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ビジョンは経営者が目指す企業の「将来像」であり、事業活動の結果として到達する目標です。ビジョンを策定する際は、具体的なゴールを同時に定めましょう。
ビジョンの策定時はフレームワークの使用が一般的です。フレームワークは、策定のプロセスを分かりやすくした枠組みや手法です。考え方を整理し、経営判断をスムーズに行うためには必要といえるでしょう。
この記事では、企業のビジョン策定に役立つ各種のフレームワークをご紹介します。
ビジョン策定のポイント
ビジョン策定の際は、次のポイントを押さえます。
●簡潔な言語化
●実現可能なものとした定量的なゴール設定
●従業員を始めとするステークホルダーの支持獲得
●時代のニーズや感覚の反映
●社会に歓迎されるビジョンによる自社の存在感
最も重要なポイントは「言語化」です。ビジョンの言語化が成功すれば、ステークホルダーや社会に理解され、よい結果を導けるでしょう。
ビジョン策定の根幹となるフレームワークMVV
ビジョン策定の根幹となるフレームワークがMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。
●企業の使命(M)
●将来像(V)
●価値基準や行動指針(V)
それぞれの言語化が、意思決定を迅速化します。社内で共有・浸透させれば、社員のモチベーションは向上するでしょう。MVVに沿ったコンセプトを持った商品・サービスは、意義があるものとしての説得力を持ちます。
M:ミッション
ミッション(Mission)は、「企業がなぜ存在するか」「何を成すべきか」といった存在意義や使命を定義します。社会的な役割を担うために、達成すべき課題を明確にしましょう。
V:ビジョン
ビジョン(Vision)は、企業のあるべき姿・将来像を定義します。社会においてどのような役割を担うかという、社会の位置付けを明確にします。
V:バリュー
バリュー(Value)は、企業がサービスを通し、顧客や社会に価値を提供します。バリューにより、価値基準と行動指針が明確になります。
ビジョン・戦略策定に役立つフレームワーク10選
MVV以外にも、企業のビジョンや戦略策定に役立つフレームワークは多く存在します。ここでは代表的なフレームワークについて簡単にご紹介します。
①SWOT分析
SWOT分析は
●自社の価値や存在意義に関する「強み」と「弱み」
●自社を取り巻く市場動向の捉え方としての「機会」「脅威」
の4つの関心事を明確化するフレームワークです。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部環境 | 強み(Strength) | 弱み(Weakness) |
外部環境 | 機会(Opportunity) | 脅威(Threat) |
ビジョン策定では、強みや機会を活かしたプラス要因に着目するとよいでしょう。
マイナス要因としての弱みや脅威はリスクと捉え、何らかの予防策をとる必要があります。
②PEST分析
PEST分析は、自社に影響を与える環境要因を4つに分け、課題を明確化するフレームワークです。
1. 政治的要因(Politics)
2. 経済的要因(Economy)
3. 社会的要因(Society)
4. 技術的要因(Technology)
これを活用すると、問題点が浮かび上がり、隠れていたチャンスに気づきます。それぞれの変化に着目することで、現在から将来にかけての自社の関わり方を見出せるでしょう。
③3C分析
3C分析は、自社の利害に直結する3つの側面を分析して、ブランドを確立するフレームワークです。
1. 顧客(Customer)
2. 競合(Competiter)
3. 自社(Company)
「競合」を意識した分析であることが特徴です。顧客へのアピールに自社に重点を置きます。将来的に業界でどのような立ち位置・役割を担うかに着目して、分析を進めましょう。
④5W1H
5W1Hはあらゆる場面で、活動状況を言語化する際に広く用いられるフレームワークです。マーケティングにおいても、事実や将来像を具体的に表すために欠かせません。
いつ(When) | 時間・期間 |
どこで(Where) | 場所・場 |
誰が(Who) | 主体・担い手 |
何を(What) | 対象 |
どのように(How) | 方法・過程 |
他のフレームワークでも、5W1Hは有効です。ビジョン策定にあたっては、ゴールや行動指針を具体的に示すことに役立ちます。
⑤ブレインストーミング
ブレインストーミングは、複数の人々が集まってアイデアを出し合うためのフレームワークです。
ブレインストーミングには、次の4つの原則があります。
1. 条件にとらわれず自由にアイデアを出す
2. 他人のアイデアを批判しない
3. 多くのアイデアを出す
4. アイデアの結合や発展を試みる
経営層だけでなく社員も参加して広くアイデアを募ることが効果的でしょう。
⑥ワールドカフェ
ワールドカフェは、カフェのようなリラックスした雰囲気の会場で、数人のグループに分かれて話し合います。フラットな関係で自由に意見交換できるのがメリットです。
ワールドカフェの個々のグループは少人数です。ただし、全体の規模は大きくても実施可能です。
グループのアウトプットをまとめてビジョンに反映させるプロセスが必要と考えられます。
⑦OKR
OKR(Objectives and Key Results)は「目標」と「成果指標」を定めるためのフレームワークです。
OKRを活用すれば、企業の目標を職場や個人の目標と一体化でき、全社的な足並みを揃える効果が得られます。
進捗管理を行い、時期をみて評価を実施して改善を加えることも重要です。ビジョンの具体化やゴールの設定に役立つでしょう。
⑧タックマンモデル
タックマンモデルは、心理学者のブルース・W・タックマンが提唱した、チーム形成のためのフレームワークです。
チームの成長段階を示したモデルで、次の5段階が考えられています。
1. 形成期:チーム内で互いにコミュニケーションを行う
2. 混乱期:チーム内で対立・衝突が起きる
3. 統一期:共通認識を持って互いの立場を尊重する
4. 機能期:チームの実力が発揮されて成果を上げる
5. 散会期:目標達成によってチームの解散に至る
⑨フューチャーサーチ
フューチャーサーチは、幅広いコンセンサスを前提としたビジョン策定方法です。利害関係が複雑に絡む課題について関係者とともに話し合い、共通の未来を見つけ出すフレームワークです。
社員以外のステークホルダー(取引先・地域)とともに、規模の大きな議論を行います。現状の問題点や未来の方向性について、情報共有して互いの認識を新たにし、共に未来に向かって進む活動計画を作ります。
⑩AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry)とは「価値を見出す質問」の意味をもちます。個人や企業のポテンシャルを高めるフレームワークです。
AIには4Dと呼ばれる次の4つのプロセスがあります。
1. 発見(Discover)
2. 夢(Dream)
3. 設計(Design)
4. 実行(Destiny)
社員の強みを活かした目標達成プランを策定し、夢と自信を持ってゴールを目指します。ビジョン策定を内面から支える手法だといえるでしょう。
ビジョン策定時のフレームワーク活用の注意点
フレームワークは、あくまでビジョン策定の思考を助けるものです。
それぞれに特性があるため、目的や自社の置かれている状況によって使い分けることが重要です。他社で成功したものを無条件に採用するようなフレームワークありきの選び方は避けましょう。
自社にとって無理があると考えられるフレームワークは採用を避けます。戦略に馴染むものを採用する柔軟性が必要です。
自社に合ったフレームワークを採用しよう
ビジョン策定に使用するフレームワークは、以下をポイントに選択します。
●分かりやすいもの
●使いやすいもの
●実践的なもの
より良いものを選ぶためには試行錯誤が必要です。十分な検討期間を確保しましょう。
自社がフレームワークを選定できそうにない場合、外部の専門家に相談して、適切なサポートを受けることをおすすめします。
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