社化は、変化の激しい市場環境や経営課題に企業が対応するための重要な戦略の1つです。現在の不確実性が高く、将来の予想が困難な経営環境において、柔軟かつスピードをもって対応できる体制の構築が重要であり、さらに、リスク分散、経営効率の向上、イノベーションと成長の促進など、企業には多くのことが求められています。分社化は、単なる組織再編ではなく、現代の経営課題に対応し、成長・競争力を強化するための重要な経営手法の1つです。その有効性から今後更に活用が進むことが予想されます。

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