ブランディング活動において、アウター向けのブランド浸透を目的とした施策は、TVCM・WEB広告をはじめとする広告出稿や、自社HPの改築など、早めに手をつけられることが多いかと思います。
しかし、ふと自社を振り返ってみると、社内で全く意識統一できていなかった、ブランド浸透できていなかった、という話は珍しくありません。
そんな時に必要なのが、インナーブランディングです。インナーブランディングで行う施策、使用するツールは様々ありますが、今回はその中でも有効となる「ブランドブック」について説明します。

ブランドブックの目的と内容
ブランドビジョンを可視化する
ブランドブックとは、社内において自社もしくは商品・サービスのブランドに対する意識統一を目的とし、ブランド構築に対する背景や想い、ブランドビジョンなどを可視化して冊子にまとめたものです。
ブランドブックは企業によって入れるべきコンテンツは異なりますが、多くの企業で採用されるコンテンツは以下の通りです。
1.トップのブランドに対する想い
企業のトップの言葉で、ブランド構築をするに至った背景や、今後このブランドに期待すること、そしてブランドブックに対する想いを記します。企業のトップの言葉が入るか否かで、社員にとってブックの重みが変わるため、重要なコンテンツとなります。短い文章でも構いませんので、入れることをおすすめします。
2.創業からの歴史
歴史が長い企業であればあるほど、創業当時を知る社員は少なくなります。このブックを通し、改めて創業からの歴史を知ることで、社員の自社に対する愛着心を育てます。歴史を記載するうえで、あまり長過ぎると読み飛ばしてしまう恐れもあるため、要点を絞って記載することが重要です。
要点とは、以下の内容が考えられます。
(1)企業のターニングポイント
社長の変更や、企業名の変更、合併など、企業にとってインパクトの大きい出来事
(2)事業のターニングポイント
新規事業、新商品発表など、事業の大きな変革となる出来事
(3)売上のターニングポイント
上の(1)(2)とも関わり、売上高が大きく動いた要因となる出来事
3.ブランドビジョン(ブランドコンセプト)
ブランドビジョン(ブランドコンセプト)は短い文章でまとめられたものとなっているかと思います。それだけを記載しても理解・共感には至らないため、ブランドビジョンの背景にある想いを補足するブランドストーリーも併せて記載することをおすすめします。
4.行動指針
ブランドのビジョンは理解できても、実際に行動に移せなければ本当の意味での浸透とは言えません。社員が自社のブランドを体現するための具体的な行動指針も併せて記載することで、日々の業務の中でブランドを体現することができます。
ブランドブックの制作手順
プロジェクトチームを組成する
続いて、ブランドブックの制作手順について説明します。
こちらも企業によって順序が前後することもあるかと思いますが、参考としてご覧ください。
STEP1:プロジェクトチーム組成
ブランドブック制作プロジェクトのチームメンバーを選定し、体制を組み立てます。経営企画部など、ひとつの部署の社員のみで組成されることがよくありますが、おすすめは、全社部署横断型でチーム組成をすることです。それによって、全部署にブランドブックのエバンジェリストがいることとなるため、全社員が自分ゴトになりやすく、また、コンテンツ自体も偏りない内容とすることができます。
STEP2:現状整理
ブランドブックのコンテンツを考える前に、まず自社の現状を整理します。各部署あるいは役職で、現状のブランド浸透度はどの程度なのか、浸透していない障壁は何なのか。各種サーベイや、インタビューを通して調査・分析します。
STEP3:コンテンツ設計
STEP2で分析した結果をもとに、前述したコンテンツをはじめ、ブランドブックを通して社内に伝えるべき項目を整理し、コンテンツ設計します。
STEP4:原稿・デザイン制作~印刷
各コンテンツの原稿およびデザインの制作をします。デザインは先に表紙を決め、表紙のデザインをキービジュアルとして中面に展開していくと進めやすいです。また、デザインと併せて、印刷の仕様も考えます。大きさや紙の種類、加工方法によって見栄えが大きく変わります。ブランドの顔となるブックのため、ブランドビジョンに沿ったデザインおよび仕様を考えましょう。
ブランドブックの活用方法
最後に、ブランドブックの活用方法について説明します。当たり前ですが、ブランドブックも作って終わり、配って終わりだと、インナーブランディングにはなりません。
せっかくブックという形で作っているため、社員が繰り返し手に取る施策を計画することが必須となります。
ここでは、よく実施される施策の例を紹介します。
1.朝礼、終礼での輪読
一番はじめやすい施策です。朝礼や終礼といった日々の定例ミーティングにおいて、ブランドブックの中身を輪読します。日々続けることで内容が頭に入ってきます。
2.1on1ミーティングで使用
上司・部下の面談の中で、個人の目標について話す際に、このブランドブックを活用します。ブランドビジョン・行動指針に沿った目標となっているかを確認しながら進めることで、個々の行動がブランドビジョンに沿ったものとなります。
3.ブランディング研修で使用
インナーブランディング施策の中で、ブランドをより理解・共感させるためにワークショップ型の研修を行うことをおすすめしています。その研修の中で、テキストのひとつとしてこのブランドブックが活用されます。このような活用を想定する場合は、ブックの巻末にワークショップで個別に書き込みができるようなページを用意しておくと、社員がこのブックを手にする機会をより増やすことができます。
終わりに
今回は、インナーブランディングにおいて有効なツールであるブランドブックについて説明をさせていただきました。
自社のブランドが社員にもしっかり浸透し、全社で進めるブランディング活動となるよう、ぜひブランドブックの制作を検討してみてください。
AUTHOR著者
ブランド&PRコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー
飯島 智佳
販促代理店のアカウントエグゼクティブとして大手食品メーカーの販促プロモーションの企画立案、実行推進に従事し、当社に入社。主にBtoC企業において、消費者心理を理解したソリューション提案を強味としており、ブランドの魅力を最大化するマーケティング戦略をトータルサポートする。

