人事コラム
給与テーブルとは?
給与テーブル導入の目的から設計のポイントを解説
給与テーブルは、等級や評価、勤続年数に基づき給与を決定し、透明性と公平性を確保する基準表です。
情報の共有化が要求される今、
給与テーブル開示の必要性が高まっています。
給与テーブルとは?導入の目的と役割
給与テーブルとは、従業員の基本給を算出するための基準となる額表を指します。別名、賃金テーブルや賃金表とも呼ばれ、等級(グレード)と号俸などを軸に構成されます。このテーブルを設定することの最大の意義は、明確なロジックに基づいて基本給を決定できる点にあります。これにより、「誰が」「なぜ」その給与を受け取るのかという根拠が明確になり、公正公平な処遇の実現に大きく近づきます。特に、持続的な組織経営を目指す企業にとって、個人の感覚や恣意性によらない給与算出の仕組み化は、組織の信頼性を高める上で非常に重要な取り組みとなります。
また、現代の企業経営においては、これまで以上に情報の共有化が求められるようになりました。
給与テーブルを従業員に公開し、公明正大に日々の頑張りに報いることが、社員(従業員)のエンゲージメント向上の足掛かりとなるでしょう。
その給与テーブル導入の主な目的と役割は下記のとおりです。
①透明性の確保と納得感の醸成
給与決定基準を明確にすることで、公正な評価が保証され、従業員は自分の努力がどのように報酬に結びつくかを理解できます。この透明性が処遇に対する納得感を生み出します。
②モチベーションと生産性の向上
期中の評価結果が具体的に給与に反映される仕組みがあることで、従業員は次の目標に向けて努力する動機付けを得やすくなります。この成果と報酬の連動性が、社員のモチベーションと生産性の向上を促します。
③人材管理の効率化と標準化
給与決定までのプロセスが標準化・仕組み化されるため、人事担当者の判断負荷が軽減し、給与管理コストを軽減できます。また、人件費のシミュレーションや予算管理も容易になります。
④法的リスクの軽減と労使間の信頼構築
公平かつ客観的な給与体系は、労働法規に準拠しやすくなり、給与を巡る労働争議のリスクを低減します。これは企業と従業員の間で、処遇に対する信頼関係を築く基盤となります。
総じて、給与テーブルは単なる給与計算のツールではなく、企業の持続的成長と従業員満足度の向上に寄与する、戦略的な人事マネジメントの重要ツールであるといえます。
給与テーブルの種類
給与テーブルの種類には、従来よく用いられてきた号俸表に加えて、代表的な3パターン(段階号俸表、ゾーン型給与表、複数賃率表)があります。
いずれの仕組みにおいても、一定の基準に基づいて給与を決定するため、公正な給与の算定が可能となり、給与テーブルを従業員の公開することで、給与に対する納得感を醸成することが可能となります。
■従来の号俸表
等級(横軸)と号俸(縦軸)で構成される額表で、等級/号俸別に設定された金額により給与を算定する仕組みとなっています。
号俸表は1号俸が下限額を示し、毎期1号俸ずつ上昇するのに合わせて金額も上昇していきます。
また、1号俸当たりの昇給金額をピッチと呼びます。一般的にピッチは等級ごとに設定され、各等級の昇給額を設定することができます。
今日では毎期一定の昇給を行う号俸表を採用する企業は少なくなりましたが、給与算定の仕組みはあらゆる給与テーブルに応用されており、設計に際しては必ず押さえておく必要がある基本的な形であるといえます。
1. 段階号俸表
段階号俸表は、号俸表に毎期の評価結果を反映した給与テーブルです。号俸表では、毎年1号俸ずつ昇給するのに対し、段階号俸表は評価結果毎に設定された昇給号俸数に応じて、毎期の昇給額が変動します。毎期、昇給号俸(昇給額)が積み上げ式で算定されるため、一回の評価結果がその後の基本給に影響することも大きな特徴の一つといえるでしょう。
段階号俸表では評価ごとに昇給号俸数(昇給額)が設定されているため、従業員のパフォーマンスによって、金額に差が出ます。そのため、上限額の設定には注意する必要があります。上限額を低く設定しすぎてしまうと、ハイパフォーマーが上限額に達してしまうため昇給が止まってしまいます。
また、上限額を高く設定しすぎてしまうと人件費の増大につながってしまいます。適切な上限号俸数(上限額)を設定するためには、標準滞留年数をもとに昇給スピードをシミュレーションする必要があります。また、昇格基準との連動を測ることで、予期せぬ昇給停止を防ぐことができます。
2. ゾーン型給与表
ゾーン型給与表とは、号俸表において等級ごとに基本給範囲(ゾーン)を設定し、それぞれのゾーンに評価ごと昇給号俸数を設定した給与テーブルを指します。つまり、段階号俸表の昇給システムをより詳細に作りこんだのが、ゾーン型給与表と言い換えることができるでしょう。一般的には、等級内の高い基本給範囲ほど、評価ごとの昇給号俸数を低く設定し、滞留すればするほど昇給率が低くなる設計をします。それにより、同一等級に滞留すればするほど昇給率が低くなるため、昇格への意欲を高める効果が期待できます。ゾーン型給与表を適切に運用するためには、適正な昇格条件の設定と厳正な運用が欠かせない仕組みとなります。
3. 複数賃率表
複数賃率表とは、号俸表を基準として、一つの号俸に複数の基準額のランクを設定するものです。毎期、1号俸ずつ昇号し、評価結果に基づいて号俸に設定された金額が基本給となる仕組みです。複数賃率表の最大の特徴は、前年の評価結果が基本給の算出に影響しない洗い替え方式をとっている点です。そのためこの給与テーブルの下では、従業員は毎期新たな気持ちでの職務遂行に繋がりやすいといえます。
給与テーブルの具体的な作り方と設計手順
給与テーブルの設計は、事業戦略と人事戦略を具体的に反映させる重要なプロセスです。以下の5つのステップを戦略的に踏むことで、論理的かつ公平なテーブルを作成し、組織の成長を促進する設計を目指します。
1. 土台となる等級制度と評価制度の確立
給与テーブルは単体で機能するのではなく、企業の人事制度全体に組み込まれて効果を発揮します。まず、報酬の根拠となる人事制度を確立することが必要です。具体的には、従業員をどのような基準で区分するかを定義し、等級を決定します。これが給与テーブルの横軸となります。同時に、従業員のパフォーマンスや行動が昇給・昇格にどう結びつくかを示す評価基準も明確に整備します。
2. 基本となる構造の決定
等級制度を基に、基本給の変動を決めるフレームワークを設計します。各等級内で給与がどのように上昇していくかを示す基準として、号俸を設定します。号俸は、一般的に評価結果や勤続年数に応じて上昇する基準となります。さらに、1号俸が上がるごとに増額する具体的な金額である昇給額を、等級ごとに定義します。上位等級になるほど、貢献度を反映しピッチ幅を大きく設定するなどの検討が必要です。
3. 適正な金額レンジと基準額の設定
社外の競争力と社内の公平性を両立させるため、具体的な金額を設定します。競合他社や労働市場の給与水準を調査し、自社の採用競争力を維持できるレンジを策定する、外部水準のベンチマークが不可欠です。次に、等級ごとの最低額と最高額を設定します。特に上限額が低すぎとハイパフォーマーのモチベーション低下につながるため、昇給停止のタイミングを考慮して慎重に決定する必要があります。
4. 人件費のシミュレーションと予算調整
設計したテーブルを実際に適用した場合の財務的な影響を検証し、予算と整合させます。新しいテーブルを全従業員に適用した場合の人件費総額、および将来にわたる人件費の推移を詳細に予測する財政的影響の予測を行います。予測結果が企業の人件費予算枠を超過している場合は、ピッチ幅や等級のレンジを見直し、持続可能な設計に最適化する調整が必要です。
5. 運用ルールの確定と社内への周知徹底
給与テーブルを有効に機能させるためには、ルールを明確にし、従業員に正しく理解してもらうことが不可欠です。評価制度と連動させ、「評価Sの場合は4号俸、評価Cの場合は1号俸」のように、評価ランクごとの昇号数を具体的に決定する昇給ルールの具体化を行います。最後に、従業員に対し、給与テーブル導入の背景、目的、および自分の給与が決定されるロジックを丁寧に説明し、処遇に対する納得感を高める情報公開と説明責任を果たします。
さいごに
給与テーブルは公正公平な処遇、ひいては自律的な組織経営を実現するうえで、非常に重要なツールとなります。だからこそ、事業戦略・人事戦略に基づき、設計することが必要不可欠となります。「事業戦略上重要性が高い人材」、「自社の10年後の人材ポートフォリオ」を念頭に戦略的に金額を組み立てることが効果的な給与テーブル設計に繋がります。また、上記のように、給与テーブルの一つ一つに特徴があり、それぞれの導入におけるメリット・デメリットを正しく捉えて設計することで、給与テーブルをより効果的に作用させることができます。
自社の給与テーブルが効果的に作用しているか、今一度検討してみてはいかがでしょうか。