物流業界におけるDX化の課題とは?

コラム
マネジメントDX 生産性向上 データ活用企業成長業務効率

「なぜ物流業のIT化が遅れているのか」のとおり、物流業界においては「物流の2024年問題」もあって人手不足の深刻化やデジタル化が立ち遅れていることから、他業界よりも生産性が低いといった問題があります。しかし、「物流は経済の血液」という言葉があるように、物流は全産業の基盤であり社会にとってなくてはならないものです。だからこそ「ピンチはチャンス」と捉え、今までの考え方を大きく変革し生産性を飛躍的に高め新しいビジネスモデルを築いていくことで、他社には真似できない貢献価値を磨いていきましょう。

1.総合物流施策大綱に見る、物流DX推進のポイント

Bまずは日本における物流の政策について確認しておきましょう。国土交通省が2021年6月に閣議決定した「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)(P13)」によれば、今後の物流が目指すべき方向性として次の3つの観点を示しています。

(1)物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
(2)労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
(3)強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)

これらに共通して言えることは、自社だけの取り組みに留まらず必要に応じて同業他社や異業種とも連携しながら、より広い視野・広い領域での取り組みをしていることです。今までは「サプライチェーン」という言葉があるように、決まった仕入先・取引先とのモノの流れが中心でしたが、これからは「サプライウェブ」、つまり今まで取引がなかったところとの協業によって、より新しい価値を生み出していくことが肝要です。そのためにも、自社だけで改善しようと考えず、業界全体・社会全体の動きを捉え、流れに取り残されないことが重要です。次項からは上記の3つの観点に沿いながら、実際にどのようなDX推進をしたらよいか考えていきましょう。

2.観点① 物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した効率化

革新を行うためには、まず既存業務を効率化する必要があります。自社でできる効率化として、コラム「なぜ物流業のIT化が遅れているのか」では、物流業DX Cloud 経営プラットフォームを導入することによるバックオフィス業務の効率化と、データの利活用によるスピード経営について紹介していますが、これだけでは限界があります。なぜなら、取引先の事情で紙の伝票を廃止できないケースや、取引先に応じた条件や書式に合わせる必要があるからです。
そこで必要になるのが、効率化を業界全体に広げることです。場合によっては競合他社と手を組むこともあるかもしれませんが、業界全体でルールを統一することでよりいっそうの効率化が見込まれます。
例えば、F-LINE株式会社は、味の素物流株式会社、カゴメ物流サービス株式会社、ハウス物流サービス株式会社の物流事業を統合して誕生した企業です。同社において、F-LINE統一伝票というものを使用することで、納品書の電子化はもちろんのこと、納品書の企画を統一化することで、日常業務における納品書の仕分け作業などを効率化することに寄与しています。
(出典:F-LINE株式会社「当社の取り組み事例 持続可能な食品物流の構築にむけた取り組み」

もちろんこれは自分たちだけでできることではなく、物流事業者・メーカー・取引先など上流から下流まで一貫した合意が必要です。こうした業界の潮流を確実にキャッチし共通化できるところは共通化する、個別の持ち味を出すべきところは出す、といったメリハリをつけた経営が今後求められるでしょう。

3.観点② 労働力不足対策と物流構造改革の推進

物流の2024年問題もあり労働力不足がいっそう深刻になるなか、前述のような既存業務の効率化だけでは限界があります。そもそもの日本の物流に関する商慣習を見直すなど物流業界の構造を変えることが不可欠です。
例として、「食品の3分の1ルール」という商慣習があります。これは食品が流通する過程において、製造日から賞味期限までの期間を製造者・販売者・消費者で3等分するというものです。例えば、賞味期限6ヵ月のものであれば、製造者(メーカーおよび卸)は、製造日から2ヵ月以内に販売者(小売店)に納入しなければロスになってしまいます。そのため、ロスを回避すべく製造したものを即出荷するなど、倉庫や物流にしわ寄せがいく構図になりやすい傾向があります。
2023年3月にスーパーマーケットチェーン4社(サミット株式会社、株式会社マルエツ、株式会社ヤオコー、株式会社ライフコーポレーション)が発足した「首都圏SM物流研究会」では、方針の一つに「納品期限の緩和=2分の1ルールの採用」を掲げ業界をあげて取り組んでいます。
(出典:首都圏SM物流研究会『「首都圏SM物流研究会」の取り組み』2023年9月)

こうした動きが広まりを見せていることから、物流部門としても動きをキャッチし積極的な意見具申や参画をすることが求められます。また物流部門で使用する基幹システムについても、制度変更によりオペレーションが変わる、または新旧が併存することも考えられるため、自社だけでなく他社も含めた業界の「全体最適」の視点から業務をデザインし、変革の好機を逃さないことが必要です。また、相対契約と呼ばれる企業間で個々に取引内容を決めることが多いのも物流業の特徴の一つです。繁忙期などスポット的に契約する際に手続きが煩雑になるなど、非効率業務になっています。これを逆手に取り、業務そのものを外注するという考え方も出てきています。
2016年に創業した株式会社soucoは、倉庫を借りたい人と貸したい人をマッチングするサービスを提供しています。自社の倉庫を抱えている会社は、自社の荷物だけでは季節による変動が大きい場合や容量をオーバーする場合はスポットで倉庫を探します。一方で、容量に満たない場合は空きを埋めるべく自社以外の仕事を取ってくるという動きをします。同社はこうして「借りたい・貸したい」のマッチングを一手に引き受けることで、マッチングの機会を増やし、結果として物流業界全体の効率化につなげています。
(出典:株式会社souco

このような動きがあるなか、自社の戦略を見直すことも必要になると考えられます。今までの「自前主義」が絶対ではない時代になっているなか、自社で本当にコントロールすべきことは何か、自社の真の強みは何かを再定義し、人・モノ・カネのリソースを再配分することが変革に向けた第一歩と言えるでしょう。

4.観点③ 強靭で持続可能な物流ネットワークの構築

DX(Digital Transformation)のほかに、同じようにXが付く言葉として、SX(Sustainability Transformation)やGX(Green Transformation)があります。企業の成長だけでなく社会の課題解決の両方が必要な時代になっており、物流業も例外ではありません。生産性の向上と物流の安定化という一見すると相反することの両方を求められています。
例えば、モーダルシフトという言葉が広まりつつあり、少し前の事例ですが、アサヒビール株式会社とキリンビール株式会社が、石川県金沢市に共同配送センターを開設し鉄道輸送を組み合わせることで、環境負荷を低減しトラック不足の問題も解決するという取り組みを実現しました。
(出典:アサヒビール株式会社 ニュースリリース「金沢に共同配送センターを開設、鉄道コンテナ路線を共同利用」2016年7月27日

これに関連した近年の動きとして、2023年6月、日本通運株式会社はビール会社の物流事業会社4社(アサヒロジ株式会社、キリングループロジスティクス株式会社、サッポログループ物流株式会社、サントリーロジスティクス株式会社)と「物流課題解決に向けた協業体制強化による物流安定化に関する協定書」を締結しました。自然災害時の鉄道の不通時において、代替輸送や別ルートの輸送などのバックアップを迅速に実施するというものです。同社は気象予報会社とも連携し、自然災害が予測される際は早期にトラックに転換できるようにすることなども計画しています。
(出典:日本通運株式会社「ニュースリリース 日本通運とビール物流事業会社4社による『物流課題解決に向けた協業体制強化による物流安定化に関する協定書』を締結」2023年6月30日」

まさに、DXによってデータを迅速に蓄積、活用できるようにし、そこから物流を止めない、経済を止めないというSXを実現しています。さらにトラック輸送と鉄道輸送をすることでGXを実現するという物流の新しいステージに入ったと言えるでしょう。

5.まとめ 自社で物流DXを進めるには

自社で物流DXを進めるには、まずはデジタル技術を活用して業務の効率化をすることが重要です。加えて、自社に留まらず幅広く手を組みながら「全体最適の視点での効率化が自社への効率化にもつながる」の観点で進めるべきと言えます。また、物流は様々な業種になくてはならないことを活かせば、どのようなビジネスモデルにも進化することができると言っても過言ではありません。自社の強みは何か、それをいつまでにどこで強みを発揮するのかというDX・SX・GXのビジョンを策定し、企業価値を高めるべく前進していきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
マネジメントDX チーフマネジャー
田崎 修平

大手酒造メーカーで17年間、工場での製造管理・業務効率化、本社での生産管理・原価管理・事業計画策定など幅広い業務に従事し、当社に入社。DXを取り入れながら、現場やバックオフィスの生産性向上を手掛けている。企業の最前線で働く人の気持ちに寄り添い、現場主義で粘り強く課題と向き合い、クライアントとともに解決に当たるコンサルティングが支持されている。

田崎 修平
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