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2025.11.17

PBR向上の意義とPERとの違いを解説

  • 企業価値向上

PBR向上の意義とPERとの違いを解説

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企業経営において、財務指標は経営者にとって事業運営の方向性を示す重要な羅針盤です。株式市場での評価を意識する企業にとって、PBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)は企業価値を測る上で欠かせない指標となります。これらの指標が具体的に何を意味し、どのように活用すべきか、正確に理解している経営者は意外にも少ないのではないでしょうか。
本コラムでは、PBRとPERの基本的な定義とその意義を解説し、両者の違いを明確にした上で、特に中堅・中小企業がPBRの向上を目指して経営を行う意義について考察します。また、上場を目指す企業がこれらの指標をどのように活用すべきかについても触れ、企業価値向上に向けた具体的なヒントをお届けします。

PBR(Price Book-value Ratio)とは

PBR(Price Book-value Ratio)は、「株価純資産倍率」のことであり、企業の株価がその純資産に対してどれだけの倍率で評価されているかを示す指標です。計算式は株価÷1株当たり純資産で算出します。純資産とは、企業の総資産から負債を差し引いたもので、企業の「解散価値」を表します。PBRが1倍を下回る場合、株価が純資産を下回っている(解散価値を下回る)ことを意味し、株式市場では投資家から「割安」と見なされます。1倍を超える場合は、純資産以上の価値(解散価値を上回る)が市場で評価されていることを表します。一般的に、PBRは高い方が良いとされています。PBRは、企業の財務的な健全性や資産価値を評価する上で重要な指標です。特に、資産を多く保有する企業や、安定した事業基盤を持つ企業にとっては、PBRが高いことが市場からの信頼を示す一つの指標となります。また、PBRは株価が過小評価されているかどうかを判断する材料としても活用されています。業歴が長く資産を多く保有している企業や、毎期着実に利益を積み上げている企業は、PBRが高くなりやすい傾向にあります。一方、PBRが低い企業が、必ずしも「悪い」・「割安」とは限りません。業績が悪化している企業や、将来性が乏しいと見なされている企業の場合、PBRが低くても投資対象としての魅力は低いことがあります。PBRが高いから良い、PBRが低いから悪いとは、一概には言えず、他の指標と組み合わせて総合的に判断することが重要です。

PER(Price to Earnings Ratio)とは

PBRと比較対象される指標にPER(Price to Earnings Ratio)があります。PERは、「株価収益率」のことであり、企業の株価がその収益力に対してどれだけの倍率で評価されているかを示す指標です。計算式は株価 ÷ 1株当たり利益で算出します。PERは、投資家がその企業の1株当たりの利益を得るために、何倍の価格を支払っているかを示します。例えば、PERが10倍の場合、投資家は1円の利益を得るために10円を支払っていることになります。PERは、企業の収益力や成長性を評価する上で重要な指標です。一般的にPERが高い企業は成長期待が高いとされており、逆にPERが低い企業は成長期待が低いと見なされることが多いです。PERが高いからといって必ずしも良いとは限りません。上場企業の場合、株価は決算値などの過去実績だけではなく、その企業の将来的な成長期待も盛り込まれ、総合的に現段階の価値として株価が形成されています。例えば、昨今ではテクノロジー系の企業や、電力需要対応に貢献する企業、AI発展に資する企業などでは、過剰な期待が株価に織り込まれすぎているリスクがあります。過剰な期待が株価に織り込まれ、株価が高騰していた場合、実際の業績が期待に届かないと株価が急落するリスクがあります。また、PERが低い場合でも、業績が悪化している企業や、将来性が乏しいと見なされている企業の場合は注意が必要です。

PBR(Price Book-value Ratio)とPER(Price to Earnings Ratio)の違い

PBRとPERはどちらも企業価値を評価するための指標ですが、その評価対象や意味合いには明確な違いがあります。
評価対象の違いは、PBRは企業の「純資産」に焦点を当てた指標であり、企業が持つ資産の価値と株価を比較します。一方、PERは企業の「収益力」に焦点を当てた指標であり、企業がどれだけ利益を生み出しているかを株価と比較します。
指標の意味合いの違いとして、PBRは、企業の財務的な健全性や資産価値を評価する指標として用いられます。PERは企業の収益力や成長性を評価する指標として用いられます。そのため、PBRは安定した事業基盤を持つ企業において良好な数値が算出され、PERは成長性が期待される企業において高い数値が出る特性があります。
投資家の視点で考えると、投資家はPBRを通じて企業の「安全性」を確認し、PERを通じて企業の「成長性」を評価します。PBRとPER、これらの指標を組み合わせて、「安全性」と「成長性」を総合的に判断することで、企業のリスクとリターンをバランス良く評価することが可能となります。

中堅・中小企業がPBRの指標向上を目指して企業経営を行う意義

中堅・中小企業にとって、PBRとPERの向上は企業価値の向上を意味します。PBRが高い企業は、財務的な健全性や資産価値が市場から評価されていることを示し、PERが高い企業は収益力や成長性が期待されていることを意味します。安定性を示すPBR、成長性を示すPER、両者の指標が向上することで、金融機関や株主からの信頼を得やすくなり、資金調達の円滑化や株価の上昇といったメリットが期待できます。金利上昇局面において、金融機関からの評価を高めることは、有利な調達金利の獲得に繋がります。一方、これらの指標を向上させるためには、財務基盤の強化や収益力の向上といった具体的かつ継続的な取り組みが必要です。利益の内部留保を増やすことで純資産を増加させ、新規事業の開拓やコスト削減、効率的な資本運用なども重要な施策となります。上場企業においては、未来の成長に向けてどのような種まきを行っているのかが投資家から問われる局面が増えています。結果として、ただ安定性を向上させるだけではなく、未来の利益獲得に向けた動きを総合的に問われる状態になっています。上場企業の動きを受け、PBRとPERをともに向上させていく双方向の取り組みが、中堅・中小企業の経営者には求められてきています。
その意味において、PBRとPERは、企業価値を評価する上で欠かせない指標です。特に、中堅・中小企業がこれらの指標に真摯に向き合い、利害関係者に適切に共有しながら経営を行うことで、企業価値の向上や株主からの信頼獲得につながります。上場を目指す企業にとっては、これらの指標を活用した経営戦略が成功の鍵となります。本コラムが、企業価値向上を目指す経営者の皆様にとって一助となれば幸いです。

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