BRAND INSIGHT 事例・コラム

~デジタル時代のブランドマーケティング~
価値を再定義する新たな戦略

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ブランドマーケティングは現在、大きな転換点を迎えています。消費者の価値観や行動が急速に変化し、デジタル技術が進化する中で、企業はこれまで以上に「自社の価値をどのように伝えるか」という課題に直面しています。単なる広告やPR活動ではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り入れた新しいブランド戦略が求められています。

本コラムでは、DXとブランドマーケティングの関係性、エンゲージメントの重要性、そしてブランドエクスペリエンスの向上という3つの観点から、最新のブランドマーケティングの在り方を考えます。

デジタルトランスフォーメーションとブランドマーケティング

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単に業務をデジタル化することではなく、企業全体のビジネスモデルや価値提供の仕組みを根本から変革する取り組みです。ブランドマーケティングにおいても、この変化は避けて通れません。デジタル技術の進化は、ブランドと消費者との関係性を再構築する力を持っています。

かつてはマスメディアを中心にした一方向のブランド発信が主流でしたが、現在はSNSやWebサイト、アプリなどを通じて、双方向のコミュニケーションが一般的になりました。消費者はブランドのストーリーや社会的価値を重視し、自らもその価値を共有したいと考えています。

DXを成功させるためのブランドマーケティング戦略として重要なのは、「データドリブンなブランド体験の設計」です。例えば、ECサイトの購買データやSNSでの反応を分析することで、顧客がどのような価値に共感しているかを理解できます。その上で、コンテンツやキャンペーンを最適化し、顧客ごとにパーソナライズされた体験を提供することが可能になります。

また、AIやチャットボットを活用することで、ブランドとの接点を24時間維持し、顧客が必要とするタイミングで最適な情報を届けることもできます。これにより、ブランドは「常に寄り添う存在」として信頼を築くことができるのです。

エンゲージメントとブランドマーケティング

次に注目すべきは「エンゲージメント(顧客の関与度)」です。ブランドマーケティングのゴールは、単に商品を認知してもらうことではなく、ブランドに共感し、ファンとして長期的に関わってもらうことです。

現代の消費者は、単なる広告メッセージよりも、「共感できるブランド」「自分の価値観と合うブランド」に心を動かされます。そのため、エンゲージメントを高めるには、企業が「どのような想いで事業をしているのか」「社会にどんな価値を生み出したいのか」を発信し続けることが欠かせません。

ソーシャルメディアはその中心的な役割を果たします。SNSを通じて顧客と直接つながり、コメントやリアクションに真摯に対応することで、信頼と親近感を育むことができます。また、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を活用し、消費者自身がブランドの一部として発信できる仕組みを作ることも有効です。たとえば、ハッシュタグキャンペーンや体験投稿企画などは、自然な形でブランドの拡散とエンゲージメント向上を両立できます。

さらに、コンテンツマーケティングも欠かせません。ブランドの理念や専門知識を記事や動画、ポッドキャストなどで継続的に発信することで、信頼と共感を育みます。特に、ストーリーテリングを重視したコンテンツは、ブランドと顧客の感情的なつながりを強める効果があります。

ブランドエクスペリエンスとブランドマーケティング

ブランドエクスペリエンス(ブランド体験)とは、顧客がブランドと接するすべての瞬間において感じる印象や感情のことです。これには商品・サービスの利用体験だけでなく、Webサイト・広告・店舗・カスタマーサポートなど、すべての接点が含まれます。

強いブランドほど、これらの体験が一貫しています。たとえば、Appleはどのチャネルでも「シンプルで直感的」「洗練されたデザイン」というブランドエクスペリエンスを徹底しています。消費者はその体験を通じてブランド価値を理解し、信頼とロイヤリティを深めていくのです。

ブランドエクスペリエンスを向上させるには、まず「顧客の視点」でブランド接点を見直すことが必要です。顧客が最初にブランドに触れる瞬間から、購入・利用後のサポートまで、一貫したストーリーが描けているかを確認しましょう。そのうえで、顧客の感情を動かすような体験を設計することが重要です。

具体的な施策としては、店舗やイベントでの体験型マーケティングの導入、デジタル上でのインタラクティブな体験設計、カスタマーサポートのパーソナライズなどが挙げられます。特に、デジタルとリアルを融合させた「OMO(Online Merges with Offline)」の取り組みは、今後のブランド体験を左右する鍵となります。

まとめ:ブランド価値は「体験と共感」で築かれる

DXの進展により、ブランドマーケティングの世界はますます複雑になっています。しかし、その本質は変わりません。大切なのは「顧客との関係性をどう深めるか」という視点です。データやテクノロジーを活用しつつも、最終的に人の心を動かすのは、ブランドが提供する体験と共感の力です。

これからのブランドマーケティングでは、デジタルを駆使しながらも、企業の想いと顧客の感情をつなぐ「温かみのある体験設計」が重要です。DXとエンゲージメント、そしてブランドエクスペリエンスを有機的に結びつけることで、企業はより強いブランド価値を築くことができるでしょう。

AUTHOR著者

タナベコンサルティング
ブランド&PRコンサルティング事業部
チーフコンサルタント

山田 康太郎

金融・食品・エネルギー商社・出版・労組協会等、幅広い業種へブランディングやツール製作の支援を中心に施策立案から実行推進支援までブランド&PRコンサルティングを行っている。顧客の課題解決に向けて寄り添いながら伴走するスタイルに定評がある。

山田 康太郎
ブランディングに関する相談会

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