COLUMN

2025.07.03

企業経営に必須の内部統制:
その重要性と6つの要素を解説

  • コーポレートガバナンス

企業経営に必須の内部統制:その重要性と6つの要素を解説

目次

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現代の企業経営において、内部統制は欠かせない要素となっています。内部統制とは、企業がその目的を達成するために設計・運用する仕組みであり、法令遵守、リスク管理、業務の効率化、財務報告の信頼性確保などを実現するための基盤です。
本コラムでは、内部統制が求められる背景やその重要性、さらに内部統制を構成する6つの基本要素を整理し、企業における内部統制の役割を明らかにします。

内部統制が求められる背景

内部統制が企業に求められる背景には、社会的な変化や法規制の強化、企業の責任範囲の拡大などが挙げられます。特に、以下の3つの要因が内部統制の必要性を高めています。

1.不正行為や不祥事の防止

過去には、企業の不正会計や不祥事が社会的な問題となり、企業の信頼性が大きく損なわれる事例が数多くありました。例えば、2000年代初頭に発生したエンロンやワールドコムの会計不正事件は、企業の内部統制の欠如が原因であり、これらの事件を契機に内部統制の重要性が再認識されました。こうした不正行為を防止するためには、企業内部での監視体制やチェック機能を強化する必要があります。

2.法規制の強化

内部統制の整備は、法的義務としても求められるようになっています。日本では、2006年に施行された「金融商品取引法」(いわゆる日本版SOX法)により、上場企業には財務報告の信頼性を確保するための内部統制報告書の提出が義務付けられました。この法律は、アメリカの『サーベンス・オクスリー法(SOX法)』をモデルとしており、企業が内部統制を整備・運用することを法的に求めています。

3.ステークホルダーの期待

企業は、株主や投資家、取引先、従業員など多くのステークホルダーに対して責任を負っています。内部統制が適切に機能していれば、企業の透明性や信頼性が向上し、ステークホルダーの期待に応えることができます。逆に、内部統制が不十分な場合、企業の信用が失われ、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

内部統制の重要性

内部統制は、企業が持続的に成長し、社会的責任を果たすための基盤となる仕組みであり、その重要性について解説します。

1.リスク管理の強化

企業活動には、さまざまなリスクが伴います。具体例として、財務リスク、法的リスク、業務リスクなどがあります。内部統制を整備することで、これらのリスクを特定し、適切に管理することが可能になります。リスク管理が強化されることで、企業は予期せぬ損失を防ぎ、安定した経営を実現できます。

2.法令遵守の確保

企業が法令を遵守することは、社会的責任を果たす上で不可欠です。内部統制は、法令遵守を確保するための仕組みを提供します。例えば、コンプライアンスプログラムの導入や従業員への教育を通じて、法令違反を未然に防ぐことができます。

3.業務効率化と目標達成

内部統制は、業務プロセスの効率化にも寄与します。業務が標準化され、適切に管理されることで、無駄を削減し、企業の目標達成を支援します。また、内部統制が整備されている企業は、迅速な意思決定が可能となり、競争力を高めることができます。

4.財務報告の信頼性向上

財務報告の信頼性は、企業の透明性や信用を示す重要な指標です。内部統制が適切に機能していれば、財務報告の誤りや不正を防ぐことができ、投資家や株主からの信頼を得られます。

内部統制を構成する6つの要素

内部統制は、単なる監視体制ではなく、企業全体で機能する包括的な仕組みです。内部統制を構成する6つの要素は、企業が内部統制を設計・運用する際の指針となります。これらの要素は、アメリカのCOSO(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)が提唱した「内部統制の統合的枠組み」に基づいています。

1.統制環境(Control Environment)

統制環境は、内部統制の基盤となる要素であり、企業文化や倫理観、経営陣の姿勢を指します。経営陣が内部統制の重要性を認識し、従業員に適切な指導を行うことで、統制環境が整備されます。例えば、倫理規範の策定やコンプライアンス教育の実施が統制環境の構築に寄与します。

2.リスク評価(Risk Assessment)

リスク評価は、企業が直面するリスクを特定し、評価・分析するプロセスです。リスクを評価することで、企業は優先的に対応すべき課題を明確にし、適切な対策を講じることができます。リスク評価は、内部統制の設計において重要な役割を果たします。

3.統制活動(Control Activities)

統制活動は、リスクを管理するために実施される具体的な手続きや仕組みを指します。例えば、承認プロセスの整備、職務分掌の明確化、監査の実施などが統制活動に含まれます。これらの活動を通じて、リスクを効果的に管理することが可能になります。

4.情報とコミュニケーション(Information and Communication)

情報とコミュニケーションは、内部統制が適切に機能するために必要な情報の収集・伝達を指します。企業内での情報共有が円滑に行われることで、従業員が内部統制の目的を理解し、適切に行動することができます。また、外部ステークホルダーとのコミュニケーションも重要な要素です。

5.モニタリング(Monitoring)

モニタリングは、内部統制が適切に運用されているかを継続的に監視するプロセスです。定期的な評価や内部監査を通じて、内部統制の有効性を確認し、必要に応じて改善を行います。モニタリングは、内部統制の維持・向上に欠かせない要素です。

6.統制目標の設定(Objective Setting)

統制目標の設定は、内部統制が達成すべき具体的な目標を明確にするプロセスです。企業の戦略や業務目標に基づいて、内部統制の目的を明確にすることで、統制活動が効果的に機能します。

まとめ

内部統制は、企業が持続的に成長し、社会的責任を果たすための重要な経営基盤です。不正行為や不祥事の防止、法令遵守、リスク管理、財務報告の信頼性向上など、内部統制が果たす役割は多岐にわたります。また、内部統制を構成する6つの要素(統制環境、リスク評価、統制活動、情報とコミュニケーション、モニタリング、統制目標の設定)は、企業が内部統制を設計・運用する際の指針となります。
企業が内部統制を適切に整備・運用することで、透明性や信頼性が向上し、ステークホルダーの期待に的確に応えることができます。内部統制は単なる監視体制ではなく、企業全体で機能する包括的な仕組みであることを理解し、その重要性を再認識することが求められます。今後の企業経営において、内部統制はますます重要な役割を果たしていくでしょう。

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