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「伝わる」ブランドコンセプトの作り方とは

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企業が商品やサービス、コーポレート全体をブランディングしていくにあたり、必要不可欠である「ブランドコンセプト」という言葉。ブランドコンセプトの作り方に課題を抱えている企業や担当者は多く、方向性が定まらず悩んでいる人も少なくありません。本記事では、今更聞けないブランドコンセプトの重要性や作り方のポイントをあらためて本コラムで考えていきます。

ブランドコンセプトとは、ブランドが持つ価値や企業が果たすべき役割を言語化したもの

ブランドコンセプトとは、顧客やブランドターゲットに対してどのような価値・ベネフィットを提供するかを明確に示したものであり、「我々は○○なブランドで、○○なベネフィットを提供します!」と他社と差別化し価値を表現したものになります。

それは製品やサービスだけでなく、社内外のコミュニケーション設計、広告コピー、女性や若年層など誰に向けたブランドなのかという方向性までも一貫して伝える旗印です。ブランドの特徴をより具体的に説明し、顧客の心に強い印象を残すことができれば、長期的に愛されるブランドへ成長させることができます。

またコンセプトが明確であれば、新しい企画を立ち上げる際に別の意見が出ても判断基準がぶれにくく、チーム全員が同じゴールを目指しやすくなる点も大きな利点と言えるでしょう。ブランドコンセプトを考える際には、自社が提供できる価値を洗い出し、具体的な例や数字を用いて詳しく伝えることが成功への近道です。

ブランドコンセプトの重要性とメリット

ブランドコンセプトは、単なる"コピー"ではなく、企業活動のあらゆる場面で機能する「羅針盤」かつ「共通言語」です。ここが曖昧なままでは、広告・商品開発・営業・採用・社内制度などがバラバラに最適化され、結果としてブランドが分散・希薄化してしまいます。逆に、コンセプトが明確であればあるほど、社内外の判断が一本化され、限られたリソースを効率的に集中できるようになります。具体的なメリットを5つに整理すると、次のようになります。

1.価格、機能以外で選ばれる理由を明確化

昨今、機能面での優位が持続しにくい時代となっています。ブランドが提供する情緒的、社会的価値まで言語化することで、単なる機能比較ではない、いわゆる「指名買い」を生み出すことに繋がります。

2.顧客からの期待を可視化し、信頼を構築

コンセプトとは、「企業が顧客に何を約束するか」を示す宣言とも言えます。顧客はその約束を基準にブランドを評価し、期待が満たされ続けることで愛着やリピートが生まれます。

3.多様なチャネルでのメッセージの統一

ブランドコンセプトが明確であれば、広告コピー、SNS運用、プレスリリース、店舗体験など、タッチポイントが増えても一貫したメッセージが届けられるため、認知拡大コストも抑えることが可能となります。

4.社員のエンゲージメントと採用力の向上

従業員は給与や待遇だけでなく「どんな価値を世の中に届ける会社か」も重視しています。明快なブランドコンセプトは、社内の誇りとロイヤルティを高めるだけでなく、カルチャーフィットする人材の採用にも繋がります。

5.中長期的な事業資産

市場環境やテクノロジーの変化が目まぐるしい現代においても、ブランドコンセプトが確立している場合、提供手段をアップデートしながらも、一貫した価値を提供し続けることができ、結果として、広告投資などと比較しても持続的な資産形成が可能となります。

このように、ブランドコンセプトは"最初に作って終わり"のものではなく、あらゆる事業活動に浸透・運用することで真価を発揮します。次章以降で示すステップを踏みながら策定し、社内外に徹底させることこそが、長期的に愛されるブランドづくりの第一歩となります。

ブランドコンセプト開発にあたるステップ

顧客やブランドターゲットに対し魅力的かつ、そのターゲットに対してのブランドベネフィットや自社・ブランドの存在意義を明確にし、価値創造ストーリーを組み上げていくことが重要になります。組み上げるステップは大きく5つのステップで考えられます。

1.現状認識・市場、競合分析
2.自社ブランド価値の棚卸と強みの発見(専門価値・人材価値・社会価値)
3.ブランドベネフィットの整理
4.ブランドターゲットの設定
5.ブランドコンセプトの策定、言語化

各ステップについて見ていきましょう。

ステップ①:現状認識・市場、競合分析

まずは、現状認識として現状の把握と市場・競合分析を行います。市場において自社ブランドが目指すべきポジション、方向性を定めるうえで、現在地点の確認をすることも大切です。

例えば、ブランドリサーチとして自社・取引先・一般消費者などに対するブランドイメージ調査を行うことや、実際にインタビューを入れるなど、定量・定性調査を入れながら、ベンチマークすべき競合他社についても洗い出し、比較する要素を抽出してポジショニングマップを作成することで、自社が本当に目指すべきポジションを確認することも重要です。このプロセスを丁寧に行うことで、ターゲットに与える印象がクリアになり、メリットを強調する広告やコミュニケーション設計へとスムーズにつなげられます。

ステップ②:自社ブランド価値の棚卸と強みの発見(専門価値・人材価値・社会価値)

ブランドの目指すべき方向性を明確にするために、3つの観点から自社が強みを発揮できるブランドの素材を発見していくことをお勧めします。分かりやすい言葉で整理することで、社内外の人すべてが同じミッションを理解しやすくなるというメリットもあります。

1.専門価値...商品・技術・サービスにおける価値
2.人材価値...社員や社風の良さで信頼を得る価値
3.社会価値...世の中の役に立つことで選ばれる価値

3つの価値にまずは分類してブランド価値の棚卸をし、多くの意見を集めながら、優先的に磨いていくブランド価値を見つけていきます。その中で競合他社との比較をしながら、コアコンピタンス(他社に真似できない自社ブランドの付加価値を生み出す核となる強み)を見出していきます。手段の一つとしてバリューチェーン(※企業における各事業活動を価値創造のための一連の流れとして捉える考え方。原材料調達→製造→流通→販売→アフターサービス)の中で整理することも有効です。それぞれの事業活動の中で得られる独自性のある役割や機能から競争優位性を見つけ出すことも重要です。

ステップ③:ブランドベネフィットの整理

前述までの整理、分析をもとにしながら、自社のブランド価値やコアコンピタンスを踏まえ、独自性のある価値として顧客やターゲットに対して約束できる価値であるかどうかを見極め、ブランドベネフィットの整理をしていきます。「自社だけが提供できる価値」を発見し、シンプルな言葉で表現するための姿がこの段階で少しずつ見えてくると、ブランドコンセプトに落とし込みやすくなります。

ステップ④:ブランドターゲットの設定

ブランドの価値を棚卸し、コアコンピタンスの発見と、顧客側の視点に立った時のブランドベネフィットを整理したあとに、言葉選びやコミュニケーション方法の方向性も踏まえてターゲット設定をしていきます。ここでの目的は、「誰」に「何を」伝えるかを具体化し、ミッションと活動すべてを一貫させることです。自社のブランド価値を届けたい相手、自社の商品やサービス、あるいはコーポレートブランドの考え方そのものに共感をし、価値を感じてもらえる顧客やコアターゲットはどこか、あらためて検討をしていきます。

検討項目としては、以下のような属性をあげていき、集約をすることで向き合うべきターゲット像を明確にしていきます。BtoB企業のターゲットの場合は、

・業界、業種
・企業規模
・企業名
・役職や予算、決定権限者etc.

の属性が考えられます。BtoCでターゲットが消費者にあたる場合は、

・年齢
・性別
・居住地
・職業
・家族構成
・年収
・価値観
・ライフスタイル
・趣味、嗜好etc. 

などが考えられます。ここでポイントなのが、現実的な目線でターゲットを設定できているか、「絵にかいた餅」にならないよう検証しながら定めていくことが重要です。

ステップ⑤:ブランドコンセプト策定、言語化

今までのステップの中で定めてきたブランドの価値や強み、ベネフィットやターゲット像などの独自性をもとに、ブランドコンセプトという「核となる言葉」へと落とし込んでいきます。この一連のステップで整理をした内容を、ミッションや目的を誰でも理解できる形で一貫したストーリーにどのようにまとめていくかが重要ですので、洗練された格好良いキャッチコピーにこだわる必要もありません。定めたターゲットに対し「どのような価値のあるブランドで、どのような価値を約束し提供してくれるか、何を実現してくれるか」を正確に伝え、伝わりきることが重要となります。

スターバックスコーヒーの「サードプレイス(第3の場所)」や、ダイソンの「吸引力の変わらない、ただひとつの掃除機」、ユニクロの「LifeWear(ライフウェア)」など、できる限りわかりやすく、一言でシンプルな言葉でつくることを心掛けていきましょう。記憶に残りやすく、インパクトがあるものであれば、なお効果的になります。

【参考コラム】
ブランドコンセプト・ブランドビジョンで伝えるべき価値を届ける

独自性があり、かつ魅力的なブランドコンセプトを作るためには

前述の通り、どんなに洗練されて格好良いコンセプトを作ったとしても、その言葉がブランド価値やターゲットが感じるブランドベネフィットと多少でもブレが生じてしまうなど、ターゲットに対しまっすぐに伝わらなければ意味のないものとなります。また、競合との差別化がなされており、埋もれてしまわないか。ミッション・目的と一貫したストーリーになっているかという点も重要です。

1.独自性かつ、シンプルでわかりやすい表現を追求していくこと
2.自社満足のブランド価値ではなく、顧客の潜在ニーズを救い上げたブランドベネフィットであること

上記をポイントにぜひ自社に最適なブランドコンセプトを策定、方向性のブラッシュアップをしていただき、そこを軸にアウターブランディング、インナーブランディングに活用していきましょう。

AUTHOR著者

タナベコンサルティング
執行役員
ブランド&PRコンサルティング事業部

松岡 彩

百貨店事業、法人向け外商部での営業実務を経て、当社に入社。外資系ラグジュアリーブランド、化粧品業界、飲料・食品業界、教育出版業界、出版業界、コーヒーショップ、ペットショップなど多岐にわたる大手企業のセールスプロモーション支援に従事。デザインの付加価値でブランドイメージを最大化するべく、ストーリーに沿ったプレミアム、ツール制作を得意とし、企業の売上促進や顧客ファンづくりに貢献している。

松岡 彩
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