新たな幼児用ヘルメットのブランド認知拡大に成功

事例 2023.04.03
ブランディング マーケティングDX 各種Web(コーポレート、ブランディング)サイト構築 生産性向上

今までの常識を疑うところから始めた新たな商品開発

ものづくりの街・大阪府東大阪市にある株式会社オージーケーカブトは、バイクや自転車用のヘルメットを開発・製造・販売するヘルメットメーカーです。オートバイ用ヘルメットでは国内トップクラスのシェアを誇り、スポーツサイクルを含む自転車用ヘルメットはシェアナンバーワンで、東京五輪でも日本代表チームが使用するなど、リーディングカンパニーとして業界を引っ張ってきました。
同社では道路交通法が施行される前の2000年から子ども向けへルメットを発売しており、徐々にラインアップを増やし「チャイルドメットシリーズ」として展開してきました。子どもの頭部データと衝撃吸収性の研究結果を基にしたシリーズ展開や、店頭で簡単に最適なヘルメットを選択できるサイズゲージを考案したことが、子どもの安全・けが予防に大きく貢献しているとして、キッズデザイン協議会が主催する「第4回キッズデザイン賞」(2010年度)のキッズセーフティ部門において最優秀賞(経済産業大臣賞)を受賞しました。

そんな中、2018年に横浜市で痛ましい事故が起こりました。抱っこひもで1歳4カ月の幼児を抱えた母親が自転車で転倒し、幼児が死亡した事故です。その事故以外にも、母親の自転車転倒で幼児がけがをする事故は全国で頻発していました。同社は、トップメーカーとしてこの事態を重く受け止め、幼児用ヘルメット「picot(ピコット)」の開発を進めました。
同社の調査によると、2008年の道路交通法改正により幼児のヘルメット着用が義務化されてからも、全国で約半数の保護者が子供にヘルメットをかぶせていませんでした。装着すれば、命に関わる事故をある程度防げるのに、なぜでしょうか。かぶせない理由を調査すると、『サイズが合わない』という声がありました。
確かに、当時の幼児用ヘルメットの安全規格における最小サイズは実情との乖離がありました。そこで、製品安全協会とともに進めていた規格の最小サイズよりも小さい基準を作るところから、商品開発をスタートさせます。

同社が世の中になかった最小サイズの商品開発を進めたのには、もう1つ理由があります。50%を占めていた同社の幼児用・小学生用ヘルメットのシェアが、徐々に落ち始めていたのです。要因は、海外ブランドの相次ぐ参入や、人気アニメなどのキャラクターデザインを施したOEM製品の人気、量販店によるPB商品といった、ヘルメットを生産する同業他社との価格競争でした。この悪循環を断ち切るため、自社ブランドのヒット商品が必要だったのです。

幼児の安全と自社ブランドの確立。2つの課題を解決するために急務となった、新たな最小サイズ幼児用ヘルメット。開発チームが打ち出した戦略は、入念なマーケティングによる新商品ブランディングでした。
開発チームは、まず、親子の自転車の事故ゼロを目指す団体「おやこじてんしゃプロジェクト」に協力を仰ぎ、保護者のグループインタビューを行って、幼児のヘルメットに求められる要素を洗い出していきました。また、研究チームと連携し、保育園の協力のもとで児童の頭部の形状やサイズの計測データを集計。そうして2020年に発売されたのが、生後12カ月から2歳ぐらいの幼児を対象にした、国内最小サイズのヘルメット「picot」です。

今までの常識を疑うところから始めた新たな商品開発

現代の親に伝えるためウェブメディアを活用、イメージを一新するためブランドサイトをリニューアル

picotのブランドビジョンは「かぶる」ではなく「着る」。軽くてファッショナブルなデザインを施し、重さはわずか220gと、小さなりんご1個分ほどの軽さです。アジャスター調整に頼るのではなく、帽体そのものを小さくし、サイズ45cmという世界最小サイズのヘルメットが生まれました。
着用を促進するには、子どもが嫌がらずにヘルメットをかぶることが大切なので、軽さと通気性を確保しました。さらに、どんな服装にも合うように、マットな質感で抑え目なカラーを用い、肌の挟み込みを防ぐバックルカバーや簡単にサイズ調整ができるフィットバンドなど、安全で快適な機能も盛り込みました。
開発の次に取り組んだのは、picotをどのようにブランディングし、必要としている人たちに届けるかの検討です。そこでコミュニケーションチャネルとして目を向けたのは、ウェブメディアでした。

小さなお子さんを持つ保護者の方々の多くは仕事や家事、育児で毎日忙しく過ごされています。そうした方々へ的確に情報を届けるためには、ウェブ活用が最善策だと考え、隙間時間にスマートフォンで子ども用ヘルメットを検索すると当社のサイトがヒットするよう広告を仕掛け、へルメットの必要性を知り、商品特性を把握した上で購入できる仕組みを設計しました。
具体的にはニュースサイトには「1歳ヘルメット」「赤ちゃんヘルメット」「はじめてのヘルメット」などをキーワードにした検索連動型広告(ユーザーが検索したキーワードに連動して表示される広告)を出し、幼児の母親がメイン読者のウェブメディアではプレゼントパブリシティーを打つなど、さまざまな種類のウェブ広告からピコット特設サイトへの流入を促す施策を講じたのです。picotの発売に併せて、オージーケーカブトはチャイルドメットシリーズのサイトを一新しました。それまでは機能面をアピールする構成でしたが、ヘルメットのデザイン性が分かる洗練されたデザインにリニューアル。ピコットを含むチャイルドメットシリーズのブランディングを試みました。

サイトリニューアルでは、私たちはヘルメットをオートバイ用からスタートしたこともあり、安全ツールとして捉えていましたが、『保護者はファッションの一部として見ている』という指摘があったので、その考え方を生かし、デザイン性が高く、訪問するのが楽しくなるようなページにリニューアルしました。
また、社内の意識も大きく変化しました。顧客の反応がダイレクトに分かるようになり、ウェブマーケティングやブランディングの重要性についての社員の意識に変化が生まれました。

販売店員へ情報を提供するBtoBを意識した特設サイトや、楽天やアマゾンなどのECサイトへブランドページを戦略的にひも付けることで、picotは大きく販売数を伸ばします。
picotのマーケティング戦略が優れていたのは、商品の情報提供だけでなく、幼児用ヘルメット着用の啓発活動を同時に行った点です。
成功の要因について、幼児のヘルメット着用が努力義務であるという法律も、へルメットを正しくかぶることで死亡率が4分の1に減るということも、保護者の約半数が知りません。そこで、『やさしい未来のために、カブト、かぶろ。』といったスローガンを掲げ、啓発的な要素を盛り込んだウェブ広告や、新製品のPR動画を配信するサービスを活用して、ヘルメット着用の大切さを広めました。この安全に関する認知の向上が、製品の販売数につながったのだと感じています。

また、法律的な側面、多発する幼児の事故を中心に、picotの開発背景やデザイン性、機能性をまとめ、ウェブサイトで公開。picotに興味を持った全ての閲覧者に向けた施策であったが、リアル店舗の販売員のヘルメットに対する理解を深めるツールとして活用され、店舗でも商品の売り上げが向上したといいます。

ヘルメット

サービスブランディングからコーポレートブランディングへ取り組みを拡げる

ウェブメディアを使ったユーザーとのコミュニケーションにより、商品ブランディングを成功させた株式会社オージーケーカブト。次なる目標は、自社のブランディングです。
picotやチャイルドメットシリーズのブランディングを皮切りに、最終的には企業ブランディングを行いたいと考えています。社員も今回の成功によってブランディングの重要性が認識できました。
同社はこれまで良い商品を開発・生産し、社会に提供してきました。メーカーとして、これまでは市場競争的にそれで良かったのかもしれませんが、これからは社会とどう向き合い、どのような価値を提供していくべきかを、もう一度考えて再構築し、伝えていく必要があると今後を見据えます。

「Safety Meets Style」というビジョンを掲げ、「安全性」と「スタイル」を融合させながら、主にバイクや自転車などスポーツ分野のヘルメット&ギアメーカーとして存在感を示してきた同社は、全ての人々に安全を提供するメーカーとして新たな独自ブランドの確立を目指しています。

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