近年、企業価値を高めるためのブランディング投資が増加しています。タナベコンサルティングが2024年10月に実施したブランドアンケートによると、「今後のブランド投資の方針」について、これまでと同様に投資を増やすと回答した企業が50%を超えました。一方で、投資を減らすと回答した企業はわずか4%にとどまっています。多くの企業がブランディングを重要な経営課題と捉え、積極的に取り組んでいることがわかります。このような状況下で、能動的なブランディング活動ができず、ブランドを確立できない企業は、淘汰される時代がすぐそこまで来ているのかもしれません。
今回のコラムでは、ブランディング活動におけるインナーブランディングの重要性をアウターブランディングへ与える影響とともにお伝えします。
インナーブランディングが、アウターブランディングに影響する!?
ブランディングの成功の「鍵」とは?
冒頭にお伝えした通り、ブランディング活動が重要視される中で、企業はしばしば外部に向けた「アウターブランディング」に注力をしてしまいます。しかし、成功の鍵を握るのは、従業員に向けての「インナーブランディング」なのです。
インナーブランディングとは、企業が目指すブランドビジョンやパーパスを従業員と共有し、共感を促す活動です。これが不十分であれば、消費者や取引先に対してブランドのメッセージが正しく伝わらず、アウターブランディングも失敗に終わる可能性があります。最終的にブランドを体現するのは従業員であり、彼らのブランドやパーパスへの理解が不可欠です。インナーブランディングはアウターブランディング以上に難しい取り組みですが、これが成功の「鍵」となります。
まずは、自社の従業員の方々がブランドビジョンやパーパスに関して、どれだけ理解ができているかを確認してみてください。理解度が高ければ、実施されているブランディング活動は消費者や取引先にもしっかりと伝わっているはずです。逆に、理解度が低ければ、広告など対外的な発信はうまくいっていないかもしれません。
インナーブランディング活動のスタート地点
自分ゴト化の重要性
インナーブランディングを進めるにあたって、従業員の「自分ゴト化」が不可欠です。つまり、従業員一人ひとりが当事者意識を持ってブランディング活動に取り組むことが重要なのです。トップダウンで決められたビジョンやパーパスは、従業員にとって他人事になってしまうことが多くあります。ブランディング活動の軸となるブランドビジョンやパーパスの策定時には、経営層だけで決定するのではなく、従業員が参画し、自分ゴト化しながら、つくり上げていくことができれば、その後の浸透スピードも高まります。
具体的には、従業員の想いやブランドイメージに関するアンケートを実施するなど、全員が参加できる取り組みやワークショップやミーティングを通じてディスカッションを行います。従業員がブランドビジョンやパーパスの策定に参加する機会をできる限り多く設けます。これにより、従業員はブランディング活動を自分事として捉え始めます。
この初期段階でどれだけ従業員を巻き込めるかが、インナーブランディングの成功を左右します。従業員がブランドビジョンやパーパスの背景を理解し、共感を持つことで、ブランドに対する愛着が生まれ、理解度が深まり、従業員の様々な行動に変化が起こっていくでしょう。こうした取り組みが、インナーブランディングの成功に繋がるのです。
「自分ゴト化」の最大化に向けたインナーブランディングの取組みとは
様々なインナーブランディング手法
ブランディング活動において最も重要ポイントは、一貫性と継続性です。これはインナーブランディング、アウターブランディングともに同様になります。
「自分ゴト化」を最大化させるためには、単発のワークショップなど一過性の取り組みではなく、インナーブランディング活動を繰り返し取り組むことで、従業員が当事者意識を高く持つ機会を増やしていくことに繋がり、理解度が高まっていきます。
経営トップからのアプローチも重要となります。経営層がブランドビジョンやパーパスの背景を伝えることで、従業員にその意義を理解させることができます。例えば、ブランディング動画を制作したり、経営方針発表会や記念式典などで発信する機会を設けることは効果的です。その他、ブランドビジョンやパーパスをわかりやすくまとめたブランドブックやパーパスブックの作成も有効です。
さらに、ワークショップを継続的に行うことで、従業員が日々の行動を振り返り、ブランドビジョンやパーパスに沿った行動を考える機会をつくることにより、従業員の「自分ゴト化」が促進されます。
また、社内報を活用してブランディング活動の進捗や今後の取り組みを定期的に発信する企業もあります。近年はオンラインとオフライン様々な社内報活用方法があるため、自社に合ったやり方で従業員とのタッチポイントを増やすことを意識し、ブランドに対する理解浸透を促していきましょう。
このように、インナーブランディングは多角的なアプローチが求められます。前段で記載した、経営トップからのメッセージ発信、継続的なワークショップ、社内報の活用など、様々な手法を組み合わせることで、従業員の「自分ゴト化」を最大化させることが、企業全体のブランディング活動の成功に繋がっていきます。
ぜひ本コラムを参考にインナーブランディングを見直し、実行に繋げていただき、ブランド確立に向けてブランディング活動を活性化させていってください。
AUTHOR著者
執行役員
ブランド&PRコンサルティング事業部
竹綱 一浩
ブランディング戦略パートナーとして、SNSなどのデジタル活用や動画活用を得意とし、ブランド構築からコミュニケーション設計までリアル×デジタルでブランド価値を最大化するコンサルティングを実行。戦略策定から、実行推進を並走しトータルでサポート。特にブランドストーリーに沿った企画とその推進マネジメントを通じた人材育成で、クライアントから高い信頼を得ている。

