人事コラム
人事制度

ストックオプションとは?報酬の種類、導入の流れと留意点、成功の秘訣とは?(前編)

社員のモチベーションを引き出し、業績にコミットするインセンティブとしてのストックオプション

SCROLL

人事戦略との連携がストックオプション成功の鍵!
人事制度と連動させることでストックオプションの効果を最大化する。

ストックオプションとは

ストックオプションとは

ストックオプションとは、役員や従業員などがあらかじめ決められた価格で自社株式を購入することができる権利である。上場後のキャピタルゲインで大きな利益を得られる可能性があるため、 社員のモチベーションを引き出し、業績にコミットさせることに一役買うことができる。また、会社が給料や賞与などのキャッシュを放出せずに従業員や会社の成長を促すことができるため、資本規模の小さいベンチャー企業やスタートアップ企業に多く導入されている。
ストックオプションを導入する際、多くの経営者は株式報酬の種類や負担する税金に関して注目しがちである。
しかし、ストックオプションは【報酬制度】であり【人事戦略】の1つである。
そのため、ストックオプション導入検討時には【ストックオプション×人事戦略の連動】に焦点をあて、導入効果を最大化させる方策を検討する必要がある。
本稿では、ストックオプションの種類や導入の流れについて説明するとともに、ストックオプション成功の鍵となる人事戦略との連動について、前後編2回に分けて解説していく。

報酬の種類とストックオプション検討の流れ

ストックオプションの導入を検討する前に、報酬の種類について正しく理解する必要がある。
報酬制度をリスクの大きさ、収入が得られるまでの期間の長さに応じて区分し、体系的に整理すると以下の図のようになる。

 

報酬の種類
▲報酬の種類

 

今回のテーマであるストックオプションは、収入までの期間が長いかつリスクが大きいLong-term Incentive(中長期インセンティブ、以下、LTI)に属する。そしてShort-term-Incentive(短期インセンティブ、以下、STI)には、いわゆる賞与などの報酬が属する。
ストックオプションは人事戦略の一環であるため、まずは報酬制度として【従業員の成果や活躍をどのように評価し、何で報いるか】というコンセプトを設計する必要がある 。
次にSTIに属する賞与の業績KPIを報酬コンセプトに基づき決定する。そして最後にLTIであるストックオプションの付与基準を報酬コンセプトおよびSTIと密接に連動させて決定する。
報酬コンセプト、STI、LTIのすべてが連動することで、ストックオプションは真の効果を発揮する。
報酬コンセプトが設計できていない、STIの評価制度が不公平あるいは未設計の状態でLTIを導入することは本末転倒になってしまうため注意いただきたい。

LTIの分類

次にLTIの分類を体系的に整理すると以下の図のようになる。

 

中長期インセンティブプラン(LTI)の分類
▲中長期インセンティブプラン(LTI)の分類

 

初めにLTIに業績条件を付すか否かを選択する。
選択のポイントはLTI導入の目的が何かによる。
たとえばLTI導入の主たる目的が株主との利害共有であれば、業績条件のないエクイティ・プランが適している。
従業員へのインセンティブ機能が目的であれば、業績の達成度合いに応じて報酬が変動するパフォーマンス・プランが適している。
昨今では多くの企業がエクイティ・プランを選択するため、エクイティ・プランの選択を深堀していく。
エクイティ・プランは更に2つに分類できる 。
1つはフルバリュー型、もう1つは上昇益還元型である。
フルバリュー型とは、権利行使時の株価がそのまま貰い手の利益になる。リストリクテッド・ストック(RS)が昨今の主流である。
上昇益還元型とは、株式上昇益相当額のみが貰い手の利益になる。通常型ストックオプションがその代表例である。

IPO準備段階でのストックオプション導入スケジュール

IPO準備段階においては、ストックオプションの導入時期に注意が必要である。直前期の導入は会計監査と主幹事証券会社の審査に影響が出る可能性があるためだ。
ストックオプションを発行すると、将来普通株式に転換できる潜在株式を増加させることになるため、既存株主の株式価値を希薄化させる。(潜在)株主の変動要素であり、上場後の株価形成に影響があるため、主幹事証券会社や(潜在)株主と発行比率を事前に協議しておく必要がある。
またIPO準備段階におけるストックオプションの発行比率は一般的に10~15%以内と言われており、この範囲を超えての発行は証券会社からの指摘が入る可能性もある。発行数にも注意いただきたい。
導入スケジュールとしては、N-2期から人事制度(等級・報酬・評価・退職金)の制度検討と同時並行で進めることをオススメしたい。
前述のとおり、LTIとSTI双方の報酬コンセプトを検討する必要があり、そこに紐づく、等級や評価、退職金制度も同時に設計または改修することになる。
ストックオプション設計は3ヶ月~、人事制度設計は6ヶ月~を目安に、制度の連携を図りながら同時に進めることを推奨する。

 

LTI(中長期インセンティブプラン)の検討プロセス
▲LTI(中長期インセンティブプラン)の検討プロセス

 

前編として、ここまでにストックオプションの概要や導入スケジュールについて解説をしてきた。後編ではいよいよストックオプションの成功の鍵となる人事戦略との連動について解説していく。

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