後継経営体制の作り方とは?
手順・成功事例まで徹底解説
- 事業承継
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多くの企業が抱える事業承継の最大の課題は後継者不在ですが、後継者が決まっていても安心できません。
後継者が社内で求心力を持ち、会社を成長させられる体制が整って初めて「事業承継に向けた備え」は整います。
一口に後継経営体制といっても、後継者のスキルや資本政策、その会社固有の課題など、様々な要素を検討しなければなりません。
これらは独立して行うものでもなければ、機械的に型にはめて行うものでもなく、会社の状況を踏まえたストーリーの設計が必要です。
今回は後継者とそれを支える経営幹部の育成を一貫して支援した事例をもとに、後継経営体制構築における課題と解決策のポイントを紹介します。
金属製品商社A社の後継経営体制構築の事例
背景
A社は金属製品を扱う創業90周年の商社で、創業者一族によるオーナー経営体制を敷いています。
経営陣は67歳の社長、同世代の役員3名、後継者である35歳の息子で構成されていました。
社長は、70歳で息子に社長を引継ぐ予定でしたが、次のような課題感を抱えていました。
①後継者の基本的な業務スキルや計数知識が不足しており、現状では経営を任せられない。
②社内での立ち位置を築けておらず、承継後の求心力に不安がある。
③次世代の経営幹部の視座が低く、部門最適に陥っている。
これらの課題を受け、後継経営体制の構築に向けたストーリーを描き、全社を巻き込みながら時間をかけて体制を整備し、社内での認知を高めていく重要性を共有しました。
後継経営体制構築に向けたストーリー
どのようなストーリーを描くべきか、というテーマに対し弊社は「後継経営体制の構築では、影響範囲を段階的に広げる視点で検討すべき」と提言しました。
前述の状況から、いきなり後継者を中心とした社内プロジェクトを組成しても、うまくいかないことは自明でした。そのため、まずは後継者個人の育成と、社内での成功体験を積み上げることによる立場づくりから始めるべきだとしました。その後に次世代幹部メンバー、最終的には全社を巻き込むという手順を踏むことで、スムーズに事業承継が進められるようスケジュールを組みました。【図1】
この提案には社長も共感し、後継者育成研修の開始によるスキル向上と、90周年記念プロジェクトリーダーへの任命による社内での立場づくりに取り組むことが決まりました。
【図1】
後継者育成に向けた支援内容と成果
今回の後継体制構築においては、以下の要素が必要だと提言し、支援しました。
①後継者が自社を理解し、自分の言葉で会社を語れるようになること。
②後継者が経営的視座を持って物事を考えられるようになること。
③現場から業績を上げるポイントを捉えられるようになること。
④リーダーとしての基本素養を身につけること。
支援内容としては【図2】に示した全12回、1年間のカリキュラムです。1日研修を通して、リーダーとしてのヒューマンスキルや経営スキル、計数スキルを学び、研修の合間にも学びを現場で実践・反復することで、成長の実感と自己変革につなげました。
また隔回で自社の部門長メンバーとの面談を設け、次世代幹部候補とのつながりを強めるとともに、現在の後継経営体制の構築に向けた取り組みへの理解を得ることができました。
さらに後継者育成と並行して社内の周年記念プロジェクトの進捗管理も行うことで、プロジェクトマネジメント力の向上を実践的に図ることができました。
この取り組みにより、後継者に一定の経営スキルが備わり会社経営に対する理解が深まりました。 同時に、周年記念プロジェクトも成功を収め、社内における一定の立ち位置を築くことができました。
| 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 基本テーマ | 理念体系の理解 | リーダーの役割と リーダーシップ |
チーム活性化 | PDCAサイクル | タスクマネジメント | プロフィットマネジメント |
| 計数 | 会社の仕組み | 損益計算書 | 貸借対照表 | キャッシュフロー | 財務三表の繋がり | 損益分岐点 |
| ワーク | 後継者としての自己分析 | リーダーとしての 役割・姿勢・能力 |
チームパワーを発揮する リーダーシップのポイント |
PDCAシート作成 | 業務棚卸と ワークフロー分析 |
職場計数から見る 問題点の発見 |
| 社内面談 | 社長面談 | ― | ― | 部門長面談 | ― | ― |
| 7回 | 8回 | 9回 | 10回 | 11回 | 12回 | |
| 基本テーマ | タイムマネジメント | 外部環境を捉える | 内部環境を知る | 経営システム | 財務を知る | ビジョンを描く |
| 計数 | 経営指標① | 経営指標② | 資金繰り表 | 計数まとめ | 経営分析 | ― |
| ワーク | チーム活性化 | 外部環境分析 | 内部環境分析 | 組織構造・ 経営システム分析 |
全社現状分析 | 後継者としての 未来プラン |
| 社内面談 | 部門長面談 | 部門長面談 | ― | ― | 部門長面談 | ― |
【図2】
次世代メンバーによる中期経営計画策定支援と成果
後継経営体制構築の次のステップは、後継者個人ではなく次世代の経営メンバーを巻き込んだ取り組みです。後継者育成の支援に続き、弊社にて支援をさせていただきました。
具体的には後継者と次世代経営幹部候補4名による中期経営計画策定です。弊社が主導するのではなく、メンバー自らが全社視点を持ち、会社の成長に向けた戦略を検討できるようサポートしました。
ここでのポイントは以下の3点です。
①部門視点ではなく全社視点で会社の成長戦略を検討する。
②外部・内部環境を捉えることで、自社の現状について共通認識を持つ。
③メンバー自ら中期経営計画策定に取り組むことで、実効性の高い計画を策定する。
この取り組みにより、次世代経営メンバーが後継者を中心に計画を推進できるようになりました。その結果、後継経営体制の構築と育成を、単なる組織図上の設計や座学にとどめず、実践の中で進めることができました。
また計画の遂行により、全社での後継経営体制の認知が進むことが期待できます。
今後はメンバーが作成した中期経営計画を実行し、後継経営体制への移譲を進めていく予定です。
事例からの学びのポイント
今回紹介したA社の事例から学ぶポイントを以下に整理しました。
①自社の後継者や次世代幹部候補の状況を踏まえ、適切なストーリーを描く。
②目的を経営体制の構築そのものではなく、経営体制の移譲後の会社の成長に置く。
③全社を巻き込むためのアウトプットの場を設ける。(本事例では周年記念プロジェクトと中期経営計画の実行)
A社では、周年記念プロジェクトと中期経営計画の策定の時期が重なっていたため、このようなストーリーのもと、後継経営体制構築を図ることができました。
しかし、他の企業で同じ状況が起こるとは限りません。
その会社に合った最適なストーリーを描き、着実に実行するためにも、事業承継は場当たり的に考えるのではなく、長期的な視点から最重要課題として捉え、前もって準備をすることが重要です。
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