「「稼ぐ力」の強化に向けた
コーポレートガバナンスガイダンス」
について
【2025年4月30日 経済産業省リリース】
- コーポレートガバナンス
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経済産業省は、日本の上場企業の「稼ぐ力」を強化するため、「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」において進められてきた検討を踏まえ、「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」、「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス(以下、「「稼ぐ力」のCGガイダンス」という。)」を策定しました。特にTOPIX500を構成する企業の取締役会およびCEOら経営陣に対し、これらを活用しながら、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスの更なる取り組みを行い、他の企業の取り組みを牽引していくことを期待した内容となっています。
ここまでの長引くデフレによるコストカット型経済から、賃上げと投資が牽引する成長型経済へ移行するにあたって、日本企業が「稼ぐ力」を強化するために、リスクを取って事業ポートフォリオの組替えや積極的な成長投資を実行する「攻めの経営」に転換するために、政府が期待することは何か。企業の規模に関係なく経営に携わる皆様、誰もが押さえておくべき内容を、ポイントを絞って説明します。
公表物の概要
引用元:経済産業省 「「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」、
「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を策定しました」
経済産業省は、昨年9月に「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会」を立ち上げ、コーポレートガバナンスの取り組みの進め方について検討を行っています。この検討では、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスの捉え方が改めて提示されました。中長期目線での成長戦略の構築と実行に向けた営みを持続的かつ実効的に行う観点から、各企業が自社におけるコーポレートガバナンスの在り方について十分議論し、一貫した考え方の下で、体制・仕組みを検討することが重要であるとされました。
コーポレートガバナンスに関しては、「稼ぐ力」の強化に向けた日本の上場企業のコーポレートガバナンスの取り組みを支援するため、「稼ぐ力」の強化に向けた企業経営を行う上で取締役会が踏まえるべき内容を、経営陣がとるべき行動と対比する形で、「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」として整理しています。また、各社それぞれにおける検討や取り組みを支援するため、取り組みの前提となる考え方、進め方、検討ポイント、取り組み例および企業事例を、「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス(以下、「「稼ぐ力」のCGガイダンス」という。)」としてあわせて整理しています。
会社法については、「会社法の改正に関する報告書」として企業の選択肢の拡大や株主との意味のあるエンゲージメントの促進に資する制度見直しを中心に、改善の方向性について整理がされています。
その他の項目については、「CG研究会において問題提起があった事項」として上記項目に反映しきれていない委員の意見が整理されています。
コーポレートガバナンスについて
引用元:経済産業省 「「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」、
「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を策定しました」
コーポレートガバナンスについては、⑴「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則と、⑵「稼ぐ力」のCGガイダンスの2つの内容が発信されており、「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則は、CGガイダンスの中でも主要な内容を抜粋して発信されました。「稼ぐ力」の強化、すなわち「中長期的かつ持続的な収益性・資本効率の向上」を実現するための企業経営を行う上では、価値創造ストーリーを構築し、それに基づき、事業ポートフォリオの組替えや成長投資(設備投資、研究開発投資、人材投資、知財・無形資産投資など)を実行していくことが不可欠です。そのためには、取締役会とCEOら経営陣がそれぞれの役割に応じて機能を発揮する実効的なコーポレートガバナンスの構築と、株主・投資家との対話の活用が重要であり、その際に取締役会がこの5原則を踏まえて行動することが求められています。
詳細は経済産業省のホームページを参照してください。
原則1(価値創造ストーリーの構築)
自社の競争優位性を伴った価値創造ストーリーを構築する。
≪経営陣がとるべき行動≫
✓ グループの強みを生かした全体最適の視点を重視し、価値創造ストーリーを策定
✓ P/L視点だけでなく、B/S視点やC/F視点でも議論
原則2(経営陣による適切なリスクテイクの後押し)
経営陣が、価値創造ストーリーの実現に向け、事業ポートフォリオの組替えや成長投資など、適切なリスクテイクを行うよう、後押しする。
≪経営陣がとるべき行動≫
✓ 価値創造ストーリーの実現に向けて、資本効率と事業の成長性を考慮しつつ、事業ポートフォリオの組替えや成長投資を実行
原則3(経営陣による中長期目線の経営の後押し)
取締役会自体が短期志向に陥らないよう留意しつつ、経営陣が、中長期目線で、成長志向の経営を行うよう、後押しする。
≪経営陣がとるべき行動≫
✓ 短期的な成果をあげることを過度に意識せず、価値創造ストーリーを基に、中長期目線で業務を執行
✓ 中長期的な成長による株主利益も考慮した株主還元を検討
原則4(経営陣における適切な意思決定過程・体制の確保)
マイクロマネジメントとならないよう留意しつつ、経営陣の意思決定過程・体制が、迅速・果断な意思決定に資するものとなるよう促す。
≪経営陣がとるべき行動≫
✓ 価値創造ストーリーの構築・実現のための強靭な経営チームを組成
✓ 経営環境の変化も踏まえつつ、社内論理に陥ることなく、多角的な視点で議論し、意思決定できる仕組みを構築
原則5(指名・報酬の実効性の確保)
最適なCEOの選定と報酬政策の策定を行うとともに、毎年、原則1~4の内容も踏まえたCEOの評価を行い、再任・不再任を判断する。
≪経営陣がとるべき行動≫
✓ 自社の経営トップとして適切なCEO候補者を選定し、育成する仕組みを構築
✓ 価値創造ストーリーの実現に向けた業務執行を行うとともに、取締役会に進捗などを適切に報告
✓ 取締役会からの評価結果を踏まえて、翌年度以降の業務を執行
「「会社法の改正に関する報告書」(2025.1.17公表済)」について
会社法の改正に関する報告書は、経営者の経営変革につながる判断を株主などから後押しするための環境整備(企業経営・資本市場一体改革)を進める一環として策定されています。報告書では、価値創造ストーリーを実行するための企業の選択肢の拡大、企業と株主との意味のあるエンゲージメントの促進(対話の実質化・効率化)などに資する制度見直しを早期に図ることや、自社に最適なコーポレートガバナンス体制に密接に関係する機関設計の在り方や、株主総会の在り方についても検討を深めることが目的とされています。
検討内容としては、⑴従業員・子会社の役職員に対する株式の無償交付の拡大や⑵株式対価M&Aの活用、⑶キャッシュアウト手続きの効率化・道理化のほか、⑷社債権者集会のバーチャル化の検討、⑸責任限定契約の有効利用による価値創造ストーリーの実行ほか、コーポレートガバナンスの機関設計やエンゲージメント向上についても触れられています。
「CG研究会において問題提起があった事項」について
「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」および「会社法の改正に関する報告書」に反映した内容以外では、資本市場関連や政策保有株式、役員報酬などについて、委員からいくつか問題提起がなされています。詳細は経済産業省の公式発信を参照してください。
引用元:経済産業省 「「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」、
「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を策定しました」
「稼ぐ力」のCGガイダンス(取締役会5原則を含む)については経済産業省から活用方法についても発信がされています。
ポイントは
⑴CEOおよび社外取締役が、自社におけるコーポレートガバナンスの在り方について、改めて考えるきっかけとすること
⑵コーポレートガバナンスの取り組みにおいて中心的な役割を担う取締役会、CEOら経営陣、取締役会事務局などが、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスの取り組みを行う際の参考とすること
であり、経営陣には本内容をきちんと理解したうえで、ステークホルダーとの継続的な対話により、企業の「稼ぐ力」を高めていく取り組みを継続的に実施していくことが重要です。
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