COLUMN

2025.03.14

財務戦略はなぜ必要か?
財務戦略のポイントと
基本的な立て方を解説

  • 資本政策・財務戦略

財務戦略はなぜ必要か?財務戦略のポイントと基本的な立て方を解説

目次

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皆さんは「財務戦略」と聞いて、どのようなイメージを持たれますでしょうか?一般的なイメージでは資金の調達や運用を戦略的に行うこと、などと言われますが、具体的には企業や組織がその財務資源(資金、資産、負債など)を効果的かつ効率的に管理し、長期的な成長と安定を実現するための計画や方針を指します。財務戦略は、企業の全体的な経営戦略の一部であり、収益性、資金調達、投資、リスク管理など、財務に関連するさまざまな要素を統合的に考慮する必要があります。今回は財務戦略の重要性や、その立案の流れについて説明していきます。

財務戦略の重要性

まず初めに財務戦略が必要とされる背景についてですが、2024年6月には実質賃金の増減率がプラスに転じ、日銀の物価目標である消費者物価指数の前年比上昇率2%台が定着するなど、現在の経営環境はデフレ経済からインフレ経済への転換点を迎えています。これからのインフレ経済の環境下では企業として成長しているかどうかに加えて、その成長スピードにも目を向けられるようになります。そしてその成長スピードを実現するのが投資であり、投資を含めた財務戦略が求められているのです。
では財務戦略が弱い、もしくは無い企業にどのようなリスクが発生する恐れがあるのかというと、資金不足や過剰な負債、投資の失敗などが発生し、企業の存続が危ぶまれる可能性があります。一方で、効果的な財務戦略を実行することで、企業は安定した財務基盤を築き、成長機会を最大限に活用することができます。このように財務戦略は、企業の持続可能な成長と競争力の維持において極めて重要な戦略と考えられています。

<財務戦略が必要とされるポイント>

1. 資金の確保と効率的な活用

企業が持続的成長を遂げるためには、適切なタイミングで必要な資金を確保し、それを効率的に活用することが不可欠です。財務戦略を持つことで、以下のような課題に対応できます。
資金不足の回避:資金繰り(キャッシュフロー)が上手くいかないと成長機会を逃す可能性がある
資金の過剰確保の回避:過剰な資金を抱えると資本コストが増加し、資金の非効率な運用につながる

2.リスク管理

企業は経済環境や市場の変動、金利や為替の変動など、さまざまなリスクがあります。財務戦略を通じてこれらのリスクを特定し、適切に管理することができます。
為替リスク:海外取引がある場合、為替変動が利益に影響を与える可能性がある
金利リスク:借入金の金利が上昇すると、財務コストが増加してしまう
信用リスク:取引先の倒産や支払い遅延による損失を防ぐ必要がある

3. 成長機会の最大化

企業が新規事業や市場拡大に投資する際、限られた経営資源(ここでは資金)をどのように配分するかが重要です。財務戦略を策定することで、以下のような成長機会を最大限に活用できます。
投資の優先順位付け:どのプロジェクトや事業に資金を投入すべきかを明確にする
資本効率の向上:投資のリターンを最大化し、企業価値を高める

4.財務の健全性の維持

企業が長期的に存続し、成長を続けるためには健全な財務基盤が欠かせません。財務戦略は財務における安定性を維持するために役立ちます。
資本構成の最適化:自己資本と他人資本(借入金など)のバランスを適切に保つ
負債比率の管理:過剰な借入を避け、財務リスクを低減する

5.競争力の維持と向上

市場環境が変化する中で、競争力を維持強化し他社との差別化を図るためにも、財務戦略が大変重要です。
コスト競争力の向上:効率的な資金運用やコスト削減を通じて、競争力を高める
迅速な意思決定:財務戦略が明確であれば、資金調達や投資に関する意思決定を迅速に行うことができる

6.株主価値の最大化

企業は、株主や投資家に対してリターンを提供する責任があります。財務戦略を通じて以下のような株主価値の向上を目指します。
配当政策の明確化:株主に対する配当をどの程度行うかの計画が立てられる
企業価値の向上:収益性を高め、株価を上昇させることができる

財務戦略の立て方

財務戦略を立案していく際には次の要素を含めて考えていくことが通例です。
まずは資金調達戦略であり、これは名前のとおり資金をどのように調達するかの計画となります。具体的には銀行借入、社債発行、株式発行などがあります。資金調達コストを最小化しどのようにリスクを分散するかがポイントとなります。金利負担率などの指標が用いられます。次に投資戦略であり投資のリターンを最大化するための分析と計画を行うことです。前述のとおり成長に欠かせないのが投資(投資判断)です。成長戦略の1つとしてM&Aが当たり前になっていますが、何事も無制限に投資を行うことは当然できません。資金をどこにいくら投じるかを決定する必要がありますが、近年ROIC(Return On Invested Capital:投下資本利益率)を用いている企業が増えています。そして黒字倒産という言葉があるようにキャッシュフロー管理も怠ってはならず、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入している企業も散見されます。キャッシュマネジメントシステム(CMS)とは企業が資金(キャッシュ)の流れを効率的に管理し、最適化するためのシステムや仕組みを指します。具体的には、企業の収入(売上)や支出(経費、仕入れなど)、資金繰り、銀行口座の管理、資金移動、支払い処理などを一元的に管理するためのツールやサービスです。社長や経理担当者がエクセルで管理しているという企業もまだありますが、ガバナンスの観点からもやはりシステム化の早期導入が望まれます。そして欠かせないのがリスク管理です。ここでのリスク管理は為替変動、金利上昇、経済不況などのリスクヘッジや保険の活用などを指します。様々な要因が関係してきますが、FRB(米国連邦準備理事会)の利下げ、日銀の利上げ、また日本の貿易収支・サービス収支などの各種動向を押さえながらも、為替や金利が変わった際にどのような対策を取るのか、変わる前提での準備をしておかなければなりません。

財務戦略により持続的成長を実現

財務戦略は企業の経営を支える重要な柱であり、短期的な資金繰りから長期的な成長戦略まで幅広い視点で計画されます。経営環境や市場の変化に応じて柔軟に見直しを行い、企業のビジョンを実現するために最適な財務管理を実現することが求められます。インフレ経済への転換点を迎えた日本では、企業は「成長性×収益性」の拡大に向け投資を継続して行い、高付加価値化を図ることで需要を喚起していく必要があります。これを期に財務指標(ZROE、ROA、ROICなど)を自社に取り入れ、今回お伝えした財務戦略を立案してみてはいかがでしょうか。

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