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近年、企業とIP(知的財産)とのコラボレーションは、私たちの生活にすっかり馴染んだものとなりました。アニメやキャラクター、VTuberなど、さまざまなIPが企業の商品やサービスと結びつき、話題を呼ぶケースが増えています。しかし、すべてのコラボが成功するわけではありません。企業はどのようにして「成果が出るIP(知的財産)」を見極め、採用しているのでしょうか。
本コラムでは、IPコラボの成功要因を探りながら、成果を最大化するためのポイントを解説します。
「ビッグネーム=売上が担保される」ではない
ビッグネームにもかかわらず売上が担保されない理由
IPコラボを検討する際、多くの企業が注目するのは「認知度」「売上実績」「SNSフォロワー数」といった指標です。特に、認知度が90%以上の「ビッグネーム」と呼ばれるIPは、誰もが知る存在であり、コラボの成功を約束してくれるように思えます。しかし、実際には「思ったほど成果が出なかった」というケースも少なくありません。
ビッグネームの特徴と課題
ビッグネームIPには以下のような特徴があります。
・認知度が非常に高い
・SNSフォロワー数が多い
・多くの企業とコラボを行っているため、消費者に「既視感」を与えやすい
・経済条件が割高で、予算が限られる企業には手が届きにくい
特に「既視感」の問題は深刻です。ビッグネームIPは多くの企業とコラボを繰り返すため、消費者にとって新鮮味を失いがちです。その結果、コラボ商品が埋もれてしまい、期待した成果が得られないことがあります。
また、社内での承認を得るために「認知度」や「実績」といった分かりやすい指標に偏りすぎると、消費者目線での魅力や差別化が置き去りにされることもあります。ビッグネームIPを活用する場合でも、どのようにコラボを設計するかが成功の鍵を握ります。
ビッグネームのIPを使用せずに成功するには
単純な青田買いにならないことが重要
ビッグネームIPを避け、まだ知名度が高くないIPを採用することで成功を収める企業も少なくありません。しかし、単に「青田買い」をするだけではリスクが伴います。重要なのは、将来的に成長が期待できるIPを見極める目を養うことです。
見極めのポイント
IPの人気が急上昇するタイミングを捉えるためには、以下のような指標を複合的に観察する必要があります。
・動画投稿サイトでの投稿数の増加:ファンによる二次創作や関連動画が増えているか。
・検索ワード数の伸び:IPに関連する検索が増加しているか。
・SNSフォロワー数の急増:公式アカウントのフォロワーが短期間で増えているか。
・専門店での商品棚のフェイス数:店舗での取り扱いが増えているか。
・IPコラボを頻繁に行う企業の動向:他社がどのIPとコラボしているかを参考にする。
・SNSでのトレンド入り:話題性が高まっているか。
・物販イベントの規模感や売り切れ情報:イベントでの人気度や商品完売状況をチェックする。
・フリマサイトでの取引状況:関連グッズが高値で取引されているか。
これらの情報を定点観測し、「今が採用のタイミングか」を慎重に判断することが重要です。特に、コンビニでの採用が始まるとIPの認知度が一気に高まり、利用料金が跳ね上がる傾向があります。その前段階で手を挙げることが成功の鍵となります。
ビッグネーム化する前に採用するメリット
売れる前の採用はIPホルダーから感謝される
まだ知名度が高くない段階でIPを採用することには、さまざまなメリットがあります。まず、IPホルダー(権利者)から感謝されることで、良好な関係を築ける点が挙げられます。IPがビッグネーム化した後も、優先的に良い条件で利用できる可能性が高まります。
慣れている企業は「投資」としてIPを活用
IPコラボに慣れている企業は、売れる前のIPを採用することを「投資」として捉えています。短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的な視点でIPの成長を見守りながら、企業としての利益を最大化する戦略を取っています。
たとえば、現在大人気のVTuberも、世間に広く認知される前から採用していた企業は、今では優先的にコラボの機会を得られるようになっています。このように、IPの成長を見越して早期に採用することが、後々の大きなリターンにつながるのです。
成果が出るIP選定のために
IPコラボの成功は、単に「有名だから」という理由でIPを選ぶだけでは実現しません。重要なのは、IPの特性や成長性を見極め、企業のブランドや商品とどのように結びつけるかを戦略的に考えることです。
また、「成果が出る」とは何を指すのかを明確にすることも大切です。短期的な売上だけでなく、ブランド価値の向上や新規顧客の獲得といった中長期的な視点で評価することが求められます。
IP選定の際には、以下のポイントを意識してみてください:
1. 消費者目線での新鮮さや魅力を重視する
2. ビッグネームIPに頼りすぎず、成長性のあるIPを見極める
3. 短期的な利益だけでなく、長期的なリターンを視野に入れる
IPコラボは、企業にとって大きなチャンスであると同時に、慎重な判断が求められる分野です。成功事例を参考にしながら、自社にとって最適なIPを選び抜く目を養いましょう。それが、成果を最大化するための第一歩となります。
AUTHOR著者
ブランド&PRコンサルティング事業部
チーフマネジャー
植田 晃正
大手CDショップチェーン・外資系出版・世界的ファッションチェーンなど多数の業界へノベルティの企画・販売経験を持ち、顧客の潜在需要を読み取りクリエイティブな価値の提案を得意としている。特にアイテムプレゼンテーションの販売促進を通じ、顧客体験価値の向上に定評があり、新規開拓してきた企業は多数にのぼる。

