人事コラム

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トータルリワードとは?
Z世代の定着に効果的な報酬戦略

Z世代の定着とエンゲージメント向上を実現する総合報酬戦略

トータルリワードとは、給与・賞与などの金銭的報酬と、福利厚生・成長機会・職場環境などの非金銭的報酬を統合した総合報酬戦略である。Z世代の定着やエンゲージメント向上に有効な人事施策として注目されている。

給与だけでは人は動かない。福利厚生も含めた非金銭的報酬を設計し、Z世代が「ここで働き続けたい」と感じられる環境を整えることが、企業の持続的成長につながる。

トータルリワードの定義と注目される背景

トータルリワードの定義と注目される背景

トータルリワードとは、企業が社員に提供するすべての報酬・処遇を包括的に捉えた考え方である。従来の「報酬」というと、給与や賞与といった金銭的な対価を指すことが一般的であった。しかしトータルリワードは、金銭面にだけではなく、福利厚生、キャリア開発の機会、職場環境、ワークライフバランス、企業文化など、社員が仕事を通じて得られるすべての価値を「報酬」として捉える。
この概念が注目される背景には、労働市場の変化が挙げられる。終身雇用が崩れ、転職が一般化した現代において、給与水準だけで人材を惹きつけ・定着させることは困難である。特にZ世代(1996年以降生まれ)は、給与の高さよりも「働く意味」「成長できる環境」「ライフスタイルとの調和」を重視する傾向が強い。
また、人的資本経営の観点からも、トータルリワードは欠かせない。エンゲージメントの向上、離職率の低減、優秀人材の獲得・定着において、金銭的報酬では非金銭的報酬にも目を向けていくことが重要となる。

「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」のバランスの重要性

「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」のバランスの重要性

トータルリワードは大きく「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」の2つに分けられる。それぞれの特性を正しく理解し、バランスよく設計することが、効果的な報酬戦略の第一歩である。
金銭的報酬とは、給与・賞与・インセンティブ・各種手当など、直接金銭として社員に支払われる報酬の総称であり生活の安定に直結するため、社員の基本的な満足度に大きく影響する。
一方で、企業の財務状況を踏まえると給与のみを引き上げ続けることには限界があり、長期的な定着につながりにくいという側面もある。いわば金銭的報酬は一時的な不満の解消には繋がるものの、持続性には限界がある。

非金銭的報酬とは、金銭的報酬を除く社員が仕事から得る価値を指す。柔軟な働き方(テレワーク・フレックス制度・時差出勤・時間単位の有給)、キャリア開発支援(研修制度・社内公募・社内FA)、健康支援(メンタルヘルス対応、ストレスチェック)、承認・表彰制度などがその代表例である。
両者をバランスよく組み合わせ、社員が「ここで働き続けたい」と感じられる報酬体系を設計することが、今後の人材戦略における肝になるといえる。

トータルリワードを構成する6つの要素とZ世代に対するアプローチ

トータルリワードを構成する6つの要素とZ世代に対するアプローチ

トータルリワードは、以下の6つの要素に整理して捉えることができる。

 

第1の要素:「基本給・賞与」

社員の生活を支える報酬の根幹であり、市場水準との比較・分析を踏まえた競争力ある設計が求められる。給与水準は採用力にも直結するため、人材獲得の観点からも定期的な見直しが不可欠である。

 

第2の要素:「福利厚生」

法定福利に加え、企業が独自に提供する住宅手当・育児介護支援・健康支援などを指す。社員の生活の質(QOL)を支える基盤として機能する。Z世代に対しては、自己研鑽や趣味・体験への支援など、個人の生き方に寄り添った福利厚生が響きやすい。

 

第3の要素:「働き方の柔軟性」

テレワーク・フレックスタイム制・短時間勤務など、多様なライフスタイルに対応できる働き方の選択肢を指す。Z世代にとって働き方の柔軟性とは、ワークライフバランスの問題にとどまらず、「会社に合わせて働くのではなく、自分の働きやすい環境を選ぶ」という価値観そのものの表れである。

 

第4の要素:「成長・キャリア開発の機会」

研修・教育制度、社内公募、社内FA、メンタリング、キャリア面談など、社員の成長を支援する機会全般を指す。「この会社にいると成長できる」という実感がZ世代の定着を左右する最大の要因の一つであり、入社後に成長機会が感じられなければ早期離職につながりやすい。

 

第5の要素:「承認・評価」

成果や行動を正当に評価し、認める仕組みを指す。SNSネイティブであるZ世代は、日常的な「いいね」の感覚から、自分の取り組みや発信への反応に敏感である。年1回の評価面談よりも、日常的な小さな承認の積み重ねがモチベーション維持に効果的である。

 

第6の要素:「組織文化・職場環境」

心理的安全性、経営理念への共感、良好な人間関係、ウェルビーイングへの配慮など、社員が「ここで働き続けたい」と感じられる職場の土台を指す。パーパスや社会的意義を重視するZ世代にとって、組織が何を大切にしているかは報酬と同等以上の意味を持つ。

これら6つの要素はそれぞれ独立したものではなく、相互に連動している。どれか一つが突出していても効果は限定的であり、全体をバランスよく設計・可視化することがトータルリワード戦略の本質である。

エンゲージメントとトータルリワードの相関関係

エンゲージメントとトータルリワードの相関関係

トータルリワードはエンゲージメントに直接影響を与える。「公正に評価されている」「成長できている」「ここで働く意味がある」という実感は、いずれもトータルリワードの各要素と深く結びついている。給与・賞与への納得感は公平感と帰属意識の向上を促し、福利厚生の充実は安心感とロイヤリティの醸成につながる。成長機会の提供は内発的な動機づけを強化し、承認・表彰の仕組みは自己効力感ややりがいを高める。これらが有機的に連動することで、初めてエンゲージメントの持続的な向上が実現するのである。
エンゲージメント向上施策として「サーベイの実施」、「1on1の導入」、「2on1の導入」などが注目されているが、それらはあくまでも手段である。根本的には、エンゲージメントに影響を与える報酬・環境・成長機会を体系的に整えることが重要であり、トータルリワードの整備なしには、どんな施策も一時的な対症療法にとどまる可能性があることを忘れてはならない。
トータルリワードは、給与だけでは語れない「働く価値」を体系的に設計・提供する戦略である。重要なのは、他社の制度をそのまま取り入れることではなく、「自社はどの世代に・何で報いるか」を起点に設計することである。タナベコンサルティングでは、Z世代には承認・成長・体験価値を軸とした報酬設計を行うなど、自社の人材戦略と連動したトータルリワードの設計を推奨している。

この課題を解決したコンサルタント

又村 椿

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
アソシエイト

又村 椿

「人と組織の力で、未来を切り拓く挑戦に伴走する」を信条に、人事制度の再構築支援などHR領域に関わるコンサルティングを行っている。VUCA時代における持続的な成長を支えるため、クライアントに寄り添った価値提供行う。

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