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2025.04.28

非財務戦略とは?
注目される背景や導入のメリットを解説

  • 企業価値向上

非財務戦略とは?注目される背景や導入のメリットを解説

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近年、企業の経営において「非財務戦略」が大きな注目を浴びています。非財務戦略とは、従来の財務指標である売上高や利益、資産規模などの定量的評価ではなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を示すESG要素や、ブランド価値、顧客満足度、人材育成といった定性的・非財務的指標を重視した戦略のことを指します。本コラムでは現在、非財務戦略が着目されている理由や、取り組みによるメリットを解説します。

非財務戦略が注目される背景

非財務戦略が注目される背景には、持続可能な社会への関心が高まっていることが挙げられます。特に近年、気候変動や資源枯渇、社会的格差、人権問題など、地球規模の課題が顕在化しています。こうした社会課題に対して企業がどのように対応しているかが、投資家や消費者、社会全体から厳しく問われるようになっています。その結果、多くの企業が非財務的な視点を積極的に経営戦略に取り入れる必要性に迫られています。

投資家の行動変化も非財務戦略が広がる一因となっています。世界の投資家は企業評価に際して財務的要素だけでなくESG要素も考慮し、長期的な企業価値を評価する傾向が強まっています。実際、ESG投資の規模は世界的に急速に拡大しており、非財務的な要素を積極的に開示し、対応する企業ほど投資資金を引き寄せやすくなっています。

非財務戦略を導入するメリット

企業が非財務戦略を導入することで得られるメリットとしてまず挙げられるのは、企業イメージやブランド価値の向上です。社会的責任を積極的に果たし、環境問題や社会課題に貢献する姿勢を明確に示すことで、消費者からの信頼と支持を集めやすくなります。特に若い世代は、商品購入時に企業の社会的価値観や倫理性を重要視する傾向が強いため、非財務戦略は将来的な消費者層の獲得や維持に役立ちます。

次に、リスク管理面でのメリットも大きいです。企業が非財務的な課題を軽視すると、規制や社会的批判によるリスクが高まり、企業価値を大きく損なう恐れがあります。しかし、非財務的要素を経営戦略に組み込み、適切に対応することで、潜在的リスクを未然に防ぐことが可能となり、企業の安定的な経営を実現できます。

さらに、人材獲得・育成面でも非財務戦略は重要な役割を果たします。企業の価値観や社会的貢献を明確に打ち出すことで、自社に共感する優秀な人材を引きつけやすくなります。また、企業が従業員の働きやすさやキャリア形成に積極的に取り組むことで、従業員満足度やエンゲージメントが高まり、生産性向上や離職率低下にもつながります。

また、非財務戦略の導入は新たなイノベーションを生むきっかけにもなります。例えば環境問題を解決する技術やサービスの開発に取り組むことで、新市場を開拓し、競争優位性を確保できることも少なくありません。非財務的な視点をもって課題解決型のビジネスを推進することで、企業の新たな成長基盤を構築することができます。

非財務戦略を取り巻く外部環境

非財務戦略を効果的に実行するためには、経営層のリーダーシップが欠かせません。経営トップが非財務的な価値を明確に打ち出し、全社的に共有することで、組織の意識改革や文化醸成が進みやすくなります。また、非財務情報を適切かつ透明性高く開示し、ステークホルダーとのコミュニケーションを強化することも重要です。

さらに近年、非財務情報の標準化や評価基準の整備が世界的に進んでいます。国際的な非財務情報の開示基準であるGRI(Global Reporting Initiative)やSASB(Sustainability Accounting Standards Board)などが注目され、多くの企業が積極的に導入しています。標準化が進むことで、企業間の比較が容易になり、より透明性の高い情報提供が可能となるため、投資家や消費者からの評価が高まることが期待されています。

また、デジタル技術を活用した非財務情報の収集・分析も加速しています。AIやビッグデータなどを活用し、より精緻かつ迅速に企業の非財務パフォーマンスを把握し、改善につなげる動きが広がっています。テクノロジーを駆使した非財務戦略は、企業の競争力強化にも直結する重要な取り組みとなるでしょう。

これからの企業経営においては、非財務戦略と財務戦略の両輪をバランスよく運用する視点がますます求められます。短期的な利益だけでなく、長期的な価値創造と社会的信頼をいかに築いていくかが企業の存続を左右します。特に中長期的な視点で経営戦略を立案する際には、非財務的な視点が持つポテンシャルを過小評価すべきではありません。

非財務戦略と企業価値

企業が社会課題に対してどのように取り組んでいるのかを可視化し、ステークホルダーに対してその価値を説明することは、企業の透明性と信頼性を高めるために欠かせない取り組みです。また、それが結果的に企業の競争力強化や持続的成長に繋がることも多くの研究や事例で示されています。

非財務戦略は、単なる経営戦略の一部ではなく、企業の存在意義や社会との関係性を問い直す手段としても捉えられます。持続可能な未来の実現に向けて、企業が社会との共存共栄を目指すための礎ともいえるのです。そのためには、形式的な取り組みにとどまらず、本質的かつ継続的な変革が必要です。

特に近年では、「価値創造ストーリー」という概念が経営の中核に据えられつつあります。これは、企業がどのようにして社会課題に応えながら、自らの強みや資源を活用して持続可能な価値を生み出していくかを、一貫した物語として描くことです。投資家や顧客、従業員といった多様なステークホルダーに対し、企業の存在意義と未来へのビジョンを明確に伝えるためのフレームワークとして注目されています。

価値創造ストーリーを構築するには、まず自社の事業活動が社会に与えるインパクトを分析し、何を通じて社会的価値を提供しているのかを明らかにする必要があります。そして、その価値がいかにして中長期的な財務成果にも結びついていくのか、両者の関係性を示すことが求められます。これにより、企業は社会との共創の姿勢を打ち出すと同時に、長期的な企業価値向上の根拠を説明できるようになります。

今後、非財務戦略の重要性はさらに高まると予想されます。短期的な利益追求から脱却し、非財務的視点を経営に取り入れることは、企業の持続的な成長を実現し、社会から信頼される企業へと成長するための必須条件となりつつあります。企業が真に競争力を維持し続けるためには、非財務戦略を積極的に推進し、社会的価値を生み出す経営を実践することが求められています。

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