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「パブリック・リレーションズ(PR)」という言葉を聞いて、どのようなイメージをお持ちですか?
現代社会では、この言葉がさまざまな意味で使われています。特に日本では「広報」とほぼ同義として扱われることが多く、広報担当者であっても、その違いを明確に理解していない場合があるかもしれません。また、PRという単語が「プロモーション」の意味で使われることも多く、「PR=広告やプロモーション活動」と認識している方も少なくないでしょう。
今回のコラムでは、パブリック・リレーションズの歴史や定義、そしてこれからの時代に求められる考え方について掘り下げていきます。
パブリック・リレーションズの定義とその歴史
パブリック・リレーションズとは、「企業とステークホルダーが良好な関係を築くための活動や理念」を指します。簡潔に言えば、「社会との健全な関係を構築するためのコミュニケーション」と言えるでしょう。そのため、PRはプレスリリースやパブリシティ活動だけにとどまらず、広告・SNS・セールスプロモーション・企業の公式Webサイトなど、ステークホルダーに向けたあらゆるコミュニケーションを含む広範な概念です。
「PR」の本来の意味が日本で十分に浸透していない背景には、歴史的な要因が関係しています。PRの起源は、18世紀後半のアメリカ独立戦争にまで遡ります。その後、19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカ国内で鉄道インフラを拡大する際に、鉄道会社が直面した地域社会や利害関係者との対立を解消するために行った活動(雑誌の発行、ロビー活動、インフルエンサーの活用など)が、事業におけるPRの始まりとされています。
一方、日本におけるPRの歴史は第二次世界大戦後に始まります。GHQ(連合国軍総司令部)が日本の民主化政策を推進するためにアメリカのPRを紹介したことがきっかけでした。しかし、その際に「Public Relations」が「広報」と訳されたこと、さらに本来のPRの概念が浸透する前にGHQが撤退したことが、日本におけるPRの理解を限定的なものにしてしまいました。加えて、高度経済成長期には「露出すれば売れる」というマスメディアや広告主導の社会が形成され、結果として「パブリシティ活動=PR」という独自の解釈が定着してしまったのです。
これからのPRに求められる視点
パブリック・リレーションズは、関係者や社会と良い関係を築くコミュニケーションであり、そのPR活動を示しており、企業側が多大なコストを支払ってパブリック・リレーションズを行う目的は以下の4点になります。
1. 関係者との信頼構築:組織のブランドや活動への理解と好意を得る
2. 情報発信と透明性:正確でタイムリーな情報を届ける
3. リスク対応:危機管理や炎上対策を含め、誤解や風評を抑える
4. 社会的価値の創出:CSRやサステナビリティを通じて企業価値を高める
現代の企業活動において、PRは単なる広報や広告の枠を超え、社会との信頼関係を築くための重要な戦略的要素となっています。これからの時代、経営者や広報担当者には、PRの本質を理解し、ステークホルダーとの持続可能な関係を構築するための視点が求められるでしょう。
広報とPRの違いについて
まず結論を述べると、「広報」は「パブリック・リレーションズ」の一部として位置づけられています。
「パブリック・リレーションズ」とは、企業や組織と社会(パブリック)との良好な関係を築き、それを維持・発展させるための考え方や実践を含む広範な概念です。一方で、「広報」はPR活動の一環として、主に情報を発信することでステークホルダーとの信頼関係を構築する役割を果たしています。言い換えれば、パブリック・リレーションズが「理念と行動の全体」を指すのに対し、広報はその実行手段の一つと考えられます。
さらに、パブリック・リレーションズには広報だけでなく、社会的な動向や世論に耳を傾ける「広聴」や、自社に関わるさまざまな人々を支援する「エンパワーメント」なども含まれています。したがって、パブリック・リレーションズは特定の手法を指すものではなく、企業の姿勢を示す概念とも言えるでしょう。
パブリック・リレーションズと広報の業務内容には重なる部分が多く、担当者の役割によってはその区別が曖昧になることもあります。
今後求められるパブリック・リレーションズの考え方~パブリック・リレーションズは経営課題~
「パブリック・リレーションズ」は、関係者への単なる広報・宣伝の一部ではなく、経営そのものの根幹に関わる戦略的機能として位置づける概念にまでなってきております。これは透明性の重視、デジタルシフトと分散メディア社会、パーパス経営の台頭などの社会的背景の変化が大きな要因です。
企業のブランド価値・社会的信頼・レピュテーション(評判)は、株価や人材採用・取引先との契約条件にも直接影響します。このため、パブリック・リレーションズは「広報部門の仕事の一つ」ではなく、経営陣が意思決定し、全社を挙げて取り組むべき経営戦略の一部です。
米国のPR協会(PRSA)も、パブリック・リレーションズを次のように定義しています。
"Public Relations is a strategic communication process that builds mutually beneficial relationships between organizations and their publics."
(組織と社会の間に、相互に有益な関係を築くための戦略的コミュニケーションプロセス)
経営課題とパブリック・リレーションズの結びつきを表にまとめてみました。
▼横にスクロールできます。
| 経営課題 | PRの役割・貢献 |
|---|---|
| 企業価値の向上 | 企業理念・ビジョン・社会的価値を伝え、ブランド資産を積み上げる |
| 資本政策(上場・増資・M&A) | 投資家や市場に対するレピュテーション形成(IR×PR) |
| 人材獲得・採用ブランド | 企業文化・働き方・パーパスを社会に伝え、魅力ある雇用主ブランドを確立 |
| 危機管理・リスク対応 | 不祥事・炎上・災害時の初動対応、信頼回復プロセスの設計 |
| グローバル展開・新市場進出 | 国・文化を超えた理解醸成と信頼獲得のためのメッセージ設計 |
| サステナビリティ・CSR | 環境・社会課題への姿勢をステークホルダーへ発信し、ESG評価向上に貢献 |
ご覧いただいたとおり、両者は密接な関係性があり、経営課題として捉えていただきたいです。
また、パブリック・リレーションズを成功させるためにも、トップマネジメントで経営陣がしっかりと、コーポレートストーリーやパーパスを一貫性を持った内容で発信していくこと、SNSやメディア反応のモニタリングと分析を定期的に実施していくことを怠らないようにしてください。
まとめ
パブリック・リレーションズは「知らせる」だけではなく、企業のパーパスや社会的価値を可視化し、信頼を資産に変える経営戦略の手段となってきました。経営課題として扱うことで、株主価値・従業員エンゲージメント・社会からの評価が連動して高まり、持続的成長に直結します。
このコラムをご覧いただいた皆様も、パブリック・リレーションズを経営課題に引き上げて、トップマネジメント・トップコミュニケーションで、ぜひ実施してください。

