COLUMN

2023.09.13

食品企業における中期経営計画の作り方とポイント

食品業界の中期経営計画は3ヵ年スパンでの設計がベター

中期経営計画とは、ビジョン実現のためのメルクマールであり、達成すべき数字と、その根拠となる取り組みテーマを含めたロードマップを指します。主に3~5ヵ年で作成されますが、食品業界では、コロナショックを例に見るように、環境変化に対するインパクトも早く大きい業界であるため、3ヵ年スパンで中期経営計画を設計していくことを推奨しています。
つまり、この先3ヵ年で起きうる環境変化に対する対策と企業の意思を数字で表現し、それを行動テーマに翻訳したものが中期経営計画であるということです。

食品業界の中期経営計画は3ヵ年スパンでの設計がベター

中期経営計画策定における基本的な考え方

"よりよく提供する"こと

中期経営計画を策定する上で必ず行うべきことは、内外の環境分析です。
内部環境としては、明確なビジョンとその浸透度、収益構造や財務体質、組織体制や従業員レベルを把握していきます。
外部環境としては、事業領域やビジネスモデル、市場推移や他社の動向など、マーケット状況を押さえていきます。

食品企業においては、人の生活に直結する商品を扱っているため、特にマーケット状況やその変化を正しく捉えていくことが重要となり、未来の仮説を複数持っておくことが理想と言えます。
商品を"より良くする"という視点はもちろん大切ですが、それ以上に、"よりよく提供する"という考え方を取り入れていくことが食品企業における成長のエンジンとなっていきます。

商売の基本は「売れるものを売る」であり、「売りたいものを売る」より優先されるという考え方があります。
古い考えと思われるかもしれませんが、成功している企業のほとんどはこの基本を体現しています。つまり、プロダクトアウトの視点だけではなく、マーケットインの視点を取り入れることが重要であるということです。【図1】

図1

例えば、アンケート調査やモニター調査、またSNSによるターゲットに対するダイレクトニーズ調査を行っている企業もあり、市場が『欲しがっている』商品をいかにキャッチしていくかを仕組みづくることが"よりよく提供する"ということに繋がってきます。

食品企業における中期経営計画づくりのポイント

中期経営計画を作る際のポイントについて紹介します。
1.事業領域とビジネスモデルの革新
2.業態転換や異業種との新結合
3.デジタル改革やフードテック


1.事業領域とビジネスモデルの革新について

自社の事業ポートフォリオやビジネスモデルの実態をいざ描いてみると、新たな気づきが得られることがあります。当初計画していたバランスとはギャップのある売上構成になっていたり、ターゲットとしていた人と、実は異なる人に好まれていたりと、イメージしていた通りに実態が作られている企業は多くはありません。その際に捉えるべき部分は、事業領域とビジネスモデルです。

顧客価値を生み出している部分と、マネタイズしている部分の重なりをピンポイントで押さえ、そこに経営資源を集中投資していくのです。まずここを押さえることが1つめのポイントとなります。
あるお菓子メーカーは、店頭で焼いたお菓子を冷やしてから箱詰めしてギフトとして販売していましたが、あるとき箱がなくなってしまいました。そこでとった行動は、焼きたての商品を冷やすのではなくバットに並べ、すぐ食べてもらえるように紙で包んで1個ずつ販売することでした。ギフト市場から、食べ歩き市場に偶然にも広がったのです。
その結果、その場で食べる人への販売はもちろん、カジュアルギフトとしても使われるようになり、行列の絶えない店舗へと変貌を遂げました。

2.業態転換や異業種との新結合について

食は人の生活の不可欠な部分であるがゆえに、トレンドの影響を受け、異業種との親和性も高いことが過去の例からも見られます。例えば、ある食品メーカーはレトルト商品をアウトドアで食べて欲しいと考えました。お客様からも、アウトドアで食べやすくておいしい商品が欲しいという要望もありました。
そこで取った施策は、商品をスーパーではなく、ホームセンターのアウトドアコーナーで売るという方法です。食べるシーンに合わせて販売チャネルも変化させていくことで、ターゲットにより刺さる商品となり、コアなファンが増えていきました。

3.デジタル改革やフードテック

世の中には、私たちの知らないところで、新しい技術やシステムがどんどん生み出されています。しかし、そのデジタルの波に乗り遅れているのが、食品業界なのです。デジタルの導入には、2つの軸があります。それは「業務の効率化」と「顧客のロイヤル化」で、攻めと守りの両端を表しています。
守りである業務の効率化は、いわゆるRPAなどの本部業務に対するロボットや、配膳ロボットなどの現場業務に対するものです。
攻めである顧客のロイヤル化は、自社アプリの導入やSNSの活用が例として挙げられます。前向きな投資を含めた取り組みが企業の社会的なブランディングにもなり、新しい食文化への貢献にも繋がります。顧客から選ばれ、生き残るためにはデジタル改革やフードテックの視点は必要不可欠です。

食品企業における中期経営計画づくりのポイント

最後に

今回は、食品企業における中期経営計画の作り方とポイントについてを紹介しました。
「人を良くする」と書いて「食」というように、社会の主役が人である以上は食は欠かせないものであり、本質的な価値は変わりません。変化が大きくて早い業界だからこそ、不易と流行をしっかりと見極めて取り組みを計画していくことが大切です。そのためにも今回の視点やポイントが参考になれば幸いです。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング
チーフマネジャー

牧戸 理英

飲食店・ブライダル業界のマネジメント経験を経て当社に入社。 「会社は人の思いでできている」という考え方で、「人の思いを大切にする」ことを信条に、コンサルティングを展開。 収益改善を目的とした事業戦略策定や、現場に根差した組織のシステム構築などを得意とし、 クライアントの新たな価値創造に貢献している。

牧戸 理英

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

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コンサルティング実績

創業66
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