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ブランディング活動の成果にも直結し、従業員エンゲージメントを高めることにも寄与するインナーブランディング施策。ツール・イベント・制度に分類し、認知・理解から共感、行動・定着までの設計ポイントと進め方を整理し、実務に直結するアクションを示します。
認知から定着へ:インナーブランディング施策の全体像
社員の一体感やエンゲージメント(会社や仕事への心理的なつながりと貢献意欲)の低下は、戦略実行の遅れや離職の増加など、企業の競争力に直結する経営課題です。
インナーブランディングとは、企業の理念・パーパス・ビジョン・価値観を社員に浸透させ、日々の意思決定や行動に一貫性を生み出す取り組みです。ここでの「ブランド」とは、ロゴや名称のことではなく、提供価値とコンタクト体験が複合的に結びつき、顧客や社員の頭の中に形成されるイメージのことを指します。「ブランディング」は、そのブランド価値を魅力的に伝え、認知から好意・信頼へと関係性を醸成していく活動です。
インナーブランディングにおいて重要なのは、社員にとっての価値(働く意義や成長機会)を明確に約束し、それが実際の体験として積み重なることです。一般的に期待される効果として、会社の存在意義ややりがいの実感、帰属意識・チーム力の向上、マッチする人材採用の促進、個々のモチベーションの向上、イノベーション志向の醸成が挙げられます。
ブランディングにおける成功のポイントは「戦略性」「一貫性」「継続性」です。
戦略性は「何を」「誰に」届け、どんな未来を約束するかを明確化すること。一貫性はあらゆる接点で"らしさ"が表現されること(例:スターバックスの「Third Place」、良品計画の「感じ良いくらし」)。継続性は繰り返しのタッチポイント設計により認知から愛着まで育てることです。施策は「ツール(制作物)」「コミュニケーション(体験)」「制度(仕組み)」に整理でき、一般的な社内浸透プロセスは「認知→理解→共感→行動(実践)→定着」の段階で捉えられます。
次章から、手段別の設計ポイントを具体的に解説します。
認知・共感・行動を繋ぐインナーブランディングツール
良質なブランディングツールとの継続的な接点による好意形成
ブランディングツール(制作物)は、理念・パーパス・ブランドビジョンなどを一貫した言語とビジュアルで伝え続けるための基盤となります。
代表的な施策は、社内報(Web・冊子)、社内ポータルサイト、理念浸透ムービー(ブランドムービー)、ビジョン(ブランド)ブック、会社案内や名刺、封筒、紙袋、ネックストラップなどの各種制作物です。設計ポイントとしては、目的段階(認知・理解/共感/行動)とターゲット(全社/部門/役職)を明確にすること。方針(伝える価値、トーン&マナー、表現基準)を定義し、頻度と運用体制(責任者、承認フロー、ルール)を設計します。
例えば、社内報で理念やパーパスの策定までのストーリーや実践事例を通じて「理解」を深め、社内ポータルサイトでは双方向コミュニケーションで関心や学びを広げます。
ブランディングムービーは、創業ストーリーや未来像を動きで伝え、感情に働きかけて「共感」を生みます。また、対談動画形式にし、外部識者の視点を交えてビジョンの意義を多面的に伝えることで、納得性を高めることができます。短編と長編を用意する工夫により、会議・方針発表会・採用など場面に応じた活用が可能になります。音声に特化した社内ラジオなどの活用では、日常の隙間時間に継続的な接触を生み、社員同士の理解を深めます。
どの施策においても、設計した方針に沿って制作していくことで一貫性を保ち、イメージのズレを最小限に抑えていくことが重要です。良質なブランディングツールとの継続的な接点は好意形成に寄与します。業務への具体的な結び付きを示すことで「自分ゴト化」を促進していきましょう。
理解度を高めるインナーコミュニケーション
ブランディング研修・ワークショップ設計のポイント
コミュニケーション(体験)は、理念・パーパス・ブランドビジョンなどを「体験として腹落ち」させる場です。全社方針発表会や記念式典などでは、経営層が直接メッセージを伝え、戦略とのリンクを明確化します。
会議や朝礼など従業員が集まるタイミングでは、ブランディングツールを活用し、継続的に触れる機会を増やしていくことで理解度が高まり、ブランドイメージが鮮明に記憶されるようコミュニケーションを設計することがポイントになります。
また、体験による効果の高いブランディング(浸透)研修・ワークショップについて、さらに深掘りをします。部署横断でパーパスやブランドビジョンなど浸透が必要なテーマでディスカッションを実施し、日々の業務への落とし込み(各部門の実践アイデア)をつくる場として活用できます。この取り組みでは、リーダーの選定が重要です。次世代を担ってもらいたい人材を選定し、なぜ今この価値が必要か、明日から何を変えるかなど、ファシリテーションを行い、事前に流れや想定される質問などを事務局からレクチャーしておくことでより質の高い取り組みとなります。参加者のアンケートを実施することで満足度・自由記述の内容・行動変化などから、継続した活動のアップデートを図っていきましょう。
また、継続的な学習の場として、企業内大学(アカデミー)の設立も有効です。理念理解はもちろん、業務全体の体系化・標準化・マニュアル整備につながり、実践力の底上げにつながります。
制度で定着を加速させる
理念・パーパス・ブランドビジョンに基づく行動を評価項目として明文化
インナーブランディング施策の一環として、人事評価制度との連動も、行動(実践)→定着において非常に効果的な取り組みとなります。理念・パーパス・ブランドビジョンに基づく行動を評価項目として明文化し、評価基準を整えます。評価者研修やフィードバックのガイドラインを策定することで運用品質が安定し、評価者、被評価者ともに浸透度が高まっていきます。1on1ミーティング(上司と部下が定期的に1対1で対話する場)は、理念・パーパス・ブランドビジョンにキャリアステップ・目標を結びつけ、行動の言語化を図ります。また、表彰制度などを設計し、理念・パーパス・ブランドビジョンに沿った行動を可視化し、表彰をすることでロールモデルを提示する仕組みです。評価基準(行動の具体定義)と選定プロセスを明文化し、受賞後のフォロー(学び共有・横展開)まで設計するとより効果を高めることができます。
最後に忘れてはならないのは、これらの施策を実行していくためのアクションプラン構築です。
まず現状認識(理念やパーパス、ブランドビジョンの理解度・共感度・行動実態)を行い、現状の課題感に即して優先度を整理します。次に施策(ツール・イベント・制度の役割分担)の詳細設計を行い、全社展開を図り、定点的に効果検証を行いながら、各施策を改善させ、品質を高めていくことで、インナーブランディングの成果を最大化していきましょう。

